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itoshisa wo oikakeru
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
10年ぶりに読み返しました。
以前は紙の本を持っていましたが、生活の変化に伴い泣く泣く処分をしました。
でもずっと心に残り続け「あぁ読みたいな」としばしば思い出し、とうとう電子で購入。昔の作品を電子でまた所有できる良い時代になりました。掛井先輩の甘やかしは本当に中毒性があります。
杉原先生の作品はほぼ読んでおりますが、本書が1番好きです。
表紙のイラストがブラウン管のテレビなのですが、今の若い方はブラウン管のテレビを見たことあるでしょうか?
昔の作品ですが、色褪せない名作BLだと思います。私はこの作品を読むと大変癒されます。
腐友さんより「攻めが一途で萌える!」というプッシュをいただき読んでみました。
(ただし「受けがぐるぐるしてて鬱陶しい」という注意つき。)
読んでみたら、ほんと〜に攻めが一途で、懐深くて素敵だった。
メンタルが安定してて非常〜に好ましい。
そして、どうしようもなく受けのことが好きで好きでたまらなくて、穏やかな表面のその下から熱いパッションが時折ちらちらと垣間見えるところもたまらんかった。
対する受けは、確かにぐるぐる。
杉原さんなので、超〜焦れ焦れが通常運転だと覚悟して読み始めていることもあり、許容範囲内だったけれど。
付き合うまでのぐるぐるではなく、付き合って恋人同士になってから得体の知れない不安に怯えていて、ぐるぐるするんですね。
情緒不安定気味で、面倒。
だけど。
母から愛情をかけてもらえず、決定的な寂しさを心に抱えて育ってしまった子なんで、そういうのも仕方ないかなとも思えるんですね。
攻めからの圧倒的な愛に包まれながらも、所在なさげに何かに対して怯える姿に、「うわぁ…面倒くせ…」という言葉が喉に出掛かりながらも、「いやいや……仕方ないかも……」と葛藤する自分が…。
私は、受けが心の中で「掛井、掛井、掛井」とひたすらに名前を呼びかけて追い求めてるとこが好きだったな。
結局それが全てって感じで。
で、最後の最後で寝落ちしかけている掛井に対して「掛井さん……」と何度か呼ぶところがすんごく良かった。
ここで受けに対するいとしさが爆発して、途中確かに鬱陶しかったけど許す!!許せる!!と思えました。
お勧めされて読んでみたのですが、攻さんが素晴らしすぎる!
ああ、男前攻いいですねえ。
俺様攻が苦手なので、その逆ってなんだろうと思ったら男前攻なんですかね。
話は愛人の私生児である受、杜国の目線で語られるのですが、面白いくらい、杜国に感情移入出来ないのですよ(笑)
逆に心情を事細かに語られると、理解できなくてイライラします。
「こう思ってる!」でも云えない。→事態は悪化。というパターンが多すぎて、私が佐賀なら一発くらい殴ってたかもしれません(笑)だからといって杜国が性悪かというとそうではないので、中西は意地悪すぎて苦手かなあ。
杜国は悪い子じゃないんですが、引きこもりとかコミュ障レベルに対人関係がだめすぎて。杜国の語りなのでこういう理由でだめだったというのが分かってイライラするのですが、これがまったくわからない状態で同じ事やられたら行動が理解出来なすぎて理解出来なすぎて、不安になります(笑)同じ作者さんの「恋を綴るひと」の受くんも行動が理解出来ない不思議さんでしたけど、彼はとても好きです!!
