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shikunsenkyou
面白かった!津野瀬村という小さな集落が舞台のファンタジー。神や仙人や天狗が人と共に生きていた時代から現代まで。この長い長い時間の中に存在し続ける子薫と、生まれ変わっては現れる子薫を取り巻く人たちの物語。
何百年の時が経っても子薫に執着し続ける朝恒の魂がすごい。
村が飢饉に見舞われ、神に供えらえた赤子は、仙人の弟子となり不老不死の身体を得る。生も死も放棄したと語る子薫にとって、初めて心を通わせた朝恒が心の支え。朝恒が亡くなると、山の神は朝恒の転生を約束し、子薫は再び巡り合う日を待ちながら過ごしていく。
というのが前半の大まかな流れで、話の舞台を整えたともいえる部分で、ここから先をぐっと面白くしてくれる前段。
後半は、朝恒の生まれ変わりである加賀と子薫の物語。
加賀は自分の中の朝恒が子薫を求めていると気付き、自身とは切り分けて考えながらも、自分も子薫を好きになると申し出る。
加賀は一見軽い調子の医師だが、付き合えば一途で誘惑にも乗らない。人間観察力が高く、非科学的なことでも受け入れる素直さと柔軟性を持つ。朝恒を想いながら抱かれる子薫への接し方が優しくて、惚れてしまいそう。
二人の仲を裂こうとするのは、嫉妬に狂って錯乱した一人の男(妻子持ち)。やり方があまりに激しくて、ハラハラドキドキが止まらない。子薫の決断に胸を痛めたり、天狗の翠嵐の活躍が可愛すぎたり、目が離せない展開の連続。
結末は夢のような光景が広がる中でのハピエンで、泣いてしまいそうだった。
転生者は朝恒一人だけでなく、あのときのアイツか!と思う場面が何度もあるのも面白いところ。クズは生まれ変わってもクズなのが因果というかなんというか。
次に子薫の前に現れるのは、朝恒の魂なのか加賀の魂なのか両方なのか。分からないけど、再度の転生は執念でやってのけそう。
今作は別シリーズに繋がる一作でもあるらしく、そちらも読んでみたい。楽しかった。