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第169回芥川賞候補作の一般文芸。
限りなくご自身をモデルとした私小説、「デッドライン」「オーバーヒート」に続く三部作的作品。
純文学って…正直始まりもなければ終わりもない…って感じで、本作もそんな感じ。
何か一つのはっきりした物語はなくて、承だけがあって起も転も結も無い…ような読後感。
時間軸的には、第一作「デッドライン」の前。主人公は高校生です。
「デッドライン」「オーバーヒート」では主人公は「僕」だったけど、本作では「志賀達也」という名があり、より客観視されて距離感がある感じ。
時は1995年。
その年のオウム真理教の事件とか阪神淡路大震災が世の中の空気感にはあって、でも舞台である宇都宮では希薄、しかしうっすらと波のように漂い。
達也は頭が良くて進学校に通っている。まだ性的指向は明確ではなくて男女AVでオナニーしてるけど、男へ向かう欲望も意識し始めて。
父親は広告代理店を経営し、趣味はオーディオでアンプに凝っている。仕事関連でいち早く出始めのインターネットを自宅に繋ぎ、達也も使い始める…
雷都と言われる宇都宮、その電気に満ちた土地と、大震災による振動が電波のように地球を震わせる感覚、インターネットが繋がる時の電気音、ビリビリと身に走る性への興味と恐れ。
タイトルの「エレクトリック」の直接の意味付けは不明だけど、達也を取り巻く世界/空気に一触即発で満ちる静電気を感じるような。
ラストはブツッと終わって超不完全燃焼ですけどね。