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『ちゃんと待ってる』の続編。7年も経ってから出たことに驚きました。
今回は、貴一(攻)の過去編とでもいうべき内容ですね。家族(母親)との関係に力を入れ過ぎて、智幸(受)とのラブストーリーとしてはちょっとどうなんだろう、と思わなくはないです。
それでも、貴一が前巻よりは成長・・・したような。まあ言葉足らずはちょっとマシになったような気がします。というか、前が酷過ぎたんですけどね。
正直なところ、母親はあっさり片付けて、あまあまがもう少し欲しかったですが、でもこれはこれで悪くはないんですよ。貴一が悩んで、苦しんでる分、前巻のような貴一への苛立ちはあまりなかったので。
まあ、智幸も前回以上に、かなりぐるぐる・自虐ループに嵌ってますので、そちらがダメな方はいそうですね。私はそもそも苦手ではないので平気なんですが。
前作の方が好きですが、こちらも悪くはなかったです。
初出は2003年とのこと。
たったの6年とはいえ、昨今のBL小説とは随分異なったアプローチが試みられている。
シャレードらしいといえばら・し・いのだが、ラブストーリーとは直接的には関係しない“肉親”のテーマがかなり重い。
小説の手法としては、ちょっと書き込み過多な印象を受け、個人的な好みからはやや外れた。
物語は、“魔女”の身内に対する攻撃を恐れて失踪したキーチ“姫”を救わんと“勇者”トモユキが奮闘する典型的なRPG様式。
…は、冗談(笑)。
が、そんなに本編の展開を逸脱してはいないと思う。
勇者トモユキは、キーチ姫周辺のNPCキャラとの対話で好感度を上げて彼の行方のヒントを得る一方、ラスボス戦に備えたキーワード(端的に言えば、いかなる状況下でも潰えない“愛の力”か?)を強化させていく(即ち、レベル上げ)。
アクシデントも味方に付けつつ、トモユキの不断の努力が実を結び、キーチ姫は無事彼の元に戻ってくる。
そして、ラスダンでは二人揃ってラスボス@魔女と対峙するのである。
しかし、最終的にキーチ姫が提示した攻撃カードが、どうしても私には最善のカードに見えない。
大団円の筈のエピローグも、だから一抹の不安を抱えたままで物語の幕を閉じているように感じられる。
果たしてキーチ姫は、今後この千賀子という名の肉親の魔女の悲鳴や懇願、あるいは下手したら最期の断末魔を、ストレンジャーとして冷静に受け止め、無視し、耳を塞ぎ続けることができるんだろうか?
彼の選択した行動を否定する気は無いのだけれど、決して“楽”なルートには見えない。
それは、私の中に千賀子的な“弱い”側面が少なからずあって、彼女を100%拒絶するのが難しいからかもしれない。
これは、読者@私の心構えの問題だな。
とまれ、そんな茨ルートにおいても“ちゃんと待ってる”、そして逃げても追いかけてくれる勇者トモユキの存在ははキーチ姫にとって唯一無二のかけがえのないパートナーであり、救済者なんだろう。
幾多の苦難を乗り越え、控えめながらも真摯に生涯の愛を誓う恋人達の姿は少し眩しい…。
つまり、なんだかんだ言って、この作品もこの著者らしい暖かかな甘さに満ち溢れてはいるんだな。
最後に余談。
コミカルで愛くるしい西河さんの挿絵は、数少ない癒しだった。