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umi ni nemuru
三作収録。全部心穏やかにハピエンを迎える話ではなく、一対一の関係ではなかったりと、万人受けはしないかも。だがどれも心に刺さるものがあり、とても良かった。表題作がすごく好き。復刊しないかな……。
「海に眠る」
依存の連鎖から解放までの流れが切なくて、強く印象に残る作品。特にラストの急展開からが素晴らしい。もうそれしかないという追い込まれた状況で、静かな二人きりエンド。タイトルへ向かう怒涛の描写に泣いた。
一人称の視点主は、恨んでいた二人を殺して逃げる孤児。最初は獣のようだったこのリュウが、祐介と触れ合うことで人の心を持ち始める。全てが初めてで、自分の感情すら拙い言葉でしか言い表せないリュウが切ない。
祐介は義父と愛人関係にあり、義父しかいない狭い世界で生きている。義父側も思い入れは相当なもののよう。そこにリュウが加わって、複雑に絡み合う三者のそれぞれへの依存っぷりがすごい。祐介が魔性の受けといったキャラでもないので、背徳感もあったり。
二人の結末はとても綺麗だった。
「思い出させてあげよう」
双子の片割れの幽霊が主人公のお話。何も知らない高石が不憫。
ストーリーは凪が一つの事実を知るまでのさらっとしたものだったが、最後に「成仏しないで」と言う凪にえ?となった。涼はこれからもずっと見守り続けるんだろうか。見えないのに「ここにいて」と口にする凪がちょっと怖くなった。だが涼にとっては、というか二人はそれで幸せなのかも。
「さよならは言わない」
突然いなくなった同棲中の恋人を探す話。有羽の秘密だけなら昔っぽいな~で終わっていたが、さらに啓人の秘密まであってお前もか!?と突っ込みたくなった。この二人はまだ生き続ける希望が見える終わりだった。それでもラストは切なさが漂う。三作の終わりとして余韻が心地良かった。
独立した3作品が収録された短編集。
小説の短編集は珍しい。
以前にBLニュースでおススメされていたのを見つけた。
何というか、やっぱり時代を感じる。
文庫化されたのは10年前だけど、その時点で、BL以前の耽美の香りを持った過去の作品を集めて書籍化されたらしいので、初出はさらに10年前後遡る。
平成も終わろうとしている今のBLの基準や気分からは、表題作の設定も結末も、まず、各方面から許してもらえそうもない。
他の短編も、表題作ほどではないけど、やっぱり今の商業BLでは出せそうもない。
どこが?って具体的に挙げるとネタバレになっちゃうけど、耽美とBLの最大の違いって「死」との距離なのかな。
「死」との距離が近いと言っても、短編集だし、全部が怖い話ではないので、どこかで見かけたら読んでみるといいと思う。
表題作+短編2編が収録されています。
挿絵は、えすとえむ様!
表題作は、扉絵+挿絵5点。短編の方はそれぞれ扉絵のみ、となっています。
「海に眠る」
キリスト教系孤児施設で2人の男性職員(調理員と牧師)から性的虐待を受けていたリュウは、16才で退所する前夜、その2人を虐殺し、逃亡する。
罪悪感もなく、捕まるかもという怯えもなく、窃盗を繰り返しながらある海辺の町に行き着いたリュウは、忍び込んだ家にいた美しく清潔な男に欲情する…
花村萬月的だなぁ…この設定でもう、結末は悲劇であろうことが予期できます。
その男性・祐介は実はリュウと同じ施設の出身で、引き取ってくれた養父と関係があり、生まれつき心臓が悪く…
一方愛を知らないリュウは、自分を警察に突き出さず面倒を見てくれる祐介を愛し始める。
…と書けばBLのお約束とかありがちな展開に聞こえるけど、もっともっと切実で、もっともっと切なく、もっともっと刹那的で…それでいて母子の愛のあり方のような。
この物語の結末は、言ってみればグロも含まれるのだけれど、哀しみの究極の昇華の形とも取れる。
「思い出させてあげよう」
出産時に死んでしまった双子の片割れがそのまま幽霊になり、一人っ子として育つ弟を見守っている、という設定。
はじめのうちはほのぼのしく展開するのだけど、弟・凪が家出してしまい同級生の高石の部屋に転がり込んでからはちょっと空気が変わってくる。
これは怖い話ではありません。結構萌えます。思ったよりエロが十分ありました。
「さよならは言わない」
これは…思いもよらない物語でしたね。で、ものすごく良かったんです。
静かに恋をしているリーマンとカウンセラー。
でも人はそれぞれの背景があり、それを言葉にしなければ状況も想いもすれ違っていく…