この違いはなんだろうと思ったら、杜国は甘えすぎなんですね、すべてに関して。母子家庭で苦労した筈なのに、行動がすべて甘えてるんでイライラするのだと思います。こういう環境で育った子は、もう少ししっかりするんじゃないかなあ。
掛井は甘えられるのが好きみたいですが、限度があるだろ?と思いました。散々振り回されて何で掛井が杜国に愛想尽かさないのか、最後まで良く分からないのです。
掛井がそこまで愛情を注げる何か分かりやすいきっかけがあればよかったかもしれません。
掛井だけなら「神」ですが、「萌」で。
前半「テレビの夜」と後半「いとしさを追いかける」の2編からなる1冊。
過去に途切れた関係を修復させる、再開ものです。
杉原さんの御本はそんなに多く読んだわけではありませんが、どれを読んでも作者象がぶれていない稀有な方だと思います。いつでも思ったとおりのイメージをくれる作家さんです。
「テレビの夜」
1歳差の先輩と後輩のお話。
主人公の杜国は母子家庭で育ち、入学した高校に母親が愛人をしている男性の息子・掛井がいると知って、暗い好奇心から近づき後輩としてなつきます。
そしてこの人は自分が好きだとわかるくらいに距離が縮まったとき、杜国の打算も好奇心もばれてしまい、二人の関係は終わります。
掛井が上京して2人は完全に途切れますが、母親を失い本当に1人になった時に杜国が望んだのは掛井との関係を取り戻したいということ。
杜国は掛井を追いかけるため死に物狂いで勉強します。それが恋心かどうかは後付けです。
どちらかというと過去を追う話で回想シーンが長いのですが、それが上手く出来ているお話でした。
何より味のある掛井のキャラクターが魅力的です。
ですが、仲直りするのが早すぎて、間に何もひねりや展開はないのかとちょっと物足りなかった。過去を描いただけのような風にも感じました。
どちらかというと掛井の視点が少し見てみたかった。
好きだった杜国が、親の愛人の息子の顔が見たいために近づいてきたのを知ったときや、そこで酷い言葉をぶつけて別れたのに1年後追いかけてきて自分のアパートの前に立っていたときの気持ちが知りたかったです。
過去が重点的なお話だったので、2人の未来のお話は後半に続きます。
「いとしさを追いかける」
前半のお話の方が面白かったけど、後半の方が好みでした。
ただお話はなんてことはありません。よくあるお話です。
付き合い始めたのにベタベタすることが出来ない杜国が、でもちゃんと好きなんだ照れてるだけなんだと伝えたいのに上手くいかない。
そのうち、掛井の友人に「恋人として好きなわけじゃなく先輩として好きなだけじゃないか」と言われ気持ちがグラグラします。え、そんなところまで気持ちが巻き戻り?なんで互いに好きなのにうまくいかないのかと思いました。
前半がよく出来た内容だったので後半は平凡に感じましたが、こういう自然なカップルのお話が大好きです。
ですが、これはちょっと杜国の自分勝手さにイライラします。
掛井が優しい、本当にカッコイイ。
愛情表情の大きいほうが損をしているとは思いませんが、この話はカップルの愛情表現力に差がありすぎて流石に読んでいて気の毒になりました。
でもそこで2人の話し合いはお話の冒頭に巻き戻ります。
1人で掛井を追って東京にやって来た杜国。「それが全てだから」と言う掛井は自分ですらよくわからなくなっている杜国の感情を杜国以上に納得しているのかもしれません。
なのでこのカップルはベクトルは違えどその事実がある限りは上手くいくんだろうなぁと思いました。
久しぶりに出会えて良かった〜って思えるお話でした。主人公があれこれ悩んだり計算したりする姿に、読んでいるこっちが嫌になる直前で気持ちが展開していくのが絶妙で、イライラしないでいい感じに振り回されて、気づいたら主人公の気持ちにかなり寄り添って掛井先輩の言葉や態度にドキドキできました。ひたすら掛井先輩の愛情の深さに癒されて、一緒に大切にされている感じを味わえ、読み終わった時に幸せな気持ちになれると思います。
杉原さんでは、始めに読んだ作品です。
とてもイイ!攻めの掛井が!掛井だけが!(笑
受けの杜国目線で進みます。
家庭環境の複雑さで、先輩である攻めに複雑かつ鬱屈したような八当たりのような感情があり、彼へ近づきます。
攻めの掛井は杜国の高校の先輩で、杜国を溺愛しています。
甘やかすし、酷いめにあっても結局杜国が好き。
杜国以外、目隠しでもされているような愛ですね。
とにかく、掛井が良いのです。
こんなに愛されたら幸せだわあ、とシミジミ…
杜国に怒ってないのか尋ねられ「怒ってるよ」と答える、この「怒ってるよ」がなぜか壷!
