37℃

37℃

37℃
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神34
  • 萌×213
  • 萌24
  • 中立10
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
25
得点
304
評価数
86
平均
3.7 / 5
神率
39.5%
著者
杉原理生 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
北畠あけ乃 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
価格
¥860(税抜)  
ISBN
9784813011743

あらすじ

「悪いんだけど、俺をしばらく泊まらせてくれないか」 銀行に勤める野田に突然掛かってきた数年ぶりの電話。それは、大学時代の野田の秘密を共有する男、若杉からだった。泊めることを了承してしまえば、面倒なことになる… そうわかっていながら、野田は頷かずにはいられなかった。とっくに終わったはずの関係だ…… それなのに…? 静かな熱病のような恋が始まる──!
出版社より

表題作37℃

若杉,34歳,演劇関係
野田,32歳,妻とは別居中の銀行マン

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数25

萌えどころは無いけれど

恋愛模様が丁寧に書かれています。
受けも攻めもどちらにも感情移入は出来なかったけれど、この二人には幸せになって欲しいし、こんな風に(大小じゃなく)人を好きになることが出来るのは羨ましいなとも思えました。

野田の自分の性嗜好に気付かないまま、流される風に結婚して、仕事もそれなりに順調で、なのに過去に重い荷物を抱えたように生きている。そしてその荷物の一つが再び目の前に現れたら…
若杉もあの時に感じていた想いをずっと持ちづづけて、面影を辿るようにして生きている。

長く離れた時間がお互いの立ち位置を変えてしまっている(妻帯者と恋人持ち)が、それが故に?野田は若杉への想いに気が付き、何よりもただ若杉を離したくない離れたくないということを一番に置くことを覚悟した訳で。
若杉はどうにもならない野田の気持ちが自分に向けられていたことを認識し、恋人とも別れて野田を甘やかす。。。いえ、自分だったら野田みたいな奴は付き合いきれないですけどね〜

離婚を承知した奥さんもかわいそうだけど、良い相手がいるなら二人をそっとしておいてあげてほしいな、と切に願います。(実際は義母だけど)

BLというよりも、切ない、でも未来は明るいと思える恋愛小説だと思います。なので萌えない(笑)

終わり方は余韻があるので、モヤッと感はありますが、野田の意気込み?がハッキリしているので、引っ張る感じではないかな。
続編希望が多かったら、その後のストーリー展開もあったのかも知れません。

1

R37

作家買いです。有難いことに紙の新本がまだ入手可能だったので、名作の呼び声高い本作品、お取り寄せしてしまいました。”神”or”しゅみじゃない”の二択系統です。いつもより読み進むのに時間がかかってしまいましたが、読了して”神”一択でした。”翳りゆく部屋”という昭和の名曲があるのですが、音楽にするとそんなイメージでした…。

大人のベリービターな恋愛小説ですね。”恋愛”の本質小説です。楽しい内容ではないので、誰にでもお勧めできるものではないのですが、読み継がれてほしい名作、こういう情緒が廃れてほしくないという気持ちです。昭和の文芸が好き、とかいう方ならささる気がするのですが。あと、R37ということで…。(37℃なだけに)

一目惚れ!ってヤバいですよね。相手のバックボーン抜きで好きになっちゃうんですもん。俗っぽく言うと見た目なんですが、綺麗にならすと魂レベルということです。見た目に惚れたという野田に対して、同じ見た目で全く違う中身の自分を好きになるのかと若杉が問う場面が印象的でした。形もなにも存在しないところでも野田を選ぶと語る若杉、こんなにもロマンチストで誠実で寂しがりやな男がなぜ野田のような男を好きになってしまったのか、、というこの不可解さこそ恋の醍醐味な気がします。

年齢と経験を重ねるほど、純粋に恋愛をすること自体が難しくなるんですが(実際問題w)、だからこそ10年前に封印したはずの若杉への気持ち、世俗に汚れていない唯一の美しいものを手放したくないと考える野田と、求めても求めてもすり抜けていってしまうような存在に情熱を注ぐ若杉が、心から血を流しながら行う行為が切なすぎました。野田が狡い人間に見えるのですが、実は自分が傷つきたくないと思う分だけ、他の人にも傷ついてほしくないと思っているだけな気がします。両想いなのに自分の幸せだけに酔っていられないほど、野田は周囲の人の気持ちを慮ってしまうのだと思いました。(ある意味、正しい大人なんです。)

