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(ネタバレなしです)
箱の中、美しいことで木原さんの作品の面白さに取り憑かれたなら是非手にとって欲しい作品です。上記2つの作品では、非常に辛い思いをする比重は主人公に偏っていますが、この「リベット」は主人公初芝を中心に、3人あるいは4人がそれぞれ違う重みと辛さを持っています。
BLでイメージするような甘さはなく(それを木原作品に期待してる人は少ないですかね)とんでもない辛口です。読むのが辛くても、止まれば辛さが長引くだけだと読むのを止められません。
理不尽で地獄の運命に翻弄された初芝の苦しみ、悪夢の詳細を事細かに描かれる文章がかなり具体的で、読者として作品の傍観者ではいられなくさせます。
どんなに好きな人でも、その人が絶対的に分かり合えない個人の身体の痛みを抱え、気持ちとは裏腹で攻撃的な言葉ばかりで八つ当たりを繰り返すのでは、側に居続けることは相当な困難です。支える事、甘える事、打ち明ける事、極限で自分はどう動くか問われているようでした。
愛というだけでは軽い、でもそうとしか言いようがない物語でした。凄いものを読んだ…という読後感でいっぱいです。神でしかないです。
そして!カバーを外した時に数年後のSSが…!こんな優しい計らいがあるなんて!涙が出ました。
学生時代に親友・阿岸に乱暴されHIVに感染した初芝は、恋人にも打ち明けられないまま、一人で病と向き合い暮らしてきました。しかし、発症していないものの、次第に体の不調に悩まされるようになります。そんな時、患者のサポート経験のある後輩教師の乾が初芝の体を気遣い、支えるようになります。教師としては未熟でも明るい乾に励まされる初芝。乾が自分に特別な好意を寄せていると気付いた初芝は距離をおこうとしますが、乾は好きな人に頼られるのは嬉しいからそれだけでいいと傍に居続け、初芝は罪悪感を持ちながらも乾に支えられ仕事を続けます。しかし病状は悪化し、恋人にも去られた初芝は自暴自棄になってしまい…。
初芝に検査を受けるよう懇願する阿岸、阿岸に復讐しようとする初芝、初芝の病を知って去った恋人、死の恐怖で乾に当たり散らす初芝。病を前にした、きれいごとでない感情が描かれ、自分ならばどうするだろうと考えずにはいられませんでした。きっと初芝の恋人のように逃げて、初芝以上に感情が激しく揺れてしまうと思いました。
だから、乾の大きな愛にとても胸を打たれました。病気の知識とサポートの経験があっても、死の恐怖で荒れる初芝を受け止めるたびに自分も傷つくに違いありません。でも、「大丈夫だよ。怖いことも嫌なことも全部俺が引き受けるから」と言うのです。どうしてだろうと考えて、乾は病気も含めて初芝の全部を好きになったのだろうと思いました。強く見えるけれど本当は弱い初芝を、乾は傍で支えたいと心から思ったのでしょうね。
そんな乾ですが、書下ろしの「リベット2」では、初芝が同僚の女性教師と付き合っていることを知り、嫉妬します。その人間臭い描写がとてもよかったです。また病気を理由に振られた初芝を傍で支えたくて、「お願いだから、俺のことを恋人にしてください。嫌だったらキスもセックスもしなくていい。」と言う乾が、切ないけれど、さらに大きな人間に思えて。身を投げ出すような乾の愛に、いつか初芝は降参するしかないと思いました。
(表紙下の本体に描かれた、その後の二人にたどり着くまでの紆余曲折は、コミカライズ版に描かれています。)
リベットとは、半永久的な締結用途に用いられる鋲状のものだそうです。初芝の「(検査結果は)陰性だった」という嘘を信じて喜びの涙を流した阿岸。病気を抱えても誰かを好きになる初芝。そして、初芝を支える乾の愛。愛は、この世に生を繋ぎ留めるリベットなのかもしれないと思いました。
