赫蜥蜴の閨

akatokage no neya

赫蜥蜴の閨
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神29
  • 萌×29
  • 萌8
  • 中立1
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
8
得点
206
評価数
51
平均
4.1 / 5
神率
56.9%
著者
沙野風結子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
蛇淫の血
発売日
価格
¥855(税抜)  
ISBN
9784344813526

あらすじ

送られてきた妻の浮気の動画…商社支社長の洸己は熾津組若頭の臣に脅されて嬲り者にされてしまう。以降、臣に妄執され!?
出版社より

表題作赫蜥蜴の閨

熾津組の若頭・熾津臣
高柳商事大阪支社長・高柳光己

レビュー投稿数8

人生はわからない

 
 光己はつくづく思ったに違いない。つい先日まで「この男と結婚して幸せになる女がいるとは思えない」と思っていた相手が、自分の生涯の伴侶となったのだから。
 
 本来なら接点すらないはずの2人だった。光己は堅気のエリートビジネスマン。かたや臣は広域暴力団熾津組若頭。でもそれぞれの壮絶な過去をたどれば、合わせ鏡のように見事な一対をなしてもいる。母に殺されかけ、生きることを選んだ光己。母と異母兄、最愛の2人に心中され、自分だけ死ねなかったことを恨み続ける臣。なぜお互いでなければならなかったのかが、物語が進むにつれ徐々に鮮やかに浮かび上がってゆく。
 
 始まりは恐喝。そしてレイプ。そこには微塵も甘さの入り込む余地などない。光己がなまじ「心身ともにしっかりした受け」(作者評)なだけに、業界屈指の絶倫?の誉れ高い臣に好き放題いたぶられる。少なくともこの時点で臣は亡き異母兄似の光己に積年の鬱憤をぶつけているにすぎず、光己は理不尽な暴力に本気で殺意に近い憎悪を覚えるばかり。

 2人の関係に微妙な変化が生まれるきっかけ、それはとても印象的なシーンだ。
抗争で腹心の部下をやられ、傷心の臣が早朝光己の部屋を訪れる。また凌辱かとベッドで寝たふりで身構える光己。でも臣は1人勝手にビールを飲むと、鉢植えの八朔に水をやり、布団の上から光己を軽くなでなでしただけで帰ってゆく。
久々に水を得て生き生きとする八朔を見つめあっけにとられる光己。この八朔はただの鉢植えではない。母の形見であり、光己の流転の人生にずっと寄り添ってきた特別な存在だ。ただただ粗暴で卑劣な脅迫者と思っていた臣の別の貌がみえてくる。

 一見恵まれたエリートのぼんぼんだが、光己の周囲は養父母、妻、義父と光己を抑圧 し、支配しようとする輩ばかり。日々たまる鬱屈。なのに部下には妬まれ、命まで狙われてさすがに気丈な光己も心折れそうになる。臣は光己を熾津組本宅にかくまう。
 
 いきなりヤクザの本宅に放り込まれて平常心でいられる堅気のエリートは少ない。でも光己は、妙にくつろいでしまう。並べて敷いた布団で夜ごと臣に抱かれ、ともに食卓を囲む。三白眼の臣と差し向かいで、これまた人相の悪い若衆かなんかのお給仕で食べるあっさりした和朝食は、不仲の妻と食す高級フレンチよりよほどの滋味なのだ。
 
 臣は臣で、光己とすごすうち荒れていた身辺が目に見えて落ち着いてくる。若衆はもとより、臣の実父の組長にまで歓迎されて、まさかこのまま姐さんに納まるのか光己?!
 でもさすがは沙野作品。血の雨がもうひと降りせずには終わらない。
 
 
 虫偏シリーズ3部作のフィナーレは岐柳VS熾津の壮絶なドンパチ。母と兄の死以来、自らを強烈に苛んでいた自己破壊願望から、死地に飛び込む臣。最後の最後に生に踏みとどまらせたのは光己の「こいつと一緒に壊れてやってもいい」という思いだった。
 
 雨の中で流血もそのままに激しく抱き合う2人。交錯する生と死、光と闇、苦痛と快 楽、すべてが浄化され一つに収束してゆく。
「おまえのコウちゃんになってやる」は男前受け光己ならではの逆プロポーズでしたね。
 
 
 光己は八朔の鉢植えを抱いて熾津本宅へお嫁入り。21年前の惨劇の舞台だった庭に2人で八朔を植える。「でっかなるといいな」「実がなったら臣も食べていいぞ」ともに 180センチ越え、30過ぎの偉丈夫どうしの会話とも思えぬ愛らしさ。
 最新作のアカサギちゃんも相当可愛かったけど、やっぱり私的にはこの2人がベストなんだなあ。奈良さんの絵もこの頃のが一番好き。



 
 
 

 

