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kyoufu no otokotachi
電子書籍で読了。挿絵有り。
最終巻ではイライジャとライラによるCIAからのイェンホワ奪還と、その結果が書かれています。
あらすじについては書くのを止めておきますが、一気に全巻入手しようと考える方のために『地雷よけ』だけ置いておきます。物語の終焉は全くもって救いのない悲劇的結末ですので、苦手な方は避けた方が良いかと。あと、LOVEがありません。家族幻想や自己愛(特に自分の信条に対する愛着)があります。
あ、エロスも無いような気がします。
以下、全巻を通しての感想です。
①人が行うほとんどの行為の根拠には当然のごとくその人の感情が働いていると思いますが「戦争をここまで私怨でやっちゃうCIAって本末転倒では」と思っちゃいました。これが一番読んでいてのりきれなかった原因だと思います。
②登場人物全員が心に思っていることを話さないので、それぞれの世界が交わることがないのです。集団で行動しているのに、それぞれはひとりぼっち。アッシュはそもそも、そういう設定のキャラクターだと思いますが、人生哲学を持っている様なイライジャやライラまでもがそうであることにイライラしました。これって、あたしの知ってるタフと違う。
③物語の構成は貴種流離譚の形だと思うのですがイニシエーションがない。「耽美(JUNE系)ってそういうものよ」と言われちゃうかも知れませんが、かと言って「さだめを受け入れて流されていく感」も明確じゃないような気が……
④この巻で初めて、アッシュは自分の希望を口にします。でも、それはイライジャにまともに受け取ってもらえない結果になっています。結局「大人は解ってくれない」っていう話だったのかな、と。
⑤ライラが最後に取った行動は、彼女自身が最も嫌っていた考え方だったのではないか、とモヤモヤしています。つまり、あれだけの抵抗をした彼女の心情を引きずるほど、イライジャの家族幻想=マッチョ主義が大きかったということなんでしょうかね?
……と、まあ、色々考えさせてくれる本でした。
読んでいて、実に時代を感じさせていただきましたです。
他者と圧倒的に異なる孤独な主人公が、付いていきたい大人たちには最後まで子ども扱いされ、庇護はされるけれどまともに向き合ってもらえず、余りある美貌と才能を持ちながらも運命を切り開く力を何一つ持てないままで生きていかなければならない話。
確かにあの時代、こういうお話が一つの流れとしてありました。
『教養としてのBL』を抑えておきたい方には必読の書の様な気がします。
でも私は、結果の良し悪しに関わらず、力足らずながらも自分の力で人生を切り開いていこうとする、現代の主人公が活躍するお話の方が好きだなぁ。