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広澤実月の家は子爵とは名ばかりでとっても貧乏で、家屋敷も手離す寸前の窮状を救う唯一の手立ては妹・美星と裕福な久津見伯爵との縁談だけだった。でも、久津見伯爵は人嫌いで引きこもり、その上家族を毒殺したという恐ろしい噂まである人物だったが、家を救うためにはそれしかない、ということで、実月の父親は、その縁談を飲んでしまう。
それを知った美星は、「好きな人と一緒になるんだ」と言って、婚礼直前に駆け落ちしてしまった!
このまま縁談が破談になってしまえば、ただでさえ、貧乏な広澤家がますます窮地に陥ってしまう。悩んだ末に、年が近く美星に顔の似ている実月は、彼女になりすまして伯爵家に嫁ぐ事になった。
しかし、初夜には男の実月が美星になりすましていたことがバレてしまい、実月は咄嗟に「ずっと恭次郎の事が好きだった」と嘘をつく。しかし、それすらも恭次郎に信じて貰えなかったが、「好きならできるだろう」と、恭次郎に抱かれてしまう。
その後も、繰り返し恭次郎は実月を抱く――。
そんな中、実月は次第に恭次郎の気持ちの奥にあるものに気づき始める……
そして、だんだん心を閉ざしていた恭次郎が、実月に対して、心を開き始めて……実月も、そんな伯爵が時折見せる優しさに惹かれ初めて――という話。
心を閉ざしていた人が、チープな言い方ですが、愛の力で心を開いていく……という素敵な話。
実月は、どんなにいやがらせのように犯されても、決して負けないし、どんなにひどいことをした相手でも、相手のことを想って、まっすぐに意見できる――きっと、そんなところが恭次郎の心を開いた理由だと思うんだけど。
人を信じられなくなった恭次郎にとっては、嘘を吐かない真っ直ぐな実月がきっと救いになったんだよね……
最後はちゃんと、実月として恭次郎の元に帰れて、ハッピーエンドでした。
嘘を吐いたまま残る、というのもあったと思うけど、実月を実月に戻してあげたことは、きっと恭次郎の優しさなんだよね。人目を気にしなくて、いいんだもの。