ジタバタしてしまいました。
もう、杜国がグルグルする度に「こんなに愛されてなぜわからない!」と苛々しましたし。
掛井の友人・佐賀もさぞ苛ついたことでしょう。
杜国目線で進むのにちっとも彼には感情移入できず、掛井の言葉や行動ばかり印象に残った作品でした。
掛井のおかげで、杉原さんの他の作品も読み出したようなものかな。
攻めの掛井が凄く優しくて優しすぎて、切ないを通り越して疑ってしまうほど(笑)寛容でした。
そして何よりもしつこい・・ではなくて(笑)、一途!!こういう攻め・・大好きです!!でも相手がやさしすぎて、劣等感を感じてしまう主人公の気持ちも痛いほど伝わってきました。
お話は、主人公の杜国(受け)は、母のパトロンで数多くいる恋人の息子である掛井(攻め)を見てみたいと思う。何も知らずにお金持ちで、不自由なく暮らしている彼をみて、心の中で笑ってやりたかった。いつも「女を泣かす男になるんじゃないよ」という母が、沢山の恋人の誰からも一番に選ばれないことが切なかった。自分だけはずっと傍にいることを気づいて欲しかった。甘えたかった。自分を受け入れて欲しかったという様々な気持ちが、なかば八つ当たりという形で掛井に近づくきっかけだったと思います。しかし近づいたけど、掛井と接する内に好きになっていたのだとも気づかず、全てが知れてしまう。(このシーンが一番ハラハラしました。)
そして、再会するが掛井は、昔の様に優しく接してくれる。何故だろうか?疑問に思う主人公。
いっそ殴ってもらたほうが、怒鳴られて怒って欲しいと思うけど、そんなことはしないのです。
掛井が杜国を好きだから・・・それが全ての理由です。
そして杜国も思い悩むのも、ボロが出て嫌われたくないと思うのも、結ばれてもいつか終わってしまうのではないかと不安に思うのも、掛井が好きだからです。
「好きだから。」この一言がこんなに「ストン」と心に落ちて謎の紐を解いていくので、自分自身驚きました。杉原先生の心理描写というか話の流れ、描かれ方が綺麗でどこか暖かくて落ち着きました。
脇役ですが、佐賀くんが個人的に物凄く好きです。彼は掛井とはまた違った意味で、いい兄貴ぶんだと思います。格好良いー!!
