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hurueru senaka
野原耳子先生の年下攻めオメガバースシリーズが大好きで、こちらも読んでみました。
こちらは年下攻め〜の方とは全く異なる戦争もの。全34ページと、とても短い小説です。
舞台は日露戦争、203高地。蛸壺と呼ばれる腐臭漂う壕の中、夜中に誰かがすすり泣く声を聞きつけた朝田伍長。
「誰か、傷が痛むのか?」と暗闇に問いかけると、泣き声はピタリと止まります。
その泣き声を、朝田は福本軍曹のものではないかと考え始めるのですが、戦闘で左手を失い、隊員達から冷酷非道と恐れられる彼がなぜー?
と続くお話です。
地獄のような戦場の様子、「死ぬなよ」と言った戦友が手投げ弾により一瞬にして体が吹き飛ばされる描写などがリアルに、ストレートに描かれ、辛く苦しい描写が続きます。グロいものが苦手な方には決しておすすめはできませんが、その生々しさに自分はグッと物語に引き込まれました。
BLジャンルですが、恋愛描写はなし。(BLの香りはほのかにします)
男同士の心と心のやりとり、と言えばいいのかな…
つまらない存在だと思ったまま死んでほしくない、と伝える朝田の言葉の重みと真摯な思いに、胸が熱くなりました。
最後の戦いが終わり、終盤、怪我をして横たわる福本軍曹。
「国に帰ったら」に続く言葉に、少し泣きそうになってしまいました。
その後の福本軍曹の姿は描かれていないけれど、きっと片手でそろばんを弾いていると信じたい、、
そんな微かな希望を抱かずにはいられないラストでした。
短いけれど、忘れられない強い衝撃のある物語。
年下攻めオメガバースシリーズとは異なる、野原先生の作品の魅力をまた一つ知ることのできるお話でした。