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比類なき皇帝×美貌のみでのし上がる宦官
koukyuu no tsuki
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
まさに中華の伝説といった方がふさわしいほど壮大な愛の物語でした。武帝と呼ばれた男と、武帝から愛してほしいと乞われた宦官が紆余曲折を経て魂を交わし合う。長安城にはびこる陥穽に思いを阻まれながらも、互いを思い合う。その魂は風となり。
人によっては悲しい終わり方とも捉えられるかもしれませんが、漢の大きな大地で生まれた愛は、大地をめぐり月の輝く空を駆け抜けるさまを想像させてやみません。
前漢時代の史実をベースとしたフィクションとのことですが、社会の情勢や当時の風俗が窺え、BL読者に留まらず、歴史ベースにしたフィクション、あるいは時間を遥かに経て紡がれた恋愛小説と考えてもしっくりします。
武帝は、次の皇帝の子を産んで自分が権力者になりたい獰猛な女性たちに囲まれ、特別のただ一人を愛することは立場上許されないしがらみに絡めとられ辟易としています。匈奴をやっつけた英雄として民衆に囲まれながらも、愛し愛される特定の相手を持てない悲しさや辛さ。愛した人を守ろうとすると周りが嫉妬するので、愛する延年を構ったり囲ったりすることはできず、延年の身を案じる故に、後宮を出るように取り計らいます。
もっと悲惨なのは延年。旅芸人の家に生まれ、貧しさの中で両親を失い、自らが春をひさぐしか生きていく道はないと、最終的には皇帝に自らの身体を捧げて弟妹を大切に守ります。次第に、武帝の愛を受け入れ、理解するようになります。
家族を幸せにするためにと、半数が死ぬと言われる宮刑すら自ら受け、知略と美貌、舞と歌でのし上がり最終的には後宮で皇帝の寵を得、さらには妹に春を売る仕事させたくないと妹を皇帝に差し出します。
自分のことを粗末にする延年をますます愛し案ずる余りに、自分から遠ざける皇帝の悩みや悲しみいかばかりか。
毒殺されないよう後ろ盾を持たない延年をあえて後宮から出し、守るシーン、また、延年が妹の子を守ろうとするシーンでの武帝の愛に泣けました。逢えなくても魂は共にあったのだと。
素人考えになりますが:武帝が自ら建設を命じた自分と李夫人(延年の妹)の墓は、目の鼻の先にあるようです(これは史実です)。妹である李夫人の墓に延年も埋葬され、死後は李延年・夫人の兄妹と、二人を愛した武帝が一緒に祀られていたらいいなあ…。などと考えさせられました。
それと、本作の位置づけです。BLを感じさせる場面はもちろんあり、妙な艶めかしさを発揮する延年ですが、家族を守る・愛する人を守るとはどういうことか深く考えさせれる名著です。家族愛や、後宮におけるやっかみなどはTempp先生の勉強熱心さから巧みに描かれたものと想定します。歴史小説や一般小説の恋愛ものとしても、面白く読めました。著者Tempp先生の博識に基づいたからこその迫力と、フィクションだからこその面白みを兼ね備えた名著ですので、BL小説好き以外の方にもおススメしたいくらいです。
な…なんて読み応え!
なんて素晴らしいストーリー!!
中華史に彩られた魂で繋がり合う男たちの姿に、いつまでも読後の余韻が収まりませんっっ……!
主の従を想う愛の深さに、思わず涙。。。最後の1ページ、最後の一文字までみっちりと読ませにきます。
本当に…本当に素晴らしいお話でした。
この作品は、史実を元に綴られた歴史ロマン溢れる物語。武帝と延年の2人の濃密な主従関係からは、ブロマンスの香りがほんのりと漂います。
漢の黄金期を確立した皇帝と、歌と舞の才に秀でた宦官との物語は、まるで中国の歴史書や伝記ものを読んでいるような感覚でした。2人を中心とした生い立ちから晩年までの描きがとても素晴らしかったです。
史実と創作を掛け合わせたストーリーの構築が秀逸で、上品で滑らかな筆致とテンポのいいストーリー展開が心地よく感じられました。
ときは前漢時代。
匈奴討伐を成功させた武帝と、美しい宦官・李延年は出会い、彼は武帝の寵愛を一身に受けるようになっていきます。延年の半生は波瀾万丈で壮絶。己の身体を武器に後宮に上がる野心家な一面もありつつ、弟妹の幸せを思う良き兄の一面も伺えます。
彼は、妹の美貌を伝えた「絶世傾国の歌」を詠んだことでも有名で、傾国が"美人"と称される由来を作った人物。妹は武帝の寵愛を受けることになりますが、延年はそれ以上の寵愛を受け、この作品はまさにその部分を掘り下げたカタチで描かれたストーリーです。
武帝は後宮に何千人もの女性を召し上げていたとのこと。ですが、皇帝である彼が現在進行形で魂で繋がりたいと強く願う相手は延年ただ1人。心を明け渡さない延年に心を砕く武帝の必死さに、延年を男寵としてではなく、心から愛する者として心を通わせ合いたいと思う武帝の本気が伝わってきました。
延年はいつまでも寵愛が続く保証がないことに怯えていますが、武帝は延年を離さないと思ってて。そんな気持ちのすれ違いが焦ったく感じるところでもあります。
どこか空虚で心が空っぽな延年に強く語りかけ、そのためならどんな手も尽くす武帝の延年への愛に、主従や寵愛を超えた何か底知れぬ深い情愛を感じざるを得ませんでした。
史実として伝わってる武帝と延年の関係を見ると、その晩年は非常に悲しい最後です。だけど私はこの作品の終わりのような2人であったと信じたい。様々な政治的思惑が絡んでいたとしても、彼らの魂はずっと繋がり合っていたと。そう思いたいです。
波瀾万丈な生き様に心を痛めつつも、延年が身一つでのし上がっていく様は非常にドラマチックでした。この作品は武帝との関係が主軸にありますが、実は家族愛・兄妹愛の絆の強さも同じくらい見どころです。
弟妹のために身体を売り生活をしてきた延年と、兄のため後宮に入り皇子を産んだ妹。きょうだいでありながら同志のような彼ら兄妹の深い繋がりに触れると涙が止まりませんでした。
武帝と延年の両者視点で語られる心理描写を筆頭に、彼らを取り巻く後宮事情、愛と欲にまみれた複雑な人間関係や思惑が濃縮された一冊。中華系の歴史は苦手領域だったんですけど、予想以上に頭に入ってきて、この世界観を存分に楽しめました。
BLが絡んでるからってのもあるでしょうが(笑)、作者さんの筆の力によるところが大きいと思います。すごく読みやすかったです。
物語としても史実書としても実に読み応えのある作品でした。読み終わってからしばらく時間が経っているのに、まだ感動で胸がいっぱいです。