おそらく、出会わないほうがそれぞれ完璧な人生を歩めたのかもしれないと思わせるCPです。価値観の相違は別れる前提みたいな設定なんですよね。肌をあわせたときに感じる温度の幸福感が自分のおかれている現実をひととき忘れさせる中毒性のある麻薬みたいものだからこそ、野田はその感覚と正気のはざまでずーっと揺らぐんじゃないかなと思いました。しんどい…でも素晴らしい作品です。

2

大人の恋は重い

KindleUnlimitedで読みました。挿絵、あとがきなし。
表紙のイラストが素敵なので、中の挿絵も見たかった。ちなみに、杉原先生の作品はこれが初読み。

序盤から、くっついたり離れたりのモダモダがもどかしい。受けが攻めを簡単には受け入れられない理由として、信心深い親に育てられて自分の性癖を責められてるように感じて育った、との記述はある。が、それ以上の具体的なエピソードが語られるわけでもないため、そこにイマイチ感情移入できなかった。
攻めも攻めで、そこまで受けに執着する理由がよくわからない。受けの一人称なので、最後まで攻めの生い立ち、背景が見えないままだったせいか、何を考えているのか掴みきれなかった。

好きだと言い合って、体を重ねても、ずっとどこか不穏な空気を感じるストーリー展開がツライ。結局どちらのキャラにも感情移入できぬまま読み終わってしまい、ぶった切られたような結末にも呆然としてしまう。
この読者の想像に委ねたラストは、前半部分で受けが攻めの愛から逃げたのを見ているからか、どうにも「この二人なら大丈夫、乗り越えられる!」という確信が得られない。しんどさとモヤモヤばかりが残る読後感。

2

そういう終わり方か~と言う感じ

学生時代に出会う攻めと受け。そのときの二人の関係性が何とも形容しがたい繋がりで、読んでいる方は攻めが受けに夢中なのはわかるのに…受けは関係性が曖昧なのに乗じて受け入れない感じが焦れったかったのですが、背景には受けの育ってきた環境、大人になって再開した頃にはまた違う要因があって、どうしても幸せを受け入れられないのが切なかったです。総じて攻めがかわいそうだな、という印象で読み進めたのですが、ラストが思ってた終わり方と違って、なるほどなあと言う感じ。きれいに終わりきれなさそうなのがリアルでした。ハッピーエンドじゃないとダメな人にはおすすめしにくいかな。

1

この余韻は、好みが分かれるかも……

切なかった……
ハッピーエンド?メリバ?
終わりの始まり?
読後の余韻は不安いっぱいでしたが、作品自体は愛に溢れたものでした。

若杉みたいな男にここまで愛され、求められたら幸せだと思う。
意地っ張りだった野田の心境の変化を、とても丁寧に描写していました。
心変わりじゃなく、10年引きずった初恋だと思う。

若い時には分からなかったことが、年をとると分かってくる。
それは絶対にある。
色々な経験をして辿り着いた答えが、「若杉」で「野田」で。
出会ってから10年経った今だから結ばれた2人なのでしょう。
その過程で傷付けた人がいたとしても、出会うべくして出会い、再会した2人だと思う。

野田の業は、離婚する前に若杉と付き合ったこと?
それとも、ゲイなのに女と結婚したこと?

ただ、どんな業を背負っても若杉と別れないという野田の強い気持ちは伝わった。
同じような状況で逃げ出そうとした、過去の野田はもういない。
これからどんな事があっても絶対に離れない2人だと思うし、そう思わせてくれるだけの熱量を感じました。
熱くもなく冷たくもなく、でも決して冷めない温度。
それが、37℃なんだと思う。

イライラしながらも、最後までドキドキさせられました。
綺麗事じゃない、年相応の大人の恋愛を見た気がします。

1

「神」か「趣味じゃない」かの二択

「萌」や「萌×2」などという生半可な評価を許さない作品だな、と感じました。
「神」か「趣味じゃない」かのどちらかしかない。
「趣味じゃない」が選択肢に含まれる最たる理由は、あらすじ・冒頭部を読んで抱いていた印象と、実際読んだ内容が180度違ったから。

あらすじと冒頭部を読んだときは、「いい加減で酷い人間なのに、どうしようもなく魅力的な悪魔のような攻め」に魅了され、翻弄されてしまう「真面目で純朴な受け」の話かと思ったのです。
しかし実際読んでみたら違った。
攻めはとても魅力的な男性だけれどもそれ以上にやさしく情があって、受けのことを受け止めたい、どうやったらいいのかと悩む真摯な人物でした。
むしろ、真面目で純朴そうな(そして真面目で純朴では、ある)受けの方が悪魔のような人間だった……。