あと、静岡(沼津)が高校時代の舞台で、元静岡人としては感激でした。うわあああ!と一人テンションがあがりました。掛井さんが掛川に見えてきます(←地名です:笑)
最後に、本編を読んでいてお母さんに幸せになって欲しいとずっと思っていましたが、後半、母を思い出して杜国が泣くシーンがあるので少し救われました。息子の気持ちはお母さんに届いたと信じたいです。
私がこの作品の評価を「萌」にしたのは、ひとえに攻めの掛井さんの人間業を超える寛容さの存在があったからです。
それがなければ残念ながら「しゅみじゃない」評価かな(ごめんなさい)。
ストーリーは終始、杜国視点で書かれているのですが、杜国のどうしようもないヘタレさと狡賢さに、掛井の気持ちを思うと切なくて気の毒で。
掛井の寛容さと忍耐強さ、健気さはもう人間のなせる業ではない、と思いました(笑)。
杜国が掛井との関係にどうしてここまで臆病なのか理解できなかったのですが、杜国が作中で「恥ずかしいじゃないですか。ボロだせなくなるし・・・それに、嫌いなところをみつけれれるかもしれないし」と言ったとき、そうか!と思いました。この子は初恋だったんだ、と。
いや~自分がそうだった頃はもう随分昔の頃なので、こういう緊張感とかうぶさとか、思い出しましたね(笑)。
杜国はそういう感覚が人一倍強い子なんだと思います。
それに比べて、1歳しか違わないのに、掛井はずっと大人です。
もともと諦めていた恋だとしても、これ程与えるだけで無欲になれる人って奇跡じゃないかと思います。
杜国視点で書かれているにもかかわらず、読んでいる間は心はずっと掛井にあった、不思議な作品でした。
優しすぎる掛井さんと、優しくなりたい杜国くんの、おぼこく焦れったく甘ったるい恋物語でした。いや~萌えた萌えた(笑)杜国くんの切実さと不安、掛井さんの一途さと愛慕がゆっくりじっくり歩み寄り又は後退り、それでもゆっくりじっくり馴染みたいと望む2人の様子が慎重に描写されており、読んでて「ああん!焦れったい!」なんて太腿をバシバシ叩くこともしばしば。だがしかし!そんな焦燥募らす我が焦心も、終盤の甘甘な熱烈展開には萌えて燃えて萌え尽きて跡形もないでごわす。大満足ですたい!「好き」という想いが自他に与える影響力を、改めて思慮する事ができた作品でした。
萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
あとがきで書かれているように「ぐるぐる悩む男の子と、寛容で優しい男の子」な、まさに杉原さんらしい甘くて焦れ焦れな内容の、高校時代の先輩×後輩の再会ものでした。
受けが攻めの愛情に乗っかってうじうじしちゃう話は、受けが攻めの愛情確認したいだけの甘えた行動に思えてあまり好き系ではないんですが、そして杉原さんのお話はそれが割とデフォなんですが、甘えん坊というより性悪な印象が強くて結構好きです。
無自覚に攻めを振り回す初心な性悪に、攻めはいつも生殺し。笑
低温気味な繊細な心情描写の奥にちりちりとした熱が潜んでいて、「テレビの夜」では特に、駆け引きのような会話文に読んでいて高揚しました。
続編ではその感覚がやや削がれてしまい、受けがぐるぐるというよりうじうじな感じが残念でしたが、悩みの理由が分からないでもないし、反面、受けが足踏みしまくる分「好きだから」という一言で全てを受け入れてしまう攻めの一途さが際立っていて、甘切ない感じがたまらんかったです。
攻めの気持ちがこーんなに透けて見えるのに両片思いの焦れったさを味わえるのは、やっぱり杉原さんの文章の力が物凄~~~~く大きい。ホント好きです。
原材料は砂糖なんだけど杉原節で綿菓子に加工されてるから甘いんだけど甘ったるくないっていうか。(微妙な例えですんません)
BL作家さんでは、今の所一番好きな文章の方かも(←作品とは言いきれない…)
『テレビの夜』と『いとしさを追いかける』の2編が収録されています。
読んでいてもう、なんて言うか「掛井、あんたやさしすぎるよ」と、奴のために泣いてやりたいような気分になります。
いや、なかばうさんくささを感じるほどやさしいです。
ラストに杜国はどんでん返しを喰らうかもしれないと、かすかに思ってしまったくらいです。
なかったですが。
杜国も、別に悪いやつじゃないんですけどね。
やっぱり寂しい育ち方をしたせいで、愛情を求めていて、でもそれを与えられても幸せに浸りきるよりは、それを失うことを恐れてしまう、つまりは相手を信じ切れない悲しい奴なんですね。
お互いの想いは強いのに、双方片想い的なじれったさがある話でした。
こういうの好きです。
まあ、一口で言ってしまえば、とにかく最初から最後まで、読んでいる方が泣けるほど、掛井がいい人なお話でした。
。・゚・(*/□\*)・゚・。
どーしようっ大好きっ。
杉原さんの作品ってページめくったときから
お互いの『好き』っていう気持ちは駄々漏れなんですよ。
じゃあどうしてふたりは恋人じゃないの?
