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namae wo yonde
2006年の本・・・文章が余り上手じゃないけど、推しの作家の初期作品を読んでみたかった。
ハッピーラブ、ハッピーエンドが基本だった頃の執筆。王道。
電子版には、挿絵が無い。(挿絵の評価が低いけど、電子版はないのでOK)
2005年リンクス掲載「名前を呼んで」
書き下ろし「ぎゅっと抱きしめて」
料理研究家の成島は、売れっ子なのに貧乏?
仕事の関係で小学校の同級生・鈴木と偶然再会する。
健気な成島に、鈴木は好意を寄せていく。
そこへ、お約束の当て馬の存在・・担当編集者の丸山。
初期の作品に、読んでホッとする内容が多いなら、他にも読んでみたい。
ちるちるさんで一本もレビューがなかった、この作品。
大好きな谷崎作品でしたが、けっこう長い間購入に悩んでおりました。(ノベルズだし)
攻め視点の一人称(俺)って、珍しいタイプですよね。
わたしは攻め視点好きなので、苦手な一人称でも大丈夫でした。
というか、こういう感じで進むならば一人称じゃないとダメかなーとも。
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攻めは、主に出版関係を扱うデザインオフィスに勤める鈴木、27歳。
大学時代にゲイと自覚した、遊び慣れているように見えて本気の恋愛にはヘタレワンコ系。
成島は、売れっ子料理研究家。
鈴木とは小学校の同級生で、元は資産家の息子。
いわゆる小動物系の外見で健気受け。
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父親が転勤族だったため何度も引越しを経験していた鈴木は、成島と偶然再会してもまったく覚えていない始末。
反面、成島は自分の一番キラキラしていた頃に知り合った鈴木のことを忘れてはいませんでした。
このふたりの温度の違いは、すぐに埋まっていきます。
成島は辛い過去があり、それが原因で人づきあいを苦手にしていたわけですが、上記の理由で鈴木相手ならば最初から扉を開けていましたし、鈴木は鈴木で数々の転校経験で人の中へ入っていくことに良い意味で躊躇がなかったので。
まあーもう、進むごとに成島の可愛さはわたしの中で増大しました。
売れっ子料理研究家といっても貧乏料理の研究家で、売れた今もボロボロのアパートに住み銭湯へ通い遊びもせず地味な生活をしている成島は、それだけでも堅実で真面目なのだと察されます。
これって一人称で鈴木が感じていることをわたしも感じているということで、この一人称は心地良いです。
だいたい本編自体は100ページちょいなのでくっつくのに時間はあまりかかっていないのですが、その後の書き下ろし部分で、成島のもの慣れない初々しさやら、同棲したいけどもしかして迷惑なのか?とグルグルする鈴木などが書かれていて退屈しません。
鈴木の事務所関係者も濃いーですし。
「慣れた時が飽きた時」という名言にはもう参りました、谷崎さん。
その濃いー関係者の中での良心は鈴木のボスの恋人である沖田なのですが、しかしこの人がやらかしてくれた一件でドーンとふたりが揺さぶられることに。
でも雨降って地固まるですね。
スピンオフがあったら絶対買っていただろうと思いますが、こちらの作品2006年のものなので無理でしょうねえ。
最後に、表紙の成島は可愛いし鈴木はカッコ良いのですが(まあそれでもツッコミたくなりますけど)、中の挿絵は首を傾げたくなる仕様。
この方は初見だったのですが、漫画家さん?なのですよね。
申し訳ないのですが、趣味の範囲で描かれているの?と聞きたくなりました。特に日常風景や後ろ姿、口絵。
出されている漫画のレビュー等にはそういう記述はないので、一枚絵に向かないのかもしれませんが。
ひたすら挿絵は残念でした。
27歳・元同級生の再会ラブ。
あとがきで『(自分にしては)とても可愛いお話』と言われていましたが、ホントに可愛かったです。可愛過ぎるくらいに。
いえ、私はこういうの好きなんですよ。大事なので強調します。こういう可愛いお話は大好きです。
成島(受)の背景からして決して軽くはないんですが、鈴木(攻)の一人称の語り口で進むので、実際以上にコミカルな印象を受けます。でもそれがよかったと思います。
ただ、鈴木がデザイン事務所勤務でそれこそ事務所に何日も泊まり込んで~の働きっぷりと、まるで社会人(しかも27歳)同志とは思えない初々しいラブがアンバランスと言えばそうですね。
これ、ラブに限って言えば高校生同士でもまったく違和感ないんじゃないだろうか。
その辺がダメな方はダメかもしれません。←社会人にはハッキリした社会人らしさを求めるタイプの方には向かないかな。私は問題ないどころかこのなんともいえない可愛さ・初々しさこそよかったんだけど。
私は所謂『お仕事BL』は非常に苦手なんですが、こちらは仕事はスゴイしてると伝わってくるのに、具体的な(ハッキリ言えばしつこい)仕事描写が多過ぎなくてさほどうるさいと感じなかったんですね。
個人的にそこが何より安心しました。ラブが仕事(描写)に埋もれてないんです。←この作家はお仕事描写を詰め込むのが好きなようなので。そこはホントに合いません。
しかし、相変わらず脇キャラクターがいちいち濃い。濃過ぎる。なんなんだコレは、と思ってしまうくらいみんなすごかった。
余談ですが、デザイン事務所の同僚というか先輩の真央さん、もう1ページ目から(というより1行目から)名前が出てるんですが、細かい説明が一切ないんですね。
それで、名前からして女性かな、でも台詞の口調は性別不明(男だと断定もできない)だなあとずっと『どっちだろう』と思ってましたが、結局表題作ではラストまでわからずじまいでした。
続編で、ようやく女性だとわかったんですが。続編は結構台詞が女性っぽくなってたかな。
あ、それとあらすじにも出て来る成島の担当編集者の丸山さんが・・・悪役・敵役か泥沼の三角関係か!?と思ってたらちょっと肩透かし。しかも、続編では単にいい人になってた。
イヤ、確かに私の好みでいうならその方がいいんですけどね~。
恋愛慣れしていない2人だからこそのホントにちょっとした気持ちのすれ違いや悩みを描いた、とても可愛くて初々しい(特にラブ面は)なんとも地味なストーリーです。
でも、冒頭にも書きましたが私はこういうの好きなんです。
私は、谷崎泉とはもう何から何まで徹底的にというくらい合いません。
そもそも『ガッツリお仕事もの』だとあきらかにわかる作品は、(『お仕事もの』が得意な作家だというのは重々承知の上で)個人的に読みたくないので避けてるんですが、それでも『お仕事もの』に当たる。ホントに、よっぽど好きなんでしょうね。
私が多少なりともいいと思ったのは、ほとんどがおそらくはこの作家にとって『恒例じゃないもの』だけでした。こちらのような可愛い系統やファンタジーです。
あとイラストですが・・・
絵柄は可愛くて結構好みではあるんですが、ちょっとぎこちないというか不安定な感じで挿絵としてはちょっと苦しい部分もあるかな。
キャラクターのイメージは合ってると思うし、決してキライではないんですけどね。