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koi suru hoshikuzu BLSF anthology
雑誌SFマガジンで2022年と2024年の2回、「BLとSF」という特集が組まれました。
その中に掲載されていた一部の短編小説・マンガに、同人誌からの再掲、書き下ろしを加えて一冊にしたアンソロジーです。
当初ソフトカバーの単行本かと思っていましたがハヤカワ文庫でした。小説10編、マンガ2編収録です。
普段BL小説を書いている方、SF小説を書いている方が、「両ジャンルを架橋する」をテーマに寄稿した作品は、大変に興味深いものでした。SFマガジン2022年4月号「特集BLとSF」のページをめくった最初の作品は、一穂ミチ先生の「BL」で、本書「恋する星屑」では巻末に収録されているのも面白いなと思いました。(本書1作目の榎田尤利先生「聖域」は、2024年4月号「特集BLとSF2」の1作目です)
「両ジャンルを架橋する」が特集の主眼ではありましたが、もとよりBLレーベルで発行されている作品は言うまでも無くジャンルとしては多岐に亘り、学園もの社会人もののほかファンタジー、歴史、政治、音楽、スポーツ、近未来SF、裏社会等等本当に裾野が広いので、当然SFと特集になっても意外ではなかったです。ただ、SFマガジンというSFに特化した老舗の雑誌がBLに着目して論文を寄せたりインタビュー記事を載せたり、前述のとおり短編小説を複数本掲載したりして、雑誌の購買層であるSFファンにBLジャンルを解説・紹介するということに、目新しさとなんとなく誇らしさを感じました。
そこへ来てのこのアンソロジーの刊行は、雑誌掲載だけでなく書籍化もしたのだと、とても嬉しく思いました。
アンソロジー収録作品すべてにコメントするのは骨なので、気に入った作品を挙げます。
・吉上亮先生「聖歌隊」(書き下ろし)
初読み作家様でした。海からやってくる敵(ムシ)に対し、歌を兵器に戦うという発想に驚き、唄年と選ばれし聖歌隊、月炅樹、枯枝から成る世界観が、血で真っ赤に染まる海の描写とあわせ、美しくも残酷で怖ろしかったです。
・尾上与一先生「テセウスを殺す」
これは唸りました。トーリが、どのような気持ちで特殊執行群に所属し業務に従事していたのか。彼の抱えていた闇の深さに震え、最後の瞬間も悲しいものでした。残された人達の苦しみも。長編にならないかなと願うばかりです。
・木原音瀬先生「断」
死に耐えてゆく精子の音が聞こえる人が主人公です。気の毒だけど笑ってしまう。でも本人は大真面目。われなべにとじぶたカップルが微笑ましくもあります。
・一穂ミチ先生「BL」
一般文芸「うたかたモザイク」にも収録。天才科学者シサクとニンの物語。恋を自覚したニンが悲しい。そのまま二人でずっと生きていてほしかったけど、終わらせたかったんだろうなと思うと別れは唐突で残酷。
普段SFをあまり読まないため、設定を理解するのに時間がかかったりしましたが、各話それぞれ読後感が違って楽しめました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
1番好きだったのは「聖域」 です。
「かくも世界が完璧だったとは!」
ここを読んだ時、これ面白い!!!と思いました。疾走感というか納得感というか。血の話とかグロいのが割と苦手なのですが、それを忘れるくらい最後に天晴れでした。
他にも、「1億年先にきみがいても」の優しさとか、「BL」のなんとも言えない感じも好きでした。
こんなに豪華な執筆陣&表紙イラスト、鈍器文庫本サイズで1160円(外税)は、お買い得!!だと思いました。鈍器サイズなので、ちょっと持ち運ぶの躊躇するんですけど、短編集なので、通勤の電車とか、なにかの合間に読むのにちょうどよかったです。
というわけで、読んだことのない作家様の作品は新鮮な気持ちで、お馴染みのBL作家様の作品は「さっすが〜!」な気持ちで楽しみました。私はあんまりSF得意じゃないので、馴染のあるBL作家陣の作品のほうが読みやすくて好きでした。なんといっても!BL作家様たちはBL読者のツボをよく心得てらっしゃる!!と感心せずにはいられませんでした。
一番好きだったのは、榎田先生の「聖域(サンクチュアリ)」、、、近未来おじ萌え、特殊で高尚な性癖w、、えっろ!冒頭から性癖めった刺しでした。
木原先生の「断」、もおーーーー!これは木原センセにしか書けない世界観すぎて脱帽。すごいですよ。木原ファンは絶対読んでほしいです。SFっつーか、もうジャンルは「木原」でいいんじゃないでしょうか?
尾上先生の「テセウスを殺す」はちょっと難しかったんですけど、近未来お耽美な雰囲気でした。難解かもと思いながら、イメージ的なインパクトは一番強かったかも。
樋口先生の「一億年先にきみがいても」はキュンSF。可愛かった!ちょっと「星の王子様」を思い起こしてしまいました。
一穂先生のズバリ「BL」!最近の一穂先生の作品のなかで一番好きかもwちょっと切ないんですよ。でもこのアンソロの最後の作品としてふさわしい、美しい余韻の残る掌編でした。
こちら以外にも吟鳥子先生のノスタルジックな雰囲気の漫画作品もしみじみ良かったし…もし購入迷われている方いらっしゃったら、損はないですよ!とおすすめしたいです。
絶妙にブックカバーにはまってくれない、あのハヤカワ文庫サイズで580P超の分厚さ。
なんて読み応えのあるアンソロジーなのでしょうか。
男性同士の恋愛を描くBLというジャンルに、SF要素をプラスした短編小説10作とショートコミック2作が掲載されている今作。
1作あたりの長さも読みやすく、1作1作が濃くて本当におもしろかったです。
普段BLを執筆されている印象がなかったSF系作家さんの作品が読めるのもすごく新鮮でした。
これはもう、まるで宝石箱のような1冊なのではないかと思います。
近未来、現代風、どこかにある架空の世界。
AIのようなシステムに生活を管理されることに慣れた人々や、科学技術によって寿命を超越した人々。
脳の乗り換えが可能になっている、今後もしかしたらあり得るかもしれない世界。
海からの脅威に歌い戦うファンタジー要素が強い作品もあれば、オメガバースの発見を描いた作品もあり、バース性を別の種族と角度からアプローチした作品も…と思いきや、ある日突然精子が死ぬ音が聞こえるようになってしまった1人の男性の苦悩の日々が描かれた異色作まで。
物語の舞台や設定はまさに多種多様。
とてもバラエティに富んでいて、どこを読んでも魅せてくれます。
SFとBLって、思っていた以上に相性がいいのかもしれませんね。
どの作品もカラーが異なっていて楽しんで読めたのだけれど、中でも榎田先生・木原先生・尾上先生の作品に心惹かれました。
特に木原先生はいったいどうやってこの設定を思いついたのだろう…
発想も話運びもおもしろくて、気がつけば没頭してページをめくる自分がいました。着地点がまたすごい。
近未来や、少々癖のある設定がお好きならきっと好みの作品が見つかるはず。
一気に読みふけりたい方にも、ちょっとずつつまんで読みたい方にもおすすめです。