と、いう理由を少しずつ紐解くじれったさv
先輩後輩同士、再会モノ。
本妻の息子と、愛人の息子、血縁関係はナシ。
攻めの「~しなさいよ」口調とか
何しても受けを好きでいてくれるとことか
育ちの良さそうな落ち着き感とか
もぉぉぉぉぉ全部好き!
アタシ、この掛井って攻めがかなりタイプです!
受けの鬱々としたネガティブ思考とか
ほんっとにツボw
恋人同士になった瞬間から
嫌われたらどーしようとか、フラれる心配をしちゃう受け。
あれもこれも恥ずかしいから「いやいや」言っちゃうのとか。
相手の気持ちを量るようなことをしちゃうとことかね・・・
ほんと受けは“性悪”だと思いますよw
でも、攻めはずっと受けのことを好きでいてくれんのよ!
なんだこの安心感!!!
絶対的な安心感があるのに
本読んでる間、ずっとドキドキドキドキしてた。
きゅーっとね、きゅーっと胸が高鳴る!
切なくてじれったくて優しくて恥ずかしくて
初めての恋愛ってこんなだよなぁ~、と
遠い目になりつつ読み終えました。
雑誌掲載時は『テレビの夜』だけだったらしいのですが
けっこうあっさりとした終わり方で
なにかやり残した事があるような不思議な感覚が残ってしまって
もし私が雑誌掲載時に読んでいたら
もやもやした気持ちを抱えたままだったかも。。。
でも、書き下ろしの「いとしさを追いかける」でも
なかなかそのもやもやはすっきりしないばかりか
不器用な杜国をあざ笑うかのような中西の登場にさらに振り回されて
焦らされ度が最高潮に。。。
ずっと杜国の一人称で語られていることもあって
杜国がうまく思っている事を言葉にして掛井に伝えられないもどかしさや
掛井の事が好き過ぎて逆に失う事を恐れる気持ちが
痛いくらいによくわかって切なかったです。
そんな杜国を甘やかし続ける掛井の言動や行動は
逆にすごく残酷にも感じられました。
(私自身、素直に甘えられないタイプだからそう感じたのかもw)
だからこそ、最後に
泣きながらやっと言いたい事が言えた杜国に
こっちまでもらい泣きしちゃいましたw
かなり後ろ向きな受けなので、好みが分かれるところかもしれませんが
上手く受けの心情に共感出来れば
とても心に響く作品に感じられるのでは?と思いました。
全く余談ですが
表紙絵の赤いテレビ、めっちゃ懐かしかったw
今でもあるんですねw
好きな作家さんの本でも、感想を書きやすい本と、書きにくい本とがありまして、
この本は後者、
この作品について、どういったらいいのだろう
この二人、どっちもどっちで、
「ふたりとも、しつけーし、きめーよ」
って言う、やさぐれた私と
「思い続ける一途さが、グルグルも含めて切なくってステキ」
って言う、ウルウルした私が
どっちもホントで、どっちも違う
ただ、紗幕を通した向こうの景色のような,うっすら光る二人の世界はきれいだった。
『テレビの夜』と、その続編の『いとしさを追いかける』の二編が入ってます。
『テレビの夜』は神でしたねー。
一人称の主人公の掴みどころのない性格が好きで、引き込まれるように読みました。
主人公とその先輩の掛井の過去と現代が、交互に語られます。
高校時代、主人公は掛井と仲良くしていた。
主人公の母親は掛井の父親の愛人をしており、興味本意で近づいたのがキッカケだった。
ゲイである掛井が自分に惹かれているのを、主人公は冷めた目で見ていた。無邪気に見せかけて意地悪な発言や行動を繰り返して、掛井を観察していた。けど、その裏側で、複雑な感情が芽生えていく。