私は、あらすじやレビューを念入りに確認してから本の購入を検討します。
自分に合わない本を読んで後悔したくないからです。
その後、購入した本は別な本を読むなどしてなるべく内容を忘れるよう努めます。
そうやってまっさらな状態で読むのが、私の楽しみな本の読み方です。
でも本書は、HIVという重たいテーマを扱った作品。
生半可な気持ちで読んでは悔いを残すに違いない。
しっかりと胸に刻み込み、決して忘れずにおこうと決めました。
そして「よし、今なら読める」と覚悟してから読もうと考えました。
実は購入の際は迷ったものです。
BLとしては重たすぎる内容なのではないかと言う理由で。
けれども木原先生の作品と言う事で、期待の気持ちの方が強く購入の運びとなりました。
今回、未読本の中から本書を選んだのは、ふいに「読んでみたい」と言う衝動が沸き起こった為です。
特にこれと言った理由もなく、いきなりそんな気持ちになりました。
リベット(82%)初芝公平(受け)視点
リベット2(17%)乾武則(攻め)視点
あとがき(1%)
あらすじ
ノンケの初芝公平(受け)は、ゲイの乾武則(攻め)と同じ高校教師。
乾よりも年上で先輩の初芝は28歳。
付き合って1年半になる由紀という彼女がいます。
乾と知り合ったのは4か月前。
新卒採用された乾の指導を任されています。
乾は酒癖が悪いが、素直で明るく口もうまい。
生徒にもよくなつかれています。
そんな乾が心ひそかに想いを寄せているのは初芝。
初芝は歯に衣着せぬ物言いをするが、根はやさしい。
ある同僚の結婚式の夜、酔いつぶれた乾は初芝のアパートに連れて来られます。
酔いの冷めた乾は、初芝と話をしたがります。
そして発せられる意味深な言葉。
初芝は乾に、「誰にも知られたくないある秘密」を勘付かれてしまったのではと疑いを持ち始め…。
読了後まず思ったことは、確かに重い作品だけど読んでよかったなあ!と言う事。
HIVに感染した人の暮らしぶりや心の動きなどを窺い知ることが出来、勉強になりました。
また、乾が学生の頃していたというボランティア活動も大変興味深く拝読致しました。
1人のPWA(エイズ患者)に1人のボランティアがついて、精神的なサポートをするというシステム。
有り難いシステムだなあと感心しました。
精神的に落ち込んでいる患者の、どれほど心の励みになることか。
そんなボランティアをしたことのある乾が、精神的に初芝の支えになっていくお話しです。
初芝がHIVに感染したのは高校時代からの親友に無理やり襲われたことによるもの。
初芝はまったくのノンケであり、男同士の恋愛など全く興味がありません。
一方、乾はゲイ。
学生時代にバディをしていた経験から、初芝がIHV感染者だと気付きました。
1人で闘おうとしている初芝を放っておくことができません。
傍にいて、支えたい、愛されたいとまで願うようになります。
本書はバッドエンドではありません。
ですが、BL的ハッピーエンドとも違います。
なぜならラストになってもまだ初芝は、乾の想いに応えるところまで行っていないからです。
けれどもそのラストこそが素晴らしい作品でした。
未来が明るい光に照らされて、キラキラ輝いて見えました ༓٩(❛ัᴗ❛ั ๑)༊༅͙̥̇⁺೨*˚·
あとがきで木原先生が仰っておられました。
「性格上、初芝が乾のことを心底受け入れるにはあと2、3年ともう1つくらい大きな何かがないと無理のような気がします」と。
私もそんな風に感じました。
でも乾の初芝への想いはいつか必ず叶う!
