ぱるりろん
bokura no sekai ga owaru koro
まずはこの世界観に圧倒されました。
第三次世界大戦中に龍が出現し、なしくずしに停戦、世界が大被害に見舞われて分断される。北は韓国、南は台湾、東は長野県あたりで分断されて、海も壊滅、ヨーロッパとも通信途絶という状況。日本の国土は五分の一になっています。
そんななか世界を守るためには龍を召喚する《門番》が必要で、神社の後継である12歳の御門一月が適性検査の結果クラスSの《門番》として施設に行くことに。怪我をした幼馴染みの吉宗の代わりにです(吉宗の検査結果はクラスA)。
その後吉宗は、《門番》を護衛する海上自衛隊特別敷設部隊に志願して、二人は十年後に再会。
というお話なのですが、上記の通り、とにかく内容が盛りだくさんです。
100ページの同人誌で読み応えがありまくりで、ただ冷静に考えれば色々なことが中途になっていて、あとがきでも先生が派生する可能性のある事柄を列挙されており、続編、番外編など関連の物語が期待でき実際にシリーズ化もされています。
なお、この「僕らの世界が終わる頃」は「夕映えは楽園の彼方」と改題して表紙デザインも新たに最近発行されました。内容は同じとのことです。
(新版は表紙に「龍シリーズ」の表記があります)
設定をこうやって文字で読むと複雑に感じると思いますが、実際に作品に触れてみるとすっと入って来て、気付くとその世界観に取り込まれます。それが尾上作品のすごいところだと思っています。同じ近未来のものだと、BLSFアンソロジー「恋する星屑」に掲載されていた「テセウスに殺す」もそうでした。
特に本作は、龍を召喚するときにD波と呼ばれる空間の歪みがあったり、金粉が空から降ってきたりするのが絵画的で、龍により破壊された町の描写も鮮明で、アニメーションに向いているなと思いながら読みました。(脳内映像はアニメでした)
本書単体ではブロマンスとして、一月と吉宗の関係性が描かれています。
かたや国の重要な《門番》、かたやセコムと呼ばれる《門番》の護衛。幼馴染みで、相手本意で頑なところは似たもの同士。
10年ぶりの再会もドラマチックではありましたが、いつまでも相手を大切に思い合う二人に打たれました。
これからも小競り合いしつつ支え合いつつ共に生きていくのだろうなと思えて微笑ましいです。恋愛に発展するかは不明です。
気になるところがあるとしたら、龍の適性検査を14歳以下の子ども達にしていたことでしょうか。国を守るために子ども達が犠牲になるのかとやりきれない気持ちになります。ただ、エヴァンゲリオンも14歳だったしほかでも十代の子たちが頑張って国やら人々やらを守って戦うアニメは多いので、あまり深く考えなくてもよいかもしれません。
適性の高い子ども達を集める担当をしていたファズラ三佐の苦悩が少し描かれていたことに救われたことは事実です。