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haru to shirazu ni ore tachi ha
冒頭のキービジュアルから、主人公の大地くん・風矢くん・六花ちゃんの行く末を知り衝撃を受けましたが、それと共に、そこに至るまでの3人にいったい何があったのか、とても気になり、お話に惹き込まれました。
函館を舞台に、風矢くん・六花ちゃんの兄妹と出会った大地くん。
「3人で完璧」と思っていた、幼い頃の3人。
でも、万葉集の和歌や越人歌に込められた大地くんの本当の思いが切なくて…
現在の大地くんと風矢くんの手紙でのやり取りで、お互いが本当の気持ちを綴られるようになり、想い合られるお気持ちがラブレターのようで、胸が痛みました。
その手紙のやり取りの間に、出会った頃の小学生から中学、高校、大学、社会人と過去の回想が織り交ぜられて、雪や季節の描写がお話に溶け込んで、更に切なさが募りました。
こんなにお互いを求め合い、想い合っていたのに、なぜ?こういう結果になってしまったのか…
お話を読み進めているうちに、自分も風矢くんと同じように、何が正解だったのかと、考えさせられました。
読まれる方によって、色々な思いを抱かれるのかも知れませんが、私は、最後の風矢くんと大地くんの決断に救われたような気がします。
六花ちゃんの事を思い出しながら、おふたりで歩んで行ってほしいと願っております。
各々の交差する想いが、とっても純粋でそれ故の悲しい結果となりましたが、本当の愛とは?を感じられる素敵な作品でした。
ありがとうございました。
【ネタバレありのあらすじ】
身内の縁に恵まれず育った風矢の幼い頃からの親友で兄貴分の大地。大地が風矢の妹と結婚するのは幸せな家族の形のはずなのに、微妙にボタンが掛け違ってしまう。果ては風矢の妹は、大地の運転する車の事故で亡くなってしまうのですが、そこで初めて明確に大地への気持ちが恋だと自覚する風矢。交通刑務所にいる大地との往復書簡の合間に回想が挟まる。
【感想】
手紙という独特の媒体を通ることで少し言葉遣いが変わったり、時間の経過とともに自己開示の度合いが変わってくるその変化の描き方が絶妙でした。また、ままならない恋心を抱えた主人公の放浪や心情の描写が巧みです。主人公たちや妹、母や伯母など、登場人物はみなどこか自己中心的で、だけど100%の悪人でもない。人間の弱さや愚かしさ、それでも誰かを求める気持ち。改めて人間を愛おしいと感じさせてくれるお話でした。