でも受けも、ただ酷い人間なわけではない。
受けの中にどうしようもない暗くぽっかり空いた穴があって、それを自分でも扱いかねているのがよく伝わってきました。
そんな受けを、攻めはなんとかしてやれるんじゃないか、うまく接することができるんじゃないかと期待し、しかしやはり自分の手には負えないと絶望する。それが繰り返される。
そんな作品でした。

趣味か、趣味じゃないかと問われたら間違いなく「趣味じゃない」。重くて苦しくてつらい。
でも、受けの苦しみも、攻めの苦しみもわかる。人間のエゴイズムを描き出した、見事な作品だとも思う。
なので、悩みに悩んで「神」評価にしました。

系統としては、もだもだ系。
だけど、イライラはしないです。それよりもむなしさが残る。
心理描写の壮絶さはまさに杉原先生の真骨頂!
そんな作品です。

6

終わり方が好きです

お話は3部構成になっています。
大学時代に出会った二人の10年に渡るお話です。

二人は両片思いどころか10年前から両思いなのだけど両思い感はなく、ずっとお互い相手に対して実らぬ恋をし続けている……そんな気分になりました。
というのも、受けが凝り固まって捻くれためんどくさい男なんですよ…。

攻めはお互い魂だけの状態になったとしてもきっとお前だと見つけられる、というほど受けのことを愛しちゃってる男。
だけど受けは人一倍臆病で、自分の奥底に潜む願望に蓋をしてクールで理性的であり続けるのでそこが読んでて何とも焦れ焦れするし、何かと攻めの前から逃げようとする姿に、ハラハラさせられます。

もちろん攻めの元カレの存在や別居中の妻の存在があるのもわかるのだけど、いつも問題を先送りにしているような感じで、いつになったらこいつは素直になるんだ?いつになったら燻り続けるこいつの心に火は点くんだろう?と思いながら読みました。

そう考えると「37℃」というタイトルは何てピッタリなんだろうって思いました。

平熱ではない。
かと言って、お熱でもない。
消えそうでいて消えない大人の恋。

私は最後の展開がすごく好きです。
大団円的なハッピーエンドではないからこそ、色んな余韻がありました。

これから二人は茨の道を進むと思うんです。
きっと社会的に色々なものを失う事でしょう。

だけど今まで逃げることしかしてこなかった受けが、攻めさえいてくれればその他の全てのものを失っても構わないとまでに覚悟し、初めて逃げない道を選ぶ。

お前がいつ逃げるかわからないからと、受けよりも後に寝て受けよりも早く目覚めていた攻めが、何も知らずに初めて見せる熟睡する姿。
それが嵐の前の静けさを際立たせていて何とも切なくて。

だけど、攻めは受けの覚悟をその重みを実感しながら受け入れてくれるはず。
そして10年かけてようやく変化した二人の絆はこれで切れるどころか、一層強固になるだろうなぁ、そうであって欲しいと思います。

個人的には50代を迎えた二人が、あの頃は大変だったよな…的に振り返りつつ、二人程よく枯れつつも仲良く一緒にいる…といった続きが読みたいなって思いました。

電子なので本の厚みなどでボリュームを実感できないのですが、凄くボリュームがあったというか読み応えがありました。

ーーーー
ぶっちゃけ感想。
妻に出て行かれて結婚生活はとっくに破綻してるのだから、とっとと離婚を切り出せばいいのにと思った。
別居中とはいえまだ離婚していない状態で、攻めとアレコレする前にとっとと目の前の問題片付けろよ……とモヤっとしたのも事実。

でも自分から別れや離婚を切り出すって大変なことですよね、きっと。
自分からは言い出す資格がない…みたいな感じで切り出さないけれど、切り出す辛さを背負いたくないみたいなやはり「逃げ」を感じました。

ゲイなのに認めるのが怖くて結果的には偽装結婚のような感じで妻を傷つけ…相手の親も傷つけ。
逃げていたツケが回り回ってのラストなので、すんなり離婚できた〜ハッピー〜!的な終わりではなくて良かったなぁと思います。