そしてこの2人はセックスレスなんです。その背景が明かされていく一種の「衝撃の告白」の応酬。
いつまでも心に残る、私にとってこの作品はそんな物語です。2人がさよならを言わないですみますように。
答姐トピでオススメ頂いて読みました。手に入れたものの、初読みの作家さんだったことと、どう転んでもネガティブなあらすじと表紙絵からページを捲るのを躊躇していましたが、読み始めると、静かながら迫力のある筆致と破綻のない展開、なにより心に響く物語の重さのようなものにグイグイ惹き込まれて一気読みしました。
関連しないお話が三篇収録されているので、作品集という感じの一冊です。
・孤独な二人の青年が出会い、束の間、強く惹かれ合う「海に眠る」
・幽霊として愛する弟を見守る兄の執着が爆発する「思い出させてあげよう」
・姿を消した恋人に対してやりきれない思いを抱え、二人の日々を追想する「さよならは言わない」
正直、もっともっと痛くて重い作品だと思っていたので、そうではなく喜怒哀楽の詰まったドラマ作品だったことにまずは一安心…。その上で、捉え方は様々ですが私はすべてハッピーエンドだと思いました。
どの作品も印象に残っているのですが、特に「さよならは言わない」が私は大好きです。BL作品って具体的にそういう描写があろうとなかろうと攻も受もセックスに対して前向きで基本的には「したい」と思っていることが大前提なので (勿論わたしも読み手としてソコを期待するところではありますが)、この作品で眼から鱗が落ちたような気分になりました。
オススメしてくれた方に感謝しつつ、またこういう重厚なドラマ作品と会えるといいなーと思います。
5ミリ程度の期待で読み、完全にやられました。
「海に眠る」、2007年に発行されたものですね、表題作他三編が収められていて、それぞれ「小説イマージュクラブ」という雑誌にかなり前に掲載されたようです。
まず、「海に眠る」。攻めのリュウは孤児であり、自分を性的に虐待してきた牧師など二人を殺害して、海辺の町に逃げてきました。そこで受けの祐介と出会います。
祐介は心臓が弱く、繊細なガラス細工のような青年です。
光のない世界に生きてきた16歳のリュウと、ずっと養父で愛人の男との生活が世界の全てだった祐介。
せつなく、深く沁み入りました。
二番目、「思い出させてあげよう」。出産時に亡くなった双子の兄が主人公の不思議な趣きのある短編。
この兄、涼は幽霊で、人知れず弟の凪を見守ってきたのだけど、凪は何かに怯えている。どうしたんだろう?という感じの話です。
凪の友人の体に乗り移り、愛する凪とセックスします。
不思議な感動、明るい感じに描かれていますが、涼の存在がせつなく、胸を打たれます。
ラスト、「さよならは言わない」。前二作と違い大人な感じです。
さよならも言わずに消えてしまった恋人のことを話してる場面から始まります。同棲してたのにセックスレスだったのですが、それは…という内容です。
作者は葛城ちかさん、凄い作家がいたものだと、読み終えてから他に作品は、と検索しましたが、残念ながらこの一冊だけのようです。
レビューを書くために読み返していて気づいたのですが三編どれも生と死がひっそりと寄り添う作品でした。
葛城ちかさん、できれば他の作品も読んでみたいけどそれより、お元気で暮らしていらっしゃればいいなと思います。
昭和の香りなつかしい、耽美小説を精力的に復刻しているKAREN文庫です。独特の文体は携帯小説世代にはまどろっこしいかもしれないですが、静謐で、しかも泥臭さとあざとさも同居し独特の世界を醸し出しています。
そしてエンディングが、一般的なハッピーに収まりきらないというのも、特徴かもしれません。「ある意味、二人にとってもこれは幸せだよねえ。。」とあまりに悲しいエンディング。
主人公リュウは、ゴミ箱に捨てられて愛を知らずに育ちました。施設内でも性的な虐待を受けていたため人を愛するという気持ちが理解できません。
そして殺人事件を起こし、食料やお金を奪いながらの逃避行。逃亡にも疲れ海辺の町にきたとき、偶然同じ施設にいた祐介に巡り会います。
心臓が悪く義父に囲われている祐介。
二人きりの密かな暮らしは、いつまでもは続かず迷惑を掛けたくないとリュウは祐介の元を出ていくことに・・祐介もまたあれほど慕っていた義父との生活を捨ててもいいとまでリュウのことを思うようになりリュウを追いかけます。
あまりに悲痛なラストに、やりきれなさを感じるかもしれないですが・・これが「耽美」です。
一話は短いので、ちょっとだけ“大人のビター”の苦い余韻を味わってみてください。