そしてそんな日は案外遠くはないと、そんな風に思えるラストでした。
生死が絡んでいるだけに辛いシーンもありましたが、だからこそ感動するシーンも盛り沢山でした。
安易にBL的ハッピーエンドにしないで頂き、逆に良かったです。
是非多くの方にこの感動を味わっていただきたいです。
本書にもあるように、未だHIVウイルスを体内から消滅させる治療法はありません。
けれども早期発見と適切な治療により、平均余命を40年にまで引き延ばすことが可能になりました。
40年って言ったら、20歳で感染したとしても60歳まで生きられる計算。
これはすごいことですよ。
江戸時代の平均寿命は30~40歳でした。
癌になり余命数ヶ月を宣告された患者だっています。
比較をしても詮無い話ですが…。
でも陽性を告げられた感染者も、発症さえしなければ長生きできるのです。
覚悟を決め生きるための闘いをしているうちに、画期的な新薬が出来、治る可能性だってあります。
この作品はそうした生きる希望を与えてくれる素晴らしい作品だと思いました (˶′◡‵˶)
最近見つけたエイズに関するサイト。
とっても分かり易く解説されております。
TOPページをご案内いたしますので、右側のBOXの上から8番目をクリックしてみて下さい。
知識として知っておいた方が良いことばかり。
BLを読むうえでも勉強になりますよ。
http://se1byou.net/
萌えたわけではなく作品にとても惹かれたという意味で萌え×2にしています。
言い方に語弊があるかもしれませんが木原さんの作品で久しぶりに「すごい酷い人」×「一途な人」 以外 を読んだ気がします。
私が本を購入した順で読んでいるのでかなり語弊がありますね。
初芝の秘密が何なのか分からなくて怖い!何の秘密があるの!とドキドキしましたが、エイズだったとは考えもしませんでした。
BLはファンタジーですがエイズという病気を題材にすることに「木原作品ここにあり」と感じました。
エイズだと読み手が分かる前に由紀という存在がいて彼女と会うことなく話が進んでいたので妄想彼女か、そういう存在を脳内で創りだした幻想の相手なのかと思っていました。
実際は違ったんですが。
乾がボランティアしていたときの人が阿岸だった時の驚きとそこに繋がるのかという驚き。
お話中盤でも乾の一途さにウルウルきましたが、ほんとに終盤の終盤での「好きな人ができたらそっちに行ってもいい」という乾の気持ちと初芝の謝罪のキス。
泣けました。
気持ちに答えられない相手の好きな気持ちを利用することは出来ない。
初芝は強い人だなと思いました。
リベットってどういう意味なんだろうと思い調べたらナット(鋲)のことなんですね。
阿岸の暴行によりエイズになった初芝。
エイズというリベットが阿岸と初芝の関係をある意味半永久的に離れることはない関係に。
また、阿岸というリベットによって乾と初芝も半永久的に離れることはない関係になったということでしょうか。
リベット。深いですね。
BL界では多分、よっぽどのことがない限りはNGネタ。
蒼竜社さんがまだ木原レーベルと言われてた時代に発行された作品ですが、この出版社さんと木原さんだからこそ世に出せた野ではないかと思います。
10t級の重さのテーマ、今回はエイズ感染者が主人公です。
軽々しく扱える題材ではないのを理解してて、それでも書いてしまうのが
この作家さんの凄いところだと思います。
正直言ってBL的ハッピー展開なんて皆無で、至極真摯にそういった問題に切り込んでいってるので、ずしっときました。
でも、とっても真面目で不器用で、優しくて臆病で……。
そんな人達の、せつなくて苦しい恋のお話でした。
肝心の主人公は、ガチでストレート。
そりゃもう、ものの見事に最後まで。
一途な攻が可哀想に思えてくるくらい、全然全くなびかないです。
なびくどころかそんな気配すら感じません。
結局はふたりの今後を示唆する程度で1冊が終了し、それでも本当に心がほっこりして、暖かくなって、少し涙がでる。
BL作品としての評価はあえて萌。そういう次元で読めなかった。
読了後、カバーを外したら……(驚)
小説にカバー裏なんてないと思って見過ごさないように注意が必要です。
結構、シンドイかな。
心が痛い部類でした。
苦しくて苦しくて苦しくて…
こんなにまっすぐ愛されたらノン毛とか関係ねーよなぁー。
と、頬杖つきながら
さっさとやれ、やっちまえ、認めろ。
好きでいいじゃねーかよ。
あーもう、焦れったいけど、それも良し!