3

苦しくて狂おしい恋愛

冷たく固まってひねくれた男野田と、情熱的な男若杉との10年愛。

I
10年前、関係を持っていた男若杉との再会と邂逅。
若杉と野田は、全くその持って生まれた性質が違う。だからこそ惹かれ、わかりたくて近づき、理解し難くて反発する。
若杉の愛し方は甘く官能的で、でも野田の欲しい愛し方は無理矢理で乱暴で酷くして欲しくて。心では若杉の愛し方を望んでもいた、でも好きと言われるのも優しいキスも嫌がっていた日々。
再会して、またつかの間同居して、あの頃とは違う目で自分を見る。この自分の心の中にも恋という場所があった事を。

II
10年前とは全く違う温度でまた恋をしている二人。
野田視点なので若杉の心中は定かではないけれど、野田の方はかつて男の熱情に引き込まれまいと逃げていた感情に進んで落ちていくようで。
そんな時、若杉の別れた恋人が野田の前に現れて『別れてくれ』と懇願する。
そこからは混乱して話も聞かず一人で抱え込む野田と、そんな野田を手に負えないという若杉の、いわば修羅場。
別れたい。別れたくない。
もうお前を追わない。俺はどうしたらいい。何を望んでる?
殺してくれ……生きてくれ。

III
別居中だった妻と離婚が成立できそうで、野田は若杉と生きる事を考えていた。二人ともやっと思いの通じた恋人のように甘い時間を共有していたのに。
事件が起きる。
今までの野田だったら全てを捨てたかもしれない。でも今の野田なら…若杉から『生きてくれ。俺のそばで』と請われた野田なら。
『大丈夫だ ここにいる。私は、ずっとそばにいる。』

若杉が芝居の脚本家兼役者、という設定のせいかどうか、文章を読んでいると演劇的というか、舞台で俳優がこの「37℃」という芝居を演じているのを観ているような気分になりました。目に浮かぶ、というのかな。
野田が変化して若杉を求める熱量のようなものが、ただの文章だけでなく実体を持って迫ってくる。
決して甘い物語ではないけれど、重厚感、読み応えのある小説でした。

7

30代半ばの再会カップル

文体がとても綺麗です。
読んでいるだけで、違う世界にきたような気持ちになりました。
「小用」という言葉を見て、びっくりとともに楽しい。

野田の独白で話がすすめられるので、心情を理解しやすかった。
読んでいて、互いの心の隔たり、葛藤に
どーして、言わないのー。
とじれったくなります。

SMシーンは軽めで、痛い汚い感じはしませんでした。
背徳を感じさせる美しい描写で。
どちらかといえば、自己保身ばかりの野田の方が若杉への放置プレイ気味だったような。野田の冷たさや弱さが際立っていました。

野田の妻や若杉の恋人など、関わった人間の心情はあまり語られなかったので、理不尽に2人に振り回された気持ちを知りたくなりました。
妻の側へ知られてしまったことで、野田が不安定になるのでお互いの対決を読んでみたいと思ったからかも。

ラストは続きが気になる余韻でしめられ、どうなったのかと嬉しいもやもや。
ただ、前向きな選択をしそうな印象を受けました。

続きがあれば、読みたい作品です。

3

本当に大人になってからの恋

迷ったけどやっぱりすばらしい作品だと思ったので神評価で!

大人になってから、学生時代、体の関係だけ持った友人と再会するお話。
主人公の野田は屈折した性格で理解しがたく、非常に面白いです。
最初は若杉のほうが変わったキャラクターなのかと思いますが、読んでると次第に野田がどれだけ面倒なキャラかわかってきます…。

大人になって再会し、いろいろあって、学生のころのあれは恋だったと今更ながらに理解する野田。
けれど今若杉と恋人になろうとするには歳をとり過ぎていて、会社での地位の事、妻の事、それらを無視することは出来ないという大人の恋のお話だと思いました。

心の中の若杉を好きな部分は綺麗なもので、でもそれを素直に出せるには外の世界は厳しすぎて、現実と自分の心の内とでぐるぐると気持ちを持て余す、全体的に野田の心理描写を追った静かで綺麗な作品でした。
まだ色んな問題は残っていて、でもそこを安易に終わらせない所でこの作品の完成度が高まっている気がします。

少し物足りないのは、「体もなにもないものになっても相手を探し出せるか」という深いお話までする2人ですが、野田の一人称のお話なので、肝心の若杉の心理が野田ほどに理解できなかった事でしょうか。
でもこれは野田の綺麗な独白でこそ成り立つお話なので難しいところです…。

6

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う