なにげない会話のなかにある、切ない緊張感がたまらんかった。
杉原さんはこういう描写が本当に上手い。
続編でタイトルにもなってる『いとしさを追いかける』は、もちろん面白かったんですが、冷静沈着な掛井をまったり翻弄する掴みどころのない性格の主人公が、マイナス思考な普通のひとになっちゃって、ちょっとだけ残念な気がしました。
裏切られてもそれでも愛して許している寛容で優しいキャラ、そしてそんな優しさに甘えきれずぐるぐる思い悩む主人公どうも、杉原さんはそういうキャラがお好きなようで、ルチルの二冊共に登場してきます。
が、この菩薩様のように寛容なキャラがくせ者です。
蜜の味なんですよ、くせになるほどよい甘さが、疲労した心に染み渡り癒されていくんです。
年末からの六青みつみ先生や、真瀬もと先生の痛いお話にいたたと心が疲弊してしまった腐女子には、一服の清涼剤。
ベースに深い愛情があるので、主人公がどんなに思い悩んでいても、困った奴だなって、主人公に寄り添ってくれるので、過酷な状況に陥ってるのに、心臓に負担になるようなハラハラはないので、安心してください。
かといって、甘いばっかりではないです。
自分ではどうにもならない過酷な状況に振り回され、優しさにすがりつきたいのに、そうできない主人公の痛さが、ぴりっといいスパイスになっています。
物語はスリルを孕んで始まります。
傷つけた人を追いかけて上京する杜国。詰られるかも無視されるかもと思いつつ接していっても、相手の掛井は昔と同じ態度だし。
本心ではどう思っているんだろう?という杜国のもやもやと、掛井のひょうひょうとした態度にとってもドキドキしてしまいました。いつ地雷を踏むのか。いつ爆発するのか。
じれた杜国が「怒ってないんですか?」と疑問を投げかけると掛井は「怒ってるよ」と言います。そして逆になんで杜国が自分に頼ってくるのかを問います。このシーン、ひやりとすると同時に激しく高ぶるものがありました。このすれすれの感じがたまんねぇ・・・。(じゅる)
だまして傷つけた相手に掛井が本当にひょうひょうとしているんですよ。本心を見せずに煙に巻くというか。かっこ悪いところを見せたくないっていうのが徹底しているのがかっこいいです。
だまそうと思って近づいて、結果その通りになった杜国は自分でそういう部分はひねてると言っているけど、実際はそんなにひねてないと思う。それて人間誰しも持っているものから。だから共感できるんだろうなぁ。
状況に耐えられなくて杜国は爆発しちゃいます。「謝らせてください」と。杜国の感情の露土を受けてやっと掛井が自分の本音を現します。このときの会話が素敵でした。言葉には色々な意味があってニュアンスがあって時や状況によってぜんぜん違う風になっちゃう。そんな文章のカラクリ(?)の醍醐味や言葉のキャッチボールの楽しさみたいのを感じました。
くっついてからも杜国は自分のことが信じられなくて掛井とギクシャクしてしまいます。その時の掛井の対応が大人なんですよね~。ちゃんと正しいことを正しいと筋を通せる人なんです。しかも、杜国の気持ちを尊重してすべてを受け止めてくれるのです。「好きだから」という自分の気持ちだけで。泣けるほどいい人です。
ほのぼのとも違うし、シリアスとも違う、切ない系やセンシティブとでも言うんでしょうか、そんな作品です。ぐわっと大きな波や事柄があるわけではないけれども、穏やかな中にも確かな熱のようなものを感じます。最近読んだ本の中では一番のヒットでした。大切にしたい1冊です。