大人って、うそぶくよな。
ああそうさ、1人で寂しかったくせにいい年して強ガンじゃねーよ。
2人で幸せになっとけ
このやろうと、
日本酒飲みたくなる感じですかね。
いっすよ。
俺はこれも好きです。
でも、
シンドイかな。
これまでに三作、木原先生の作品を読みましたが、全作泣いてます(苦笑)三作読んで全部泣くって、相当鷲掴みにされてるってことですよね。厳密にいうと糸井のぞ先生によってコミカライズされた『期限切れの初恋』の巻末に収録されている番外編ショートを読んだのが木原先生の文章との出会いでした。大好きな糸井先生の手にかかったコミックスといっても読んだ当初はピンと来ず、ちるちるレビューでも好みが分かれる作家さまというイメージがあったので、BL小説を読んでみたいと思っていてもずっと敬遠していたんです…。
木原先生の作品は小説だからこそずっしりと伝わる物語だと思います。この作品を読み、若い頃に家田荘子さんのノンフィクションを映画化した『私を抱いてそしてキスして』という作品が話題になった事を思い起こしました。この映画がテレビの情報番組などで取り上げられたことによって、当時日本でのHIVに関する認知度の貢献に一役買ったのではないかと思います。
『リベット』はHIVに真っ向から取り組んだ作品です。BLというジャンルにおいては非常にリアルなテーマであり、テーマだけにいかにもなフィクション設定の甘々エロエロハッピーエンドを期待することはできません。むしろ、できるだけ見たくない現実に無理矢理後頭部を押さえつけられて直視させられてしまうようなキツさがあります。木原先生の書く物語になぜいつも心揺さぶられてしまうのか、この作品に出て来る乾の姿を見ていて気付きました。この方は恋を描いているのではなく、愛を描こうとされているからだと。恋は自分のことしか見えていない。けれど、愛は自分以外のことしか見えていないんです。物語終盤は涙が止まらなくて、本を読んでこんなに泣いたのって、いつぶりだろうとビックリ。(これを書きながら思い出し涙してる自分が怖い…。)
書き下ろし、カバー下の内容には安心してください。重いテーマですが悲しいストーリーで終わってはおりませんので!
あらすじをみて無理かもと思い、手を出せずにいた作品。
コノハラーとしては、避けては通れないということで、意を決して手に取りました。
で、感想は、「深い!!」の一言です。
何かね、色々と考えさせられましたよ。
心を揺さぶられましたよ。
是非とも、様々な人々に手にとって貰いたい。
本作を読んで、考えて貰いたい。
よくBLでこのテーマを取り上げたなぁと感動しました。
そりゃ、他社でボツになるよ……
読後感は、悪くないので、迷っている方は是非とも手にとって下さい。
最後に、電子書籍だったので、カバー下の将来の二人というのが見れなかったのが残念……
以前から読んでみたいと思っていた木原作品の1つ。
高校時代の友人にレイプされた初芝。
それだけでも傷が深かったに、友人は更なる爆弾を初芝に投下する。
自分がエイズを発症していること。
初芝にも検査を受けて欲しいこと。
そして、初芝は陽性という宣告を受ける―――。
自分には何の罪もなく理不尽な仕打ちでしかない感染。
それも知名度はそれなりにあれど、興味本位で話題にされる程度で、理解などなかなか得られそうにもない病気。
それらを抱えることになってしまった初芝だが、感染経路のこともあってそんなに簡単に人に言えるものじゃない。
偶然(?)、自分の指導する新人教師・乾がボランティア経験もあり、その病気に気付いてしまう。
放っておけないから捌け口で構わないからと初芝を甘やかそうとする乾。
乾には過去に苦い経験があって、今回のことはそれの罪滅ぼし的な自己満足でしかない部分も確かにあって。
どんなにつらく当たられても抵抗しない。
初芝の気持ちを穏やかにすることだけを考えて宥めて。
乾の気持ちは贖罪の気持ちだけではなく、恋心として大きく育っていくのに、それはうまく実らない。
告白しても「無理だ」で終わってしまうのは初芝がノンケだから。
ゲイとノンケゆえのどんなに乾が愛しさを募らせても実らない様も描かれていて。
彼女に振られても、また新しい彼女ができたりとか。
簡単に男同士がくっつかないところが妙にリアリティがあって。
何年も何年も。
恋をして傷付いて。
病気に負けそうになって。
そんな時、誰よりも親身になってくれたのは乾で。
ほかに頼れる人がいなくなると頼ってしまうのは乾で。
大切だし感謝もしてる。
でも、恋じゃない。
どうしても噛み合わない想いを抱きながら、それでもお互いの幸せのためにどこかで相手を必要として。
職場を離れても繋がっていられる手段としての「恋人」という免罪符を手に入れて。
乾は一貫して献身的。
過去のこともあるのだろうけれど常に愛情に満ちていて。
何をされても許してしまおうとするような、受け止めようとするような。
愛情が返ってこなくても、ただそばにいられる存在で在りたいと思う乾がせつない。
一方、初芝も乾の手を借りてようやく前を向いていくことを考え始めて。
考え始めたら乾の好意を巻き込めないと、自分の足で立つことを考えて。
それは一種のつよがりのようなものでしかないのかもしれないけれど、そうでもして乾を解放しようとするようなところがせつない。
そんな初芝に必死で頼み込む乾がまたせつない。
そうして未来のあるような形で終わるのかと思いきや。
知っててよかった、ちるちるレビュー!
