ぎが
木原音瀬・名倉和希・杉原理生によるオヤジ(受け)本第2弾の1冊目。
名倉氏による衝撃のお題「その1.主人公がハゲであること。その2.主人公が30歳以上であること。その3.脇キャラにパンチパーマかリーゼントを出すこと」に果敢に取り組む3名の(といっても名倉氏は言いだしっぺなわけだが)繰り出す作品のまさしく三者三様ぶりが楽しい。
木原氏の『ラブ&キャッチ』に対する出題者・名倉氏のコメントは「抱腹絶倒」。
ご本人もかなりノリノリで書いたことがうかがえる。
主人公を「パンチパーマのかつらをかぶるハゲオヤジ(48歳・ペット葬送会社社長)」に設定することでお題を華麗にクリアし、お相手となる23歳の若者(ハゲパンオヤジの部下で、男ばかり8人兄弟の世話焼き長男)の視点で、このオヤジが如何にいけていないかが微に入り細に入り語られる(なんといっても、社長のハゲは社員周知の事実なのに、社長だけは誰にも気づかれていないと思い込んでいる、というだけでおかしいではないか)。
今作は彼らが二人とも乗り気ではないにもかかわらず付き合う羽目になるまでの話(したがって当然Hなし)であり、木原氏の作品だけが未完である。
名倉氏の『黒い悪魔は天使のごとく』に対する出題者ご本人のコメントは「消化不良」。
とはいえ、主人公のビジュアル「ザビエルハゲ(頭頂部が薄い)のチビデブ」(35歳・不動産会社員)は相当思い切ったもの。
お相手は部屋探しに来た、ホストと見まがうようなきらびやかな容姿の黒ずくめの男(23歳・彼の身の上はある意味ポイントなので、ここでは明かさずにおく)。
ビジュアルにコンプレックスを抱えた主人公が訳もわからないまま若い男に身も心も翻弄され戸惑う姿は(Hの際にもさまざまなグッズがお目見えするので彼の戸惑いもごもっともだが)、意外にもBLのメインストリートを行っているように思える。
杉原氏の『夜には月を見上げて』に対する出題者・名倉氏のコメントは「しんみりセンシティブ」。
ご本人的にはかなりの難産だったよう(曰く、「自分に全く萌えがない状況でいかに己を奮い立たせるかの戦い」)だが、木原氏の「美青年が好きな杉原さんは、やはり美ハゲなのかしら?」という期待通りの作品と思われる。
主人公は「会社内での部署移動によるストレスで円形脱毛症になってしまった34歳」で、中途半端に残った髪がみっともないからとバリカンで刈り丸坊主で過ごしている。
お相手は主人公の中学・高校時代の友人(あるいはそれ以上の男?)の弟(28歳)で、同じビルに会社があることから15年ぶりに再会したもの。
元々は「気位の高い猫のような」主人公が心身弱り果てた状況での再会話だけに、コメディタッチの前2作と対照的に、ツルッパゲなのに笑いが一切ない特異な仕上がりになっている。