まばたきと人魚姫

mabataki to ningyohime

まばたきと人魚姫
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神0
  • 萌×22
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
1
得点
8
評価数
2
平均
4 / 5
神率
0%
著者
弓月あや 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
明神翼 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
電子発売日
価格
ISBN
9784576250472

あらすじ

事故で母を失い、自らも重症を追った中学生の温を引き取ったのは、亡き母の勤務先の社長・寒河江倭だった。車椅子生活となった温のため屋敷をリフォームし、専任の理学療法士まで手配してくれるという厚遇ぶりだったが、倭はぶっきらぼうで表情が読めない。けれど入院中、話せない温とまばたきで会話してくれた優しさを知る温は、倭への思慕をつのらせていく。そんな二人の間には一回り以上ある年の差と倭の大人の分別がそびえ立っていて…。

表題作まばたきと人魚姫

温の母の勤務先の撚糸工場社長,20代後半→30代
中学2年生,14歳→18歳

その他の収録作品

  • 溺愛と人魚姫
  • あとがき

レビュー投稿数1

思いがけず、泣いてしまった

弓月あや先生の新刊は、王道の不憫受け救済ストーリー。
タイトルの”人魚姫”という言葉と、
明神先生による優しいお姫様抱っこイラストがとても素敵..・:*+.

正直に言えば、ちょっと色々「ああっ、ここがもう少しあれば…!」とか、
地の文の書かれ方など、100%自分の好みとは合わないかな、と感じる部分はあり;

でも、それでも、
王道の年上スパダリの包み込み愛×不憫受けの救済ストーリーに涙し、
グッときて最後には満たされた気持ちになりました。
悲しいけれどちゃんと救いのある、素敵なお話だった...

天涯孤独となり、体も不自由になってしまう中学生(14歳!)の
主人公・温(はる、受)。
その境遇が辛くて、悲しくて、途中何度も涙を拭いました( ; ; )

以下、簡単なあらすじと感想を..


母親と一緒に買い物に出かけた帰り、事故に遭った温。
気づいた時には病院のベッドの上、声出せず何も話せず、
体を動かすこともできない…

母の容態を心配しながら入院&リハビリ生活が始まるのですが、
そんな時温のもとを訪ねてきてくれたのは、
母の勤務先工場の社長・寒河江 倭(さがえ やまと、攻)だったー

決して”がんばれ”とは言わず、不器用ながらもそっと見守る倭が
温の心の支えとなります。

そして退院の日が迫って来たある日、倭は天涯孤独となり、
行き場のなくなってしまった温のことを引き取りたいと申し出て来てー

と続きます。


母子家庭の温の、貧しくも温かな日常が一変する様。

事故後、言葉も発せず一人では起き上がったり水を飲むこともできず、
車椅子生活を余儀なくされ、ついには唯一の希望だった母の死を知らされるー


もう、こんな健気で良い子になんて仕打ち!
感情移入しすぎて涙が止まらず、ぐすぐす言いながら読み進めました。

序盤、辛い中でもきゅんとときめいたのは、
まだ何も喋れない状態の温と意思疎通するため、
倭が提案した”まばたき”によるコミュニケーションです。

まばたき1回が”ノー”、2回が”イエス”。

絶望感に打ちひしがれ、病院のスタッフに「頑張れ」と言われ続けることに
疲れてしまった温の目から溢れる涙を、倭がそっと優しく拭ってくれる...
(必死にもがいて頑張っている時に言われる「頑張れ」の一言ほど、
残酷な言葉ってないよね...と共感;)

「痛いのか?」と聞く、ぶっきらぼうながらも優しさを感じる一言と、
目で思いを伝える会話。

”目”の表現がとても印象的で心に刺さり、じーんとする場面でした。


ぶっきらぼうで表情も読めない倭だけれど、
入院中に自分と”まばたき”で会話してくれた彼の優しさを知る温は、
倭への思いを募らせていきます。

自分を引き取り、同居させて家の中を総合リフォーム、
専用のリハビリ室も作ってしまうスパダリ・倭。
表情の変化や言葉は乏しいかもしれないけれど、その言動から
温のことを「これでもか!」と慈しみ、労る気持ちが伝わってくるんですよね..


ただ、攻めの倭はただの思いやり溢れる”スパダリ”というわけではなく、
実は”自分のせいで温たち親子が事故に遭ってしまったー”という負い目を抱えている。

受け・温視点の物語のため、
倭の気持ちが直接的に語られる描写は少ないのですが…

倭の言動を見て語る温の目を通して、彼の感じている葛藤が
十分に伝わってきました。

そして後半、そんな倭の気持ちを見抜いた温が
倭に対してかけた言葉。

「あなたのせいじゃない」と言い切れる温の心のしなやかな強さ、
素晴らしいな、素敵だな...と思えました。

入院中からずっと、倭に救われてきた温だけれど、
温のかけた上記の言葉によって、倭もまた、おおいに救われたんじゃないかな。
(もちろん、悔いる気持ちは消えないとしても..)

大人×中学生、ということで、倭にちゃんと分別がありわきまえた大人で、
温を諭していたのも良かった。

倍近く年齢の違う二人。
そんな二人が体を重ねたのは、温が18歳になってから。

一途に倭のことを想い続けてきた温が囁く「抱いてください」という言葉、
それに応える倭の姿に、胸が熱くなりました。

尻尾と声を失い、大きな犠牲を払った末に
大切な王子に愛されることなく、海の泡となり消えてしまった人魚姫。

そんなおとぎ話の人魚姫とは異なり、
大怪我をして母を失いながらも、
愛する人と一緒になることができて、本当に良かったね...( ;ㅿ; )

年上溺愛スパダリに何よりも弱い自分のハートに刺さる、お話でした。

倭が引き取李育てている彼の妹・凛々花が出てくるパートも
ほのぼの可愛かったです。

ちょっと気になった…というか、辛く暗い気持ちになったのは、
同居生活が始まってから温の担当になった理学療法士・貝谷のエピソード。

だめな奴だったけれど、考えを改めたりするのかな、
何か変わっていくのかな、と個人的に思っていたので、、
救いのないあの展開はちょっと辛かった。。;
(彼のその後の顛末は完全に自業自得なんだけれども)

あと作中、
”事件のことがフィードバックしているらしい”
という一文があったのですが、これは”フラッシュバック”の間違いかな、と
思いました。

…と、色々書いてしまいましたが;

スパダリ×不備受け、王道ならでは!の良さとカタルシスがある
救済ストーリー、良かったです…(*´˘`*)(端的に!)

思いがけず泣いてしまいましたが、
読後は温かな気持ちに包まれ、満たされる一冊でした。

3

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