ほかの皆様がどんな感想を持たれているのかとレビューを読んでみると、カバー下、未来の姿が!!!
ありがとう、ちるちるレビュー☆
2人の幸せな姿が読めて本当によかったです。
乾はもちろんのこと、初芝も幸せそうなのが何よりも嬉しかったです。
この作品、BLとは、少し違う感じかな?と思います。
木原さんがあとがきで書かれていますが、一度、没になったプロットだそうです。
たしかに社会的に問題になりましたし、避けては通れないことなのかも知れませんがBLというジャンルではタブーなのかな?とも思います。
主人公の初芝公平は、高校で社会科の教師をしていて新任の乾武則の指導教員です。
望んだ仕事に就き、年下の恋人もいます。
けれど、初芝には誰にも言えない秘密がありました。
6年前、大学4回生の夏・・・親友の阿岸に暴力で奪われた初芝。
以来、阿岸との交流はなく、それから4年後、忘れかけていた頃に再び阿岸は別人のような変わり果てた姿で初芝の前に姿を現します。
阿岸はHIVに感染していてすでに発症していたのです。
そして・・・たった一度の行為で初芝もHIVに感染していたのです。
初芝にとっては理不尽以外のなにものでもない・・・阿岸を恨み呪い殺してしまおうとさえ思い、けれど、初芝は死に瀕した阿岸に自分も「陽性」だったとは言いませんでした。
阿岸は、初芝の思いをなにひとつ知ることなく逝ってしまいます。
阿岸の死から2年。
初芝は、病気のことを家族にも恋人にも誰にも話さず病院へ通い日常生活に気を遣い孤独な闘いを続けています。
そんな初芝の様子に新任教員の乾が気づくのです。
この乾が気づいたあたりで・・・もしかしたらと思ったのですが、やはりそうでした。
乾は学生時代にHIV感染者をサポートする団体にボランティアとして参加していたのです。
そして、後に乾の告白でわかるのですが、乾はそのボランティア活動で阿岸と関わりがありました。
初芝との出会いは偶然でしたが、乾は、阿岸から初芝のことを聞いていたのです。
しかし、学生だった乾は阿岸の重さに耐えられずボランティア活動から逃げだします。
その事実と今の初芝に対する思いと・・・。
乾はゲイでした。初芝に恋をして、初芝を見守ろうと決心します。
愛なのか、贖罪なのか、わからないけれど、なにがあっても今度は逃げないという乾の決意。
初芝の方は大変です。
疲れやすい身体を抱え、日々を過ごすだけでいっぱいいっぱいです。
仕事上の指導ならいざ知らず、乾の恋心なんかにかまっている余裕などないのです。
検査の結果に一喜一憂し、たったひとつの安らぎだった恋人との別れ、不安と絶望と恐れと・・・。
初芝は乾に当たり散らします。怒鳴る、殴る、暴力までふるう始末。
初芝を見守ろうとする乾の行動は、初芝に自分の弱さ、醜さを目の当たりにさせ、自己嫌悪に陥らせます。
初芝は、こんな自分は嫌だと思いつつも乾の手をふりほどくことができない。
どんなに支えられていても乾の気持ちには応えられないのにその手にすがってしまう自分が許せない。
このあたりは、読んでいて本当に辛いです。
乾の見守る決意と、その好意に対してなにも返せない自分を許せない初芝。
けれど・・・。
この物語の本編は、ここで終わります。
最後の乾の言葉が思いがとても印象的でした。
小説を読み終わったら小説のカバーを外してください。
