窓月
koikoite
自分がエッチくさいと思っていた小説の濡れ場に対して、たいしたことないけど?みたいな感想を見かけたことがあったので、わたしにはエロの基準というのが皆目見当がつきません笑。なので、情報登録のエロ度は標準を選びました。
時代は明治中期〜後期、主人公は海軍少佐の藤枝閑(しずか)。彼がイギリス留学から帰国して一ヵ月後、養父の屋敷に呼び出されるシーンから物語は始まります。折々に描写される情景が美しい…。
養父の大原伯爵は閑の母方の伯父にあたる軍人で、閑がまだ少年の頃にその体を開かせた色気漲る男。彼の美しい甥に対する執着はいっときの稚児趣味にとどまらず、閑が二十歳を過ぎても関係は続きます。
閑には留学先で出会った想い人がおり、その事実を知った大原がとった行動が序盤の見せ場でしょうか。複数プレイが苦手な方はここでさようならになるかも。
閑と想い人の一色是親は思わぬ形で再会することになるも、その直後一色は海難事故で消息不明となり…
本作は同人作品なので、エロやプレイに重点を置かれているふしもあります。しかしながら、閑の抗えない好色ぶりやエロシーンにおける官能小説的セリフなどについては、単なるキャラクターにとどまらない、受けの一属性を体現するために体を張ってくれている神々しいお姿なのかも…と割り切って楽しむことができました。作者の硬質な文体のおかげで、普段なら苦手かもしれない淫乱ちゃんのあんあん♡すらも純愛として受けとめられたような気がします。
個人的に印象的だったのは、大原伯爵夫人。とても懐の深い素敵な女性キャラで、キラリと光っていました。
88ページしかないのにめちゃくちゃ濃縮されていて、全編を通して滞りなくまとめ上げられていました。そしてなにより、文章が端麗。とにかくわたしにはしっくりときて心地がよく、ますます作者の言葉の感性に惚れました。同人作品だからこそ味わえた、レア体験なのかもしれません。
珍しくイラスト有りで、そちらもとても好みでしたが、ま、まさか大西叢雲さんと同一人物じゃないですよね…?