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ai no kotonoha
攻め視点。
受けは大企業経営者の長男で、その弟が攻めと同い年。主要キャスト3名かと思いきや、珍しいことにトライアングルものではない。弟は攻めと良好な関係で、兄と攻めの橋渡し役。受けは片耳が遺伝性の聴覚障害で、もう片方も進行性の別の難病に侵され、完全に聴力を失うかもしれない瀬戸際に立たされている。
個人的には、なんでその流れでエロになるの?っていう違和感が拭えない流れが惜しかった。障がい者を扱っているので、もうちょっと繊細なトーンを求めてしまったせいかもしれない。後日、作者HPで受け視点のSSを読んで、ほんわかした記憶がある。
あとがきを読むと、担当さんからの要望に応えて書いたと、毎度のこと創作上の経緯を隠さない作家様なのだが、結局作者の書きたいものではないというか、こういうのを書いてくれといわれたものを書いているのがまるわかりなんだな笑
もちろんガッチリ応えているところはさすがプロです。商業ベースは肌が合わないのか、現在はwebの方で活動されておられるので、やはり同じにおいがするマニアックな愛好者にはたまらない作家さんなのだなぁと。商業で読めないのはさびしいけれど、そんなことより、ずっと書き続けていらっしゃる事実がなにより嬉しい。
『病もの』ですが、攻めは年下忠犬ワンコ、受けはツンデレ女王様で、シリアスの落ち込みそうなところを、可愛らしくほのぼのとした恋愛が救っていて、暗い話にならずに済んでいます。そのバランスがいいと思う。
サックスプレイヤーになった大和は、観客席の中に懐かしい顔を発見します。10年ぶりに再会した彼は、母子家庭だった大和が家政婦だった母と共に住み込んでいたお屋敷の長男・明樹。屋敷の、明るく気さくな次男とは大和も仲良くしていたんですが、一つ年上の明樹は、大和が声をかけても無視するだけで、ほとんど話をしたことはありませんでした。
しかし、その頃から綺麗な容貌の明樹に、大和は密かに憧れを抱いていたんですね。
次のコンサートにも誘うと、明樹はまたきてくれる。
そうして二人は親交を深めていきます。
と言っても、女王様と犬と言う力関係の親交ですけど。
子供の頃の『使用人の息子と雇い主の息子』という立場が今でも大和の中に沁みついていて、同時にその当時の「近寄り難い綺麗な少年と仲良くなりたい」という気持ちもそのまま残ってるので、大和は明樹にすっかり頭が上がらないんですね。
こういう二人の『ワンコと女王』なやりとりは、楽しくて微笑ましかったです。
しかし、再会後、大和は明樹の不調に気づくことになります。
それは明樹が子供の頃から片耳が聴こえず、もう片方の耳も聴こえなくなるかもしれないということ。
手術をすれば回復の可能性は残っていますが成功率は20%。
その衝撃を受け止められず大和は悩みますが、そういうところが嘘っぽくなく等身大でいいと思いました。
最後には明樹の可愛い秘密が聞けて、二人の会話に思わず微笑んでしまうようなラストで、読後感もいい、良いお話でした。