乾が「俺のことを恋人にしてください」と泣きついてから3年後のふたりを読むことができます。
中出しやフェラなどの性描写が多いBL小説でエイズについてしっかり書いてあったのには驚きました。ノンケであり無病の私がこの作品をリアルだと言ってしまうのは違うと思いますが、物語特有の空想的な甘さが少ない話でした。同性愛小説はファンタジーなどと言われている中で、この作品はシビアです。
男女が対照的に書かれていたことも面白かったです。
女性たちは、自分がしてもらう事ばかり考え、好きだと告げたはずの人を幸せにしたいとは思わない、受け身なくせに利己的に見えました
逆に、男性側は、病気や同性愛など負い目を抱えた恋愛感情にしっかり責任を取ろうとする。最終的には相手の幸せを一番に考え身を引こうとする所も誠実で本気の恋のように感じました。
「好きな人に告白したの初めてなんですよ」
と言っていた乾のセリフがとても切なかったです。同性愛って自分で好きだと言わないとほとんど叶うことなんてないんじゃないっかて気がしました。乾は、勇気を出して想いを告げ見返りがないと覚悟の上で好きな人を支え続けます。報われるはずのなっかた恋のはずが、自分の一生懸命な姿勢が初芝に伝わり両想いになれた。
病気のことはあっても、とても素敵なハッピーエンドでした。
おすすめします。
親友と思っていた男に強姦され、更にそれによってエイズになってしまった初芝。
その親友は既にエイズで亡くなっていて、怒りをぶつける先もないという全く理不尽でやりきれない酷く残酷な目にあった初芝。
ホント、木原さん痛い設定でやってくれるなあ……。
初芝はその病を隠しつつ、恋人(女性)と付き合い、教師をしています。
しかし後輩教師の乾は、初芝がエイズである事に気付き何かしらと世話を焼き心配をしてくれるのです、そして乾はゲイで初芝に好意を持っている。
初芝の恋人は、彼の病を知らされて一度は受け止めるもののやはり彼の元から去って行きます。
次に出来た女性の恋人も同じく彼の元を去っていく。
そんな風に初芝は基本ノンケなので、乾との熱い恋愛へ進展して行くまではいかないんだけど、先輩後輩以上のものな繋がりは彼らの間に発生してはきます。
最後の最後でやっと恋愛めいたものが生まれる。
明るい希望がある訳ではないけれど、絶望だけがある訳でもない、けれど決して明るい希望の道ではない。
それが淡々と書かれている作品でした。
BLでラブラブエロやがっつり恋愛話を期待している方だと、この作品は系等が違うだろうなって気はしますが作品としては名作だと思う。
やりきれないが、絶望だけの話では決してない。
この物語は、私が普段目をそむけようとしている不条理へと焦点を向けさせようとする。世界は不条理に満ちている。そして、「なぜ自分がこんな目に合わなければならないのか?」という叫びのような問いかけに対して、理性で説明することはできない。著者は、そうした不条理を、オブラートに包むことなく、残酷なほど赤裸々に描いて行く。
主人公初芝は、親友だった男にレイプされ、それによりHIVに感染するという不条理を背負わされている。誰も彼の苦しみを体験し、肩代わりすることはできず、彼はただ孤独な「単独者」として歩むしかない。そして、彼は孤独の中で、自分という存在や自分の生が根底から揺り動かされる不安や恐怖を体感する。「生きることが怖い」「自分はこんなに醜い人間だったのか?」と、死へと向かって行く生や自分の中にある負の部分への恐れを吐露しつつ、自分を自分で支えようとする初芝の姿が痛々しい。他者による否定や無理解もまた彼を追い詰め、彼の生への恐怖をかきたてる。