12

シリーズが終わるのがもったいない

蛇シリーズ最終巻です。
「蛇恋の禊」で、凪斗をまんまと罠にはめ、薬漬けにした大阪ヤクザ熾津臣が今回ご活躍です。
しかも、まだ岐柳組との抗争中なので、凪斗や角能も絡んでくれるし、「蜘蛛の褥」の久隅や、八十島や折原などサブキャラもでるので、最終話にふさわしい豪華出演人で話がすすみます。とはいえ、まったく単独で楽しめる内容です。
熾津臣の壊れっぷりがどこからくるのか、執着しているようで一番執着していない男が唯一執着している「こうちゃん」とは、誰なのか。
「こうちゃん」に似ているというだけで、おもちゃのように翻弄される高柳。
しかし、高柳も鬱屈した想いが心によどんでいて、何もかも忘れさせてくれる熾津臣の存在が、徐々に大きくなっていきます。
檻から出ようとあがくことさえ放棄していた高柳が、熾津臣の自由さに憧れ、彼の破滅感に気付き、支えてやりたいと思うようになる心の動きが、組み同士の抗争や、陵辱の合間に細やかに描かれています。
豪華なキャストで、緻密なストーリーで、120%楽しめる作品になっています。
奈良先生の描く、臣の背中の見事なトカゲの彫り物も、見ものです!!

10

息詰まる空気に酔う

正直、これを読むためにこのシリーズに手を付けたようなもの。で、その価値はありました。

いや、濃かったです。エロもバイオレンスも濃かったんだけど、一番濃かったのは空気。窒息しそうなほどダークで密な空気が素晴らしかったです。
展開もなかなかのもので、臣の行動に気持ちよく振り回されました。会社乗っ取りの方は少々ぬるめなんだけど、高柳の興味・関心の方向を考えるとあり得る話で、追いつめられていく高柳が嗜虐心をそそります。

だけどやっぱり、一押ししたいのはこの空気なんです。私はストーリーやらなんやらはこの雰囲気を味わうためのツールに過ぎないと思います。臣の過去もトラウマもどうでもよくて、ただ臣と高柳の醸す空気に浸れるならそれでいいと思ってしまった。(これじゃレビューになりませんが)かといってお話が詰まらないわけじゃなく、瀬戸際なのに安定したバランスで息を詰めるような感覚があって、それもまた作品の空気づくりに一役買っています。

そのくらい妖しく濃い空気が、ぴっちり閉じた緊迫感とともに詰まっています。このぴっちり閉じているというのが肝なんでしょうね。どこかで萎えさせたり緩めたりせず、しっかり閉じているからこそ素晴らしい。この完成度をもってこそ成し得るんでしょう。

これはぜひM属性の方にお勧めしたい。沙野さんに惚れてしまうことうけあいです。

7

これ、なんてBL!?意表をつきすぎる設定と展開

このシリーズ、非常に好きです。
一瞬、ヤクザBL?の一言で片付きそうなのにもかかわらず、なかなかどうして、
やるなぁ…面白いよ、これ。
ま、つっこみどころはそれなりにあるんだけど、容赦のない凌辱シーン描写に神評価をつけたい。

受けの光已がですね、BLにありがちな甘い感じじゃない。
攻めの熾津臣は関西弁バリバリの武闘派ヤクザで、そりゃもう男×男のまぐわい…
しかも完璧なまでの凌辱で、相当にグロテスク。

シリーズ全体にエログロナンセンスさがたちこめていますが、
このグロさは他とは桁が違います。

さらに、本作には推理小説的なファクターもあるので、なかなか読みごたえがある。

…と、フトここまで書いて思い出した。
ああぁぁーーーっ!そうか!
沙野先生!江戸川乱歩が好きですか!?w
エログロナンセンスさは江戸川乱歩原作の「黒蜥蜴」にインスパイアされてのこと?
追うものと追われるものでありながら、双方、激しく惹かれあうアンビバレントな状態はたしかに雰囲気が似ている。

文章も硬質かつ容赦のなさがいい。

はらわたのはじっこにキモチワルサを感じながらも読み続けずにはいられない、
そういう作品でした。
凌辱好きの方にもおすすめの一冊。

4

鬼畜攻めと芯が強い受け

同シリーズの蛇淫の血や蜘蛛の褥なども読みましたが、赤蜥蜴の閨が一番、極道で無理矢理って感じがしました。

攻めの臣は武闘派で破天荒で破壊願望まであるので攻め方が鬼畜です。
始めの方を読んで、ここからどうやってラブにしていくのだろうと思ってしまいました。

対する受けは強い。
極道相手なので、同シリーズの受けはみんな強いです。
赤蜥蜴の閨の受け光己は苦労人なので我慢強く健気で芯が強いです。
沙野先生が攻めもできそうな受けと書いてましたが180センチ以上の長身でクォーターのイケメン。
そして鬼畜で破天荒の攻め、この二人の絡みは濃厚です。

