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kaiga no oji to mayonaka no meruhen
華藤えれな先生のキャラ文庫作品は2021年の「オメガの初恋は甘い林檎の香り ~煌めく夜に生まれた子へ~」以来であり、雑誌掲載作の「悪役王子が愛を知るまで」と書き下ろしの表題作の2篇からなっておりました。因みに雑誌掲載作は読んでおりません。
まさにタイトル通りの「真夜中のメルヘン」でした。他作品のレビューにも書いてますが華藤えれな先生が実際に現地を訪れている事が多く、作中に登場する建物や景色、そこで暮らす人々や空気感がとにかく素晴らしいんです。私はヨーロッパは4ヶ国くらいしか行っておりませんし、昨今では家族の送ってくれた写真でしか知ることが出来ませんが、華藤先生の作品で現地の風を楽しむことが出来るのが楽しみなんです。もちろん食べ物の描写もです。www
今作は呪いの1つにアルベール王子と肉体的に結ばれると愛した相手が死んでしまうので、2人が結ばれるのは最後の最後なのでまさに純愛なんです。純愛スキーには堪りませんでした。
あらすじに「王子は不遜な態度」でとありますが、読んで行くうちに彼の印象がガラッと変わりますので、まだ読まれてない方は楽しんで欲しいです。
玲の生い立ちとかとても可哀想なんですが、アルベールはもっと悲惨と言いますか、それでも彼が人を恨まず来たことがとても素晴らしいと思いました。
今作ではこのアルベールのようにどんなに酷い目にあっても人を恨まない人間と、他人の才能に嫉妬し憎悪を抱く人間とが登場しています。
人を恨んで身を滅ぼして行く人間と、人を恨まない事で成功して愛を得ていく人間との対比が面白い作品でした。アルベールは周りの人間を幸せに導いて行く天使のような存在なのですよ。
書き下ろしの表題作「絵画の王子と真夜中のメルヘン」にはアルベールの従者が登場して、アルベールを救おうと行動に出た玲にとある助言をしたことによって大円満を迎える事になります。
ここが上手く行きすぎだと思う方もいるかもしれませんが、私はこの結末が大好きで癒されました。魔女の悔しがる一言がありましたが、出来るなら私が時を遡って悔しがる彼女の姿を見に行って「人を呪わば穴二つ」って言ってやりたいです。www
優しいお話でした。タイトル通り本当に〝メルヘン〟
呪われた絵画から、麗しの王子が現れるなんて素敵ですよね♡
前半のタイトルが『悪役王子が愛を知るまで』なので、てっきり不遜で俺様な王子様かと思いきや、正反対の純粋無垢で心優しいお伽話の王子様でした。
初めは玲をメイド扱いして「俺様感」もありますが、中世ヨーロッパの貴族故の態度で、「王子様だから仕方ないよな…」と妙に納得しちゃいます笑
〝愛〟に裏切られ、愛することを無意識に恐れる2人が〝真実の愛〟を貫くラブストーリーです*
呪いで絵画に閉じ込められた王子が過去に戻る為には、〝心から愛する人に愛される〟こと。
しかし、真実の愛を手に入れて呪いが解けても今世で結ばれる事はなく、また肉体関係を持つと相手はこの世から消滅してしまう……
心で結ばれても、身体で結ばれても、どちらにせよ離れ離れになる運命。
もう、この設定が既に切ない……!
〝愛すること〟を恐れる2人が、ゆっくりお互いの存在を愛おしく思う描写がロマンチックで素敵です。
〝真実の愛〟を知った王子は、トロけるほど甘くてめちゃくちゃ溺愛!
「アモーレ」と言いまくる、ラテン男子の溺愛っぷりをニヤニヤ堪能しました♡
王子の純粋で素直な考え方に癒され、お伽話のような優しい物語ですが、優しさだけではなく胸が苦しくなるほどに切ない展開もあり、最後までハラハラ・ドキドキと楽しめる一冊でした!
アルベール×玲
華藤えれな先生の最近の作品、読んでいなくて、
作風がどう進化したのかちょっとわからないけど、
今回はリアルとファンタジーが絶妙なバランスでいい一冊。
ちょっと新鮮。
舞台はイタリア北部。
18歳の玲は少し可哀想で不憫で、
美術館の清掃員として働いていて、
彼の前に現れるのが
18、19世紀の肖像画から抜け出してくる王子様・アルベール。
その肖像画が呪いをかけらている
呪いを解けるため
この2人が真の愛を知り、
最後には幸せをつかむ、
そんな物語。
玲はイタリア人の父と日本人の母を持つハーフ。
複雑な家庭環境で育ち、
10歳から施設で生活。
動物好きで優しい彼が、
美術館で働くきっかけは、
父が絵画修復の仕事をしていたから。
王子の肖像画に一途な彼の思い、
肖像画が家族の思い出をつなぐものだなんて、
ちょっと切ない。
玲が抱える強さと寂しさに引きつけられて、
人を愛さないつもりだった彼が、
恋に落ちる!
アルベールの高飛車な態度と傲慢さ、
今風のことには全然わかってない感じが笑ってしまう。
肖像画の中からずっと玲を見ていた事実もあったり、
彼もまた孤独だったとわかったり
愛のわがままを言いつつ、
だんだんと優しくなっていって
感情的な変化に目が離さない!
呪いを解けるため、
真の愛が必要。
アルベールの純粋な心、
そして、愛し愛されることが条件をクリアしたら、
彼は自分の世界に戻れる。
でも、愛する相手と肉体的に結びつくと、
相手が消えてしまうという、
とても残酷な選択だよね。
玲が現実と王子の世界の間に立つから、
彼らがどの愛を選ぶのか?
それがどんな影響をもたらすのか?
見どころだね。
後半は焦る、切なくて甘々な展開で
2人の愛がどう育っていくのか、
その微細な感情の変化、
次第に深まる愛情とか・・・
それに、絵が隠していた秘密とか・・・
ちょっと複雑な進行も
物語の醍醐味になるのだろ。
玲と仲良いい神父さんの秘めた恋心、
神職という立場からの禁断の恋愛感情も面白い。
生まれ変わる子猫を通じて2人の縁がめぐる?のも素敵。
2人が真の愛を知るところが最高で、
読後感が良くて、
心から幸せを感じさせてくれるメルヘンでした。