著者は、最終的に、明確な救済は描くことはないが、出口のない闇の中にほんの一筋の光を注ぎ込む。そして、その光は、乾武則という一人の人間によってもたらされる。
乾は、初芝を死に行く存在、未来のない存在としてではなく、未来に渡って生き続ける存在として見る。「先生の人生はずっと続いて行く」という彼の言葉は、単なる慰めではないだろう。彼は初芝の生を、死を前提として見ることがない。乾の中で、生と死は連続するものではなく、死が訪れるその瞬間まで、生は生であり続けるのだ。(これは当然のことに思われるが、不治の病に侵された生を、「死へと向かう生」と見なすことがしばしばあると思う。実際、初芝は、自身を死に行く存在として捉え、そのことに慄いていた。)そして、乾は、生き続ける初芝と共に在りたいと願っている(たとえ彼の苦しみを背負うことはできないとしても)。
もちろん、乾の中にある種の自己満足を見ることもできるだろう。彼自身そうした要素があることを否定しない。だが、私は、初芝と乾の関係に、人と人の関係の脆さを知りつつ、それでも人と人との絆の内に希望を見出そうとする著者の姿勢を感じる。
高校教師の初芝公平は、大学四回の夏に高校時代からの親友だった阿岸に強姦され、そのせいでHIVに感染してしまう。
そのことで恋人にも別れを告げられ、病状も進行する中、後輩教師の乾武則だけが、そんな初芝の心のよりどころとなって行くのだが・・・男に犯されたという恐怖から、なかなか乾の好意も素直に受け取ることが出来ないでいる初芝。
しかしどんなに足蹴にされても、乾は初芝と一緒に生きてゆきたいという気持ちをぶつけ続ける。
私はこの物語を読んでいて何に一番心を動かされたかと言うと、自暴自棄になった初芝が漏らした言葉である
「生・・・きるのが怖い」
であった。
普通こういう場合は『死ぬのが怖い』と言わないだろうか。
この言葉を見たときに、木原音瀬という人の死生観を垣間見た気がして、ちょっと胸を衝かれる思いがした。
人の死に対する恐怖というのは、死に至るまでの肉体的な苦痛と、死んだ後に自分という存在が消え去ってしまうことに対する喪失感の2種類がある。
普通に生活していれば死に対する肉体的な恐怖は、そうそうないため、漠然と死んだ後の事を考えて少し寂しくなってみたりする。
しかし期限付きの人生を送らなければいけない場合・・・その先よりも死に向かう過程で自分が蝕まれてゆく痛みをダイレクトに受け止めなければならない。
だからこその「生きるのが怖い」なんだろうし、この言葉を選んだ木原さんが、あまりにも鋭すぎて(良い意味で)恐ろしいなと思った。
その証拠に初芝は薬を勝手に飲まなくなり、死んでしまってもいいと思ったりする。
死への感じ方の違いに差があるのは、考えれば分かることなのかも知れないが、それをちゃんと噛み砕いて物語に投下できる木原音瀬の技量に感服した。
そしてあまり詳しくは書かれていなかったけれども、初芝の親子関係は良好ではなかったのでは、と邪推。
だって肉親にこんな重大な事を話せないなんて、そんな親子関係ってあるだろうか?
