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表題作と後日談的SSが収録されています。基本的には、柳井の目線から語られます。
「忘却の報讐」
中学校時代、男子校という閉鎖的空間の中で、柳井は少女のような愛らしい後輩・岡橋と秘密の時間を共有していた。しかし、柳井の転校を機に二人は離れてしまい、柳井は岡橋を思い出すこともなくなっていた。ところが、取引先の担当者として再会する。仕事のミスをカバーするかわりに「一晩自由にさせてください」という岡橋に従い、柳井は部屋に入るが、いざとなると怖くて暴れてしまい、岡橋に強引に抱かれてしまう。その後、岡橋は「復讐だ」と言い、立場の弱い柳井をことあるごとに抱いていたが、柳井の名古屋への転勤が決まり…。
「Cinderella Express」
21ページ。表題作のその後。
題名は、21時東京発大阪行きの新幹線最終便につけられたキャッチフレーズです。柳井は金曜日、会社から直行して東京へ行き、日曜日の最終便で名古屋に帰る。東京に住む岡橋はその逆、時には月曜日の始発。そんな風に週末を過ごす二人の話です。遠距離が解消される見込みはないけれど、距離には負けない、というエンドでした。
岡橋の強引さは想定内だったので、柳井のうかつさが目立ちました。
岡橋のすることは真っ当なもので、柳井を罠にかけて陥れたわけではありません。柳井は、カラダだけの関係だと割り切ることができず、仕事にも支障をきたし、自ら左遷へ導いてしまった感がありました。
ただ、再会後は、過去の先輩風をひきずることなく、岡橋と接したのは良かったです。中学校時代と現在とで、攻受が反対になったのも面白かったです。
中学校時代の人気者だった自分と、うだつのあがらない今の自分を比べて、柳井が情けなくなったり、それでも自分を求めてくれる岡橋に好意を抱いたりする場面があれば、もっと再会後の二人の恋愛が強固なものに感じられたと思います。単に、10年前の恋愛をひきずったままに、思えてしまいました。
「Cinderella Express」は、途中までは柳井の目線だったのに、ラストで岡橋の目線が入ったのが、読んでいて落ち着きませんでした。柳井か岡橋のどちらかの視点に固定した方が、すっきりしたと思います。
遠距離恋愛の難しさを感じさせる作品でした。今はよくても、これからずっと毎週通えるのか…とハッピーエンドではあるけれど、先行きが不安な二人でした。
2010年にフロンディアワークス(ダリア文庫)で新装版が出ています。そちらの内容は知りませんが、別シリーズでは、表紙だけでなく挿し絵が全部描き下ろし、SSが書き下ろし追加されているそうなので、同様であるならそちらの方を買った方が良いかもしれません。でも、私は水貴はすの先生のあとがきで、膝枕&いちゃ甘なイラストが2枚も見れたので、満足です!
再会もの、下克上、年下攻めがお好きな方にお勧めしたい作品でした。普段は強引なくせに、柳井の心がないことに傷つき酔っぱらう岡橋は可愛かったですよ!