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ちょっと甘いけど神評価で。だって好きなんですよこういう医療もの。
(分かりやすく言えば多重人格ものですが、作者の春原さん自身は解離性同一性人格障害と多重人格に一家言あるようです。)
一流の精神科医兼心理カウンセラーの(実は自分は精神的に崩壊していると自覚している)嶌と外国人と間違われるくらいの美貌と怜悧な態度で阿修羅王と異名を持つ凄腕の救急救命医師・齋川のお話。
齋川の上司の依頼で彼のケアを第一目的に北斗総合病院に招かれた嶌は、齋川の人格に違和感を感じます。
齋川がなぜこのような人間になったのか、その人格をどのように使い分けて生きているのか、その彼を嶌がどう救い上げていくのかがこのお話の読みどころだと思います。
外見が良すぎて遠巻きにされ、腕が良すぎて煙たがられ、愛されるとか愛嬌を振りまくとかを知らないから世渡りも下手で、“必要とされる自分”を作ることによって存在価値を見出している齋川に哀しさを感じます。
その齋川と嶌が密接に関わっていくうちに恋愛に発展していくわけで、齋川が少しずつ心を開いていくところは可愛くって仕方がないくらいですが、欲を言えば嶌の獣的な内面がもっとワイルドに出てきてくれていたら、文句なしの神作品だったと思います。
私は「チームバチスタの栄光」を読んだことがあるのですが、丁度心療内科医の田口さんのポジションと嶌のポジションがよく似ているなと思いました。ま、田口さんは犯人探し、嶌は齋川のケアが目的なのでお話はまるっきり違いますが。
春原さん自身が医療従事者ですから、いつも安心して白衣もののお話が読めます。
(私も端くれなので、あまりに現実離れしていると、一気に幻滅してしまうので。)
今回も齋川の手際であったり、嶌の心理分析過程だったり、病院内の様子であったり、スタッフの動きであったり、臨場感溢れていて大変楽しめました。
春原さんのあとがきと、イラストの高群さんの4コマ漫画もおすすめです。
もうひとつ付け足します。これは是非CD化していただきたい。齋川の変わり様をぜひ声で聞かせて欲しいです。
精神科医兼カウンセラーの主人公は、金髪に見える栗色の髪でヨーロッパの血を引く美貌の青年、齋川修里に出会います。
齋川は天才的な腕を持つ医師で、救命救急の仕事をしています。
二人は同じ病院で働くことになり、やがて主人公は、齋川の不思議な魅力に引き込まれ、翻弄されていきます。
でも、齋川は人知れず孤独をかかえていて-
齋川がとても魅力的なんです。
天使の美貌と、天才的な医療技術を持ち、ピュアかと思うとワイルドで、冷静だったり情熱的だったり。
表紙も綺麗です。
BLに限らず広く一般作品を含め「医療モノ」が苦手である。
理由ははっきりしていて、自分が医療職であるために、設定や用語等細かい部分での間違いが気になって物語に集中できない場合が多いからである。
とはいえ医療における独特の緊迫感は嫌いではないので、やっぱり時折読みたくなる。
本作もそういう経緯で久々に手にした、初読みの作家の医療ものの一冊である。
物語は、クリニックでカウンセリング業務に当たっていた精神科医・嶌が、クリニックの突然の廃業で路頭に迷いそうになったところ、友人の心臓外科医・黒木の紹介で3次救急病院に就職、救命救急センターにほとんど住み込みで働く美貌で変人の救急科医(元心臓外科医)・齋川のカウンセリングを暗に任され、この救急科医の抱えた「心の闇」(というほど物語上は大げさではないが)に切り込むうちに好意を抱くようになる、というものである。
救命救急の現場が舞台であるもののそれほど血なまぐさい感じはないし、主な登場人物の造形がわりと「漫画的」であり、特に二人が恋に落ちるのにたいした迷いも葛藤もなく全体にシリアスに過ぎない点には逆に好感を持った。
齋川の多重人格という設定も、少々突飛な気もする一方で、彼のかわいらしさを表現するにはなかなかのアイディアであるとも思う。
医療上の間違いも散見されるもののさほど気にならなかったことも含め、この手の作品には「シリアス過ぎない」加減が意外と重要なのかもしれないと感じた。
この著者が元病院勤務で医療モノを数多く手がけているとの情報を得て、納得できた。
ただし、主要人物の年齢設定にはやや違和感がある。
齋川・嶌・黒木はほぼ同年齢に設定されており、作中明らかではないものの齋川が「20代にも見える」風貌と評される点から、おそらく30代前半から半ばを想定していると思われるのだが、彼らの働き方・持てる技術・病院内での立場や評価等を考えると、30代後半~40歳がらみにしか思えない。
その点は惜しいところか。