しかし数年後の2人の様子を読みながら、ああ乾は初芝にとって(精神的な意味での)家族になったんだなと思い、少しほっとした。
家族にも打ち明けず独りで死んで行こうとしていた初芝が、乾が傍にいないだけで寂しいと思えるくらいに心安らかになっている・・・出来ればそこへ至るまでの一山二山も読んでみたいところである。
ちなみに『リベット』というタイトルについてだが、なかなかに意味深である。
「鋲」の一種であるリベット。
人と人を繋ぐ・・・といった意味合いなのかと単純に思ったが、本当のところは分からない。
ただリベットは他の鋲(ねじや釘)とは違い、半固定的な用途に適するもので安易な取り外しは不可。
そう考えると、もう離れることのない2人を表すのにはぴったりのタイトルなのかな・・・と、ついしんみりしてしまった。
重い話でしたが、良い話でした。
なかなか心を開かない初芝と、遠慮しないで自分を頼って欲しい乾。
病気がHIVですからね、この二人の関係にどうしてもタイムリミット的な焦りを感じてしまいます。
恋愛に関してはすごく純粋なので、それだけに二人がかわいそう。
とても細かい気づかいが必要な初芝に、献身的に尽くす乾。
心を閉ざす事で強い人間性を作ろうとしている初芝が痛々しいです。
そして、乾の忍耐強さはすごいです。
初芝の心情になれば、「普通の恋人」がどれだけ羨ましいか…本当につらいです。
最後に表紙カバーを取っていただくと、二人のその後が読めます。
このサプライズ、とってもいいですね。
今回は「泣ける」の他に「ほのぼの」とか「暖かい」も入れておきます(笑)
本当に作者さんの特色が出ている作品ですね。
エロいシーンなんて全くない。
そこがいいかな。
よくある、金持ちでもカッコイイでもなくごく普通。
二人とも全然普通のサラリーマンで、冴えないとか書かれてるくらい平凡。
二人ともノンケ。
なのに恋愛しちゃう。
こういう作品があると、本当にBLっていいなぁと思ってしまう私。
恋愛に男も女も大差ないし、この作品では片方の人が最初は結婚しているんです。
でも女と恋愛や結婚したからと言って幸せとは限らないでしょ?
男同士なんて弊害ばかりで大変なのに、気持ちは止められない。
好きになったら仕方ない、って思う瞬間なんですよね~~
そこが私がBL止められない理由です。
誰にも話せない。親にも友人にも恋人にも。
そんな秘密を抱えて毎日を送っていた初芝。彼の秘密とは自身がエイズにかかっていると言うことだった。病の辛さと誰にも言えない息苦しさが常に付き纏う。そして自分はいつか近い未来死ぬかもしれないと言う恐怖が。それでも、初芝は精一杯明るく振る舞っていた。そんな時、職場の後輩、乾に病気の事を感づかれて…?!
その後、乾(ゲイ)は初芝(ノンケ)の相談相手みたいになり初芝を次第に好きになる乾。そこに初芝の彼女も絡んできます。
もう胸が痛い。初芝を想う乾の気持ちが切な過ぎて、深過ぎて…エイズを受け入れ、病気等のせいで苛々する感情を初芝が乾に当たっても、殴っても全身で受け止めて。大丈夫だからと。そして逃げるなと。
突き刺さりました…泣きました。初芝にあの言葉を言わせた乾は凄い。そんなお話を書ける木原さんはもっと凄い!!
書き下ろし作品も一歩恋人同士に近づけたふたりが見れて、ほんわか切ない感じで良かったですよ☆
よく行くBLのレビューブログがあるんですが、そこでめったにない『地雷』と評価されてたこの作品、おそるおそる──いや、ワクワクしながら読みはじめました。木原音瀬さんフリークの私なら何がきても大丈夫だという自信があったのw
正直、確かにBLとしては地雷かもしれないと思いました。
萌えにくい。いや、萌えることに罪悪感を覚えるストーリーだ。
けど、面白かった。
読むあいだずっと、重苦しくて、胸のなかに石が詰まったような気分だった。
主人公はノンケです。優しい恋人もいる。そして、その主人公に惚れてるゲイの同僚の後輩がいる。
ある問題により、恋人にふられる。でもゲイの後輩だけは主人公を見捨てない。でも主人公はその後輩に恋はできない。なぜならノンケだから。
最近読むBLでは、ノンケは簡単に壁をこえてゲイになっちゃいますが、普通は無理だよね。そのリアルさが、吐き気がしそうなほど苦しかった。後輩に惚れたら楽になるだろう、主人公もそれは分かっているだろう……でも。
主人公が後輩の手を取るのも、最終的には消去法でしかないのだ。この結末には、安堵と、それ以上に焼けつくような心の痛みを感じた。
カバーをめくると、三年後の二人に出会えます。
シアワセだ。
でも、それ以上に皮肉さを感じた。あの問題がなかったら、絶対に結ばれることのなかったであろう二人。
木原さんが調合するこういう皮肉な毒に、私は惹かれている。