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短編形式の小説で、主人公二人が出会いから結ばれ、未来に向かっていく様子がゆっくり描かれています。
学生ものでないから青春小説というのはおかしいんだけど、ちょっと詩的な結びが青いドラマを見ているようでした。
こういう、受けがトラウマを超えながら成長していくお話が好きです。
雰囲気も青臭いというと言い方は悪いかもしれないのですが、こういう作風は今ではあまり見ないかも知れません。
個人的にはとても、お気に入りの作品になりました。
主人公のカズサはドラッグ中毒で死にかけていたところを医者の本橋に拾われ、彼の家で治療を受けます。なんとなく居着いてしまったカズサと、愛着がわいてカズサの世話をやく本橋の同居ラブストーリーです。
カズサは暴走族に入っていて親に勘当され、東京で働くもうまく行かずにお酒とドラッグに溺れて体はボロボロ。
まだ10代なのに、ドラッグの後遺症で思考が緩慢、ぼーっとしている事が多く会話もあまりかみあわない。
でも本橋だけは、うまく彼と付き合っています。
そんなに重いお話ではなく、割りと前向きな同居生活のお話です。
甘いとまではいかないかもしれないけど、一匹狼のようや子供がたった一人にだけは懐くとか、帰ってこないと不安でそわそわするという展開が大好きです。
本橋もまた一筋縄ではいかない人間。
温厚な医者なのは見せかけで、実際は短気で気難しい。カズサよりも扱いが難しくキャラの掴めない人間だと思いました。
そんな本橋がカズサにだけは執着を見せるという設定も好きです。
あまり見かけないタイプの二人の組み合わせでかなり珍しくて面白く読めました。短編形式というのもよかったですが、進みが穏やかなのでもっと大きな何かが途中であってもよかったかもしれません。