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soshite toki ha omoi wo hakobu
【そして、時は想いを運ぶ。】
この短編だけだと書きたいことはよく分かるけど……と反応に困る作品。死を悟った極限の瞬間に愛を知らなかった男が誰を想うのか、っていう話にまとまっていくわけだが、そこに至る過程、二人の関係を上手く描けていない気がする。
それと随所に某作家の影響を色濃く感じた。代表作ラストのアレがやりたかったのかな、と。
大学で出会った青山と赤川は共に女性と結婚するが、友情の延長線上に体の関係も含まれていて、それはいつまでも変わらない。青山の妻は早々に亡くなり、赤川は妻子とも良好な関係のよう。
ただ赤川は妻子より青山を取るとキッパリ宣言していて、それはどうかと思った。
ストーリーは軸が見え辛い。青山を中心に彼らの人生を淡々と追っている。
人生の節目とか、衝撃的な何かが起こったときに慰め支え合う、そこに体の関係が含まれる二人。赤川は徐々に気持ちを強めて愛を囁くようになり、青山は愛が分からないと自問自答しながら進む。
で、最後の最後で愛に気付く青山がどうにも唐突に思えてしまい、冒頭の感想になった。
なんとも言葉を失う終わり方で、この短編のみだといまいち。ただし続編で描かれたその後が不思議な感動を呼ぶエピソードで、合わせて読むととても良かった。
【さらに、時は想いを満たす。】
一作目と同じ世界線で青山の存在感を残したまま、視点を後輩医師に移したお話。海外での医療ボランティアの様子が詳細に描かれており、BL作品ではおよそ出会えない興味深い内容。たまに体験談を綴るエッセイのようであり、キラキラしたファンタジーのようでもあって、読み応えを感じた。
BLはほんのり。空知と空知をスカウトした毛利とで、医療ボランティアに励みながら徐々に距離が縮まっていく。現地のさまざまな描写や空知の振る舞いが魅力的なので、BL描写はそこまでなくとも楽しめた。
そして一作目の赤川と青山の本当の終わりがここでくる。視点主は移ってしまい、赤川の心理はもう見えているところから察するしかない。この演出がとても好き。思わずちょっと泣いてしまった。
ラストは空知の恋の決着で、心を決めた空知の行動力が素晴らしく、読んでいて清々しい気分になる。ラブを手に入れ、挑戦的な仕事に向かう晴れやかさが良い。
二作続けて読んで神評価。