幼少期から抑えつけられて生きてきた光己。
苦労して今の地位を築いてきた光己ですが、自分の事を愛してくれる人はいない。
生きていく為に一生懸命な受けの強さに惹かれて、身代わりではなく光己本人を愛してしまう臣。
始めは鬼畜でしたが、身代わりでないと自分の気持ちを自覚してからの臣は、不器用ですが優しいです。

健気な光己を利用してきた養父、養母、義父、妻、特に裏切った部下が、最後に痛い目ににあえば良かったのにと思ってしまいました。
そのまま収まってしまったので萌え×2です。

2

アクセル大全開、渾身の沙野(&奈良)ワールド

萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
ひょ~バイオレンス!
シリーズを締めくくる最終巻ということで作者の沙野さんがかっ飛ばしてくれてます。
これまで主役を張ってきた凪斗&角能でも久隅&神谷でもなく、新しい主人公。
やはり極道の世界に巻き込まれていく堅気という構図は変わりませんが、総決算に応える総出演に興奮しました。今までの主人公たちと対立っていう配置もファン心を煽ってくれてます。

「コウちゃん」に執着する熾津組若頭・臣×高柳商事大阪支社長で既婚者・光己。
陵辱から始まる関係というのはほとんどヤクザモノのセオリーですが、充満するこの濃厚な空気は沙野さんならでは。
ハードでダーク、殺伐としながら糸をひくような卑猥さがたまりません。
蛇、蜘蛛に続きそして今回の蜥蜴というモチーフへのこだわり方が、これまでに以上に輪をかけて淫靡です。
特に人が折り重なって初めて完成するという刺青の仕掛け、またその由来にはゾクゾクするものがあります。

陵辱者でヤクザもの。
赤蜥蜴を背負っていることの意味…この臣という人間の全体像がラストでようやく理解に至った時、光己と共にわたしもこの男に惹きこまれました。そしてオヤジ臭い関西弁がエロすぎる。
対する光己もただ嬲られるだけの位置に甘んじないのがいい。繊細ながらも意外としたたかで、抑圧された30代特有の男の色気があります。
ほとんど睦言はない二人ですが、少しずつしかし確実に変化していく様がセックスシーンに見事に昇華されています。

そのセックスシーン、沙野さんですから言わずもがなの、ごちそうさまと手を合わせたくなる満載ぶり。
しかしエロではなくエロスなのです!
シュチュエーション、メンタリティー、モチーフを駆使したセックスシーンは相変わらずの出来映え。エロスの引き出しの多いお方です。(賛美です)
特に今回絵師の奈良さんがこれでもか、これでもか!と、本領発揮とばかりにエロスの腕を振るっていらっしゃるイラストはもう圧巻。奈良絵のフェロモンに噎せ返りそう。
扉絵には本気で鼻血が吹きそうでした……

シリーズのラストに相応しい渾身の作。
もちろん単独でも読めますが、ここからシリーズを追っていくのも面白いと思いますよ。

☆わたしが選ぶ名台詞
臣「コウちゃんの、でかくてエロイのう」
(アレも立派な受け設定にアドレナリンが…!)

◇シリーズリンク作◇
「蛇淫の血」&「蛇恋の禊」
「蜘蛛の褥」

3

これがBLというものなのか。

沙野さんこのシリーズが初読みです。

エロスが濃いのですね。
奈良さんのフェロモン絵と相俟って、それはもう濃いのですね。

蛇、蜘蛛ときて、赤蜥蜴。
オヤジ臭いフェロモン過多な感じで、私はこれが一番好きでした。

共に30代という大人のカップル、関西弁ヤクザの攻めががが。
「わしのタネは美味いか?」
「よう締まるのう、わしのに咬みついてくるわ」
「コウちゃんの、デカくてエロいのう」
ワタシ満腹です。

とエロばかりなわけではないです。
光己の抑圧された環境と臣の執着、お互いの状況や心情も緻密に書かれていて、シリアスな面も引き込まれておもしろかった。
ヤクザよりも一般人の方が悪でしたね。


どうでもいいですが、一度に8回っておじさんんんんんn!
光己は大丈夫なんですか。
耳を銃で撃たれ、肘が折れたままで雨の中数えきれないほどヤル彼ら。
あっぱれ!

3

結果オーライなの?

蛇シリーズの番外編ですが、前蛇シリーズ未読です。
この後読む予定です。
この本単体でも内容を把握するには問題なかったです。
かなりミステリー要素が多い本作。楽しめました。
ただ理不尽さにふつふつと湧き上がるものがありました。
高柳があまりにも気の毒すぎる気がしました。
熾津にはただ単に自分の兄に似ているというだけで憎しみの感情を持たれ目茶目茶にされ、自分の信頼を置いていた部下には手ひどく裏切られる。養父、養母からの愛情は全く感じられず手駒にされ、妻は虚栄心の塊で夫婦間は冷え切っていて部下と不倫中。
結果的には高柳家と離れられて良かったのかもしれないですが、あまりに理不尽すぎてイライラしました。光己はこんな目にあっても人を許す事ができる出来た人だなぁと感じました。

1

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