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お前の可愛い声を聞かせろ
中編2編収録。この2編は本編+スピンオフで、二つで一つの作品ワールドという感じです。
「闇を喰らう獣」
中原一也さんの2006年の作品。
そしてお得意の、ヤクザ攻め。
中原さんの「ヤクザ攻め」って、とことん極道で、大人で、標的にされたら絶対に逃れられないヤクザ幹部としての権力と男の魅力を持っているんですよね。
この物語の攻め・綾瀬貴範も正にそんな危険な男。
綾瀬にロックオンされたバーテンダーの桐生慎(きりゅう しん)が、綾瀬の蜘蛛の糸に、はじめは抵抗しつつ段々と絡め取られていくのですが、途中媚薬を使われての無理矢理な性交や弟との……などがありますので、苦手な方は注意。
自信満々すぎる綾瀬があまりにも尊大なのと、慎の弟とのくだりは可哀想すぎるのですが、中原さんの筆が非常にノッているように感じられることと、こちらもその勢いにのせられてグイグイ読める、そのスピード感がとても良かったです。
「コンプレックス」
書き下ろし。
慎の腹違いの弟・桐生烈が主人公。慎と烈は誕生日が2ヶ月違うだけの同い年。そして母親が姉妹同士…(お父さん、鬼畜です。)。顔も双子のように似ている。
烈はゲイであることを公言していて、のらりくらりと男を利用したり。
烈は小説家志望で普段は職が長続きしないフリーター。慎はいつも心配している。
綾瀬の事件で烈と知り合った刑事・黒土は、烈を居候させたりなぜか世話を焼いてくれる。烈は黒土が慎のことを好きだから自分に構ってるんだろう、と卑屈になっていたけれど…という設定。
いつも自分を見てくれる人を探していた烈。慎の影でしかない、と思い込んでいた烈。
黒土とのお互いの誤解が解けてからのHシーンはアツいです。読み応えあり。
烈は誠実な人とカップルになれました。慎より幸せになれそう。(慎はかわいそう……)
この本、雑誌掲載分『闇を喰らう獣』と書き下ろし『コンプレックス』の2つのお話が入っています。
腹違いの非常によく似た2ヶ月違いの兄弟が、それぞれメインを張るわけですが、雑誌でメインを張ったお兄ちゃん編より、リンク作となった書き下ろしの弟編の方が気に入ってしまいました。
見た目はよく似ているのに、中味は全く違う兄に引け目や羨ましさを感じ、いつでも『兄の弟』としてしか見てもらえない“コンプレックス”を感じまくっている男が、可哀相というかいとしく感じるというか、頑張れ~というか、ついつい肩入れしちゃいました。
槙の働くバーに通う綾瀬はヤクザ。槙に惚れたらしく、自分の持つ店に引き抜こうとしています。
でも、綾瀬や綾瀬の店に興味のない槙は、フロアーマネージャーも「あまり関わるな」と言っているし、適当にあしらっています。
が、ある日腹違いの弟・烈がやって来てから、気持ちやいろんなものが思わぬ方へ転がり始めます。
綾瀬は槙に一目惚れだったらしいんですが、それを言わないのもなぁ。そこに、槙の頑なさが合わさっちゃって、そりゃくっつくまでがどうにもこうにもじりじりで。
烈に迷惑をかけられていたことから、綾瀬のアプローチを拒否したんでしょうけど、もっと早く肩の力を抜いていたら、甘いシーンも見られたんじゃないかなと。
くっつくまでが長くて、甘さがちょっと不足気味かな。
今まで烈を烈としてみてくれる人に出会ったことがなく、いつでも『槙の弟』扱いされていたことで、コンプレックスの固まりだった烈。
刑事の黒土の部屋に、ついつい転がり込んでしまうんです。居心地がいいあけでなく、唯一、黒土だけが烈を烈として扱ってくれるから。
ガチガチのヘテロだと豪語していた黒土ですが、どこか淋しげな烈が可愛くて仕方がなかったんじゃないかなぁ。
ですが、コンプレックスの固まりの烈は、そんな黒土の気持ちには全く気が付きません。それが哀しくて。
絶対にありえないと思いこんでいるから、黒土の気持ちが全く見えてこなかったんでしょうねぇ。
ようやく気持ちが通い合ったエッチシーンは、初めての黒土がエロオヤジ全開で頑張っています。慣れているはずの烈が、翻弄されてますもん。
今度こそ、烈のコンプレックスも解消されたんじゃないかなぁ?
