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「所有物は所有物らしく、潔く諦めるんだな」
お互い好きなのに、その気持ちを伝えられない関係。
呼び合う名前さえ、昔と同じ呼び方もできない。
素直にすべてを話してしまえば誤解も解けるのに…。
伝えられない気持ちが長年にわたって蓄積され、とっても切ないです。
ケガをして、成り行きで常盤の家に滞在する事になった樹。
結果として監禁なのですが、離したくない、側に置いていたい、という常盤の気持ちがありありと伝わってきます。
最初は辛く当たる常盤ですが、言葉とは裏腹に態度はとっても優しい。
樹も常盤に揺らいでいく気持ちを必死でセーブしようとするところが萌えです。
雪で覆われた景色に二人っきり、というロケーションも美しい。
椎崎さんの作品は、どれも言葉が丁寧で物事への説明が充分に行き届いています。
淡々と綴られる文章ですが、とっても穏やかに話しを進めていきます。
作品の雰囲気をよく醸し出していて、心にじーんとくるものがありました。
激しい変動はないですが、しっとりとしたオトナの男の優しさを味わって欲しい…
そんな作品だと思いました。
あらすじを読んだ時、監禁調教ものかと思いましたが。
淡々と、二人だけの世界が展開される静かな物語でした。
樹を容姿から所作。日常生活全てに関して、
徹底的な管理下に置いた高名な彫刻家・山辺。
愛人関係と思われているが実は………
そんな山辺と樹の歪な関係にゾッとしつつ、
二人はとても寂しい人だったんだと切なくなります。
擦れ違い・誤解の末に、樹の身体を奪い、自分の工房に留める常盤。
やっていることはほぼ「監禁」なのですが。
常盤の手はいつも優しく、樹が傷つくようなことは決してしません。
タイトル通り、まさしく「優しい檻」です。
優しい手の中で樹は戸惑い、切ない思いを育てていきます。
常盤と樹。二人はお互いのことをとても思っているのに。
それが相手にきちんと伝わらず、
相手を思いすぎているから、優しすぎるから。
だからこそ擦れ違う二人に、じれったいやら哀しいやら。
声高に愛を叫ぶわけではなく。感情を抑え、淡々と語られる心情に、
逆に相手に対する強い思いが感じられて、非常に切ない!
個人的にはかなりツボに入った作品です。
>匿名さん
タイトル、センスいいですよね。とても好きです。
匿名さん
「優しい檻」っていうタイトル、作者のセンスを感じますね。
攻めがセックスをしてくることについて「何故こんなことをするのだろう?」とぐるぐる悩む受けなのですが、「かつて自分に真摯に愛の告白をしてきた攻めがまだ自分を好きである可能性」についてだけは絶対に考えようとしないのが不自然に思えました。
あれだけ執着されてたら、普通はまずその可能性について考えると思うんだけどな。
優しくされても、情熱的なセックスをされても、逃げ出したのに追いかけてこられても、いつまでも「自分は嫌われてる」と思ってるのが腑に落ちなくて。
こういう鈍さって私の萎えポイントなもんで、正直途中からウンザリ気分になってしまいました。
ただ、全体的にはいいお話です。
描写の細かい丁寧なストーリー展開には好感を持ちましたし、しっとり落ち着いた雰囲気も良かったです。
あと、第一秘書GJと思いました。彼が私の気持ちを代弁してくれた感じw
やっぱり好きだな椎崎さん。
何冊か読ませていただきましたが、トラブルを抱えた受けを中心に展開していく話がほとんどでしたが、椎崎さんはそういうパターンが多いのかな?
不遇な人が傷めつけられながらも、自分の状況に嘆くばかりでなく、がむしゃらに生きてこうとする展開に弱いんです…。
椎崎さんの書くお話を読んでいると、本当そのことがよく分かります。
ピンポイントに私の泣き所を狙ってくるんダ…!
その中でもこのお話の雰囲気・匂いは特に好きです。
大人の落ち着きぶりが大半を占めている中で、大人ゆえの孤独さや自由の求め方、じわじわきます。
樹が家族、そして唯一あった繋がりでさえ失い、全てをなくした後で、それでも前を見て生きようとする。
そんな樹に常盤がいてくれてよかった。
彼をずっと見ていてくれる人がいてよかった。
心底そう思います。