病んでいる感じのキャラに、ついつい入れ込んでしまいました。萌えたぁ~。
「闇を喰らう獣」
攻・綾瀬貴範 ヤクザ
受・桐生慎(27) バーテンダー
慎の働くバーに通いつめ、引き抜きをかけるヤクザの綾瀬。
綾瀬は惚れた慎を手に入れるためかなり気長に、そしてしつこく付きまとっています。
ゲイの弟のせいで学生時代から嫌な思いをしてきた慎。
その最たるものが、自身の性癖。
自分はゲイではないと主張し続けてきましたが、男に惚れられたり迫られることはしばしばでした。
弟がゲイだから、自分も同じだと誤解されていると言い聞かせてきたわけですが…。
自分の性癖を認め自由に生きる弟を羨んで、コンプレックスを持っていた。
でもしつこい綾瀬のアプローチと、綾瀬と親しくする弟を見て嫉妬の感情を持ってしまう。
嫉妬を認めたくなくて、刑事の黒土に協力し綾瀬に盗聴器を仕掛けようとして失敗。
逆に薬を使われて抱かれ、あまつさえ弟も加わっての3P。
一度は逃げた慎ですが、綾瀬が危険に晒されている瞬間に助けてしまう。
結局、ツンデレは追い詰められないと素直になれないんですよね~。
「コンプレックス」
攻・黒土忍 刑事
受・桐生烈(27) 小説家の卵 フリーター
兄の慎にコンプレックスを持っている烈。
顔は似ているのに性格は全く逆の兄は憧れであり、同時に嫉妬の対象でもある。
黒土が自分をかまうのも、兄に惚れているからだと思っています。
兄に惚れるのは当然だろうと思っていても、それが悔しい、悲しい、むなしいと感じるのは、烈が黒土をスキだから。
黒土は最初は慎に惚れていたかもしれませんが、ウロウロしている野良猫(烈)を拾って面倒を見ているうちに可愛さに気づいて惚れたんじゃないでしょうか。
ラブもですけど、この話は烈が兄へのコンプレックスから脱する話です。
兄を抱いたことを後悔したり、黒土が兄を欲して綾瀬と対立している(と思っている)のを見て落ち込んだり、デビューした小説家仲間にネタ盗作され実力を思い知らされてヤケクソになったり。
誰にでも好かれる兄と、決して一番になれない自分と。
その差が烈のコンプレックスとなっているわけですが、黒土の気持ちがちゃんと自分に向いていると知ってやっと解放されました。
この4人の続編とか、読んでみたいです。
私は兄カップルの続きが、特に。
片やクールビューティーな兄と男前で鋭利なヤクザ。
片や兄にコンプレックスを抱くヤンデレ風弟と野獣のような刑事。
この4人が絡んでものすごく楽しめる一冊に出来上がって、読後感もとっても満足です!
桐生慎はバーテンダー、ヤクザの綾瀬に一目ぼれされ、散々口説かれて。
でも自分は男には興味がないと散々突っぱねるけど、ゲイであると公言している弟の烈が綾瀬と仲良くしているのを見て放っておけなくて、綾瀬をつけている顔みしりの刑事黒土のしかけようとする盗聴器設置に失敗して綾瀬を怒らせて、お仕置きSEX。
そこへ兄に憧れとコンプレックスを抱く弟も絡んだ3P展開。
慎は、自分の中にあるゲイの性質と女の部分を認めたくなくて拒絶していたのだけれど綾瀬に開かれてしまったのですね。
弟の烈も、複雑な気持ちで、今まで入れられる方だったけど兄なら入れてみたいと言う、その願望を遂げるも、後悔の念で兄の顔が見られなくなる。
そんな兄弟の関係も織り込みながら、綾瀬への慎の気持ちが強まっていく。
でも、この慎は女王様ですから、綾瀬を振り回しながらも下僕にして、時々思い切りエロくされて・・・と、そんな関係がとってもお似合いのカップルだと思いましたよ。
弟編の「コンプレックス」こっちの方が萌えました!
なぜなら、刑事の黒土がいいんだ、何と言っても。
だらしない格好に、無精ひげ、オヤジの典型外見なんだけど、情に厚くて面倒見が良くて、おまけに絶倫!?
ああー、おやじ攻めはこうあるべきをまっとうに進んでいるキャラ。
惚れますよーーー。
本人自覚がないんですが、どうも兄の慎に惚れていたみたい(これは綾瀬も烈もそう思っている)
仕事が長続きしない烈は、黒土の世話になるのだが、自分はガチガチのヘテロだと言って譲らない頑固な態度に、少し落胆もしている。
烈も兄への憧れもありながら、みんな兄が好きになるという、そんなコンプレックスもあるので、黒土のことが気になって仕方がないのです。
それが恋になるのはたやすいことですよね。
烈が困ったり落ち込んだりすると、決してて優しくはないけど慰められるのだから。
ヘテロだと言いながら、烈と行う行為は”おい、本当に男初体験か!?”と烈でなくても突っ込みたくなるほどの激しさ。
そうそう、おやじ攻めはこうエロくなくっちゃ!
こういう、無愛想な愛情に満ちたおやじは中原さんうまいなぁ。
まだこの4人が絡む話読んでみたい気にさせますよ。
石原さんの男前絵が色気があって、黒土なんかすごいいい味出てます。