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nishi ogikubo miyama koshoten no kisho
本の世界に入るのが趣味な古書店主と、ボディーガードを頼まれた宅配員。BL未満で、二人の進展は雇用者と被雇用者の関係から友人に昇格するまで。ストーリーは軸になる目的が分からない。映像化すると映えそうな異世界描写を楽しそうに書いてるなあと思った。
基本は宅配員の一本木視点のお話。一本木は気になることを放っておけないらしく、自分から面倒事でも何でも突っ込んでいく。お節介とかお人好しとか、そういう感じで、対凛太郎になると流されてる印象にもなる。
古書店主の凛太郎はフランクで人懐っこくビビリ。一本木をボディーガードとして雇い敬語は不要と言いながら、自身は敬語で語尾に「っす」を付ける謎。でも一番分からないのは、人を雇ってまで危険かもしれない本の中に入る理由。
本の世界に入れる「奇書」を集めるのは、祖父のものを取り戻したいと語られている。だがその本の中に入るのは趣味と言う。友人でもない宅配員にそれなりの報酬を出し、ついてきてもらってまで遊びたい凛太郎に魅力を感じない。
その本のエピソードをなぞれば元の世界に戻れるとか、ゲーム性があるのは面白いと思う。異世界の生き物や景色、小物の描写も生き生きしていて読み応えがある。ただストーリーが……。
例えば何かを探してるとか、いろんな本の中に入らないといけない理由があれば、そこにストーリーの軸になる何かがあれば、楽しく読めたんじゃないかと思う。二人の関係の変化が軸になっているわけではないし、ただ趣味を満喫する日常を見せられても。
身も蓋もないが、こういう形で異世界を楽しみたいだけならVRで良いのでは、と思ってしまった。泥に襲われる危険を冒す、その危険に赤の他人をお金で巻き込む、そこに確固たる目的がないというのはちょっと。この内容で商業化OKなレーベルは信用できない。
表紙とタイトルはとても好き。
初読み作家さん。これが商業初作品なのかしら?
タイトルと扉絵に惹かれて(だって西荻の古書店だよ、帽子に和装に白髪だよ)購入。
いや「面白かったか?」と聞かれれば面白かったんですけれどもね。
ただ、これがいわゆる「BLなのか?」と聞かれれば「そうだよん」とは言いづらいんですよ。それは『エロなし』&『攻め受けなし』だからというだけじゃないと思うのですね。
穂村さんは著者紹介の部分に「メンズなかよしが好きです」と書かれていますが、私、読んでいて主人公の2人に『メンズ』という認識が持てなかったんですよ。
確かに、一本木は宅配ドライバーの、深山凛太郎は古書店店長という仕事を持った大人の男性です。でもね、読んだイメージは、小学校高学年からせいぜい15~16歳程度の『男の子』の様な感じなんです。男男しく(『おおしく』ではなく『おとこおとこしく』と読んでね)ないの。
もう、途中から脳内イメージを『少年期の終わり頃』に変えちゃって、そして読んだら、あらあら俄然面白くなったんです、このお話。
昔から本が大好きで友人がいない深山少年は、やはり本好きの祖父から『書かれている物語の中に入れる奇書』の存在を教えられ、奇書の中で遊ぶことを覚えます。彼は長じて古書店の店長となり奇書を集めてその物語の中に入ることを趣味としていますが、たまたまそれを知り、なおかつ危機から救ってくれた一本木という宅配ドライバーに「一緒に奇書の中に入って、自分を守ってくれること」を仕事として依頼します。そして、2人の本の中での冒険が始まります。
『異世界に行って戻ってくる。おまけにそれは本の中』というのは、本好きにとってはたまらないお話です。
これってちょっと、ナルニア国物語的な匂いのする展開ですよね。
あんなにスケールの大きなお話ではないのですけれどもね。あくまでも『匂い』。
入る本のお話のあらすじが明確に紹介されている訳ではないので、2人の冒険は印象的で美しい(あるいは恐ろしいとか気持ち悪い)光景が繰り広げられるだけなのも、理屈っぽくなくて好きです。
そしてね、2人が一緒の体験をすることで近づいていく感じが割と良いのですよ。
でもこれ「友達になる」のだと思うのね。恋ではない。
この「友達になる」に萌えを感じるかどうかが、このお話を楽しめるかどうかなんじゃないかと思います。
生きていくのにそれほど困っているわけではないけれど、寂しくて死ぬほどではないけれど、でも、一緒に喜びを分かち合う誰かが欲しいという気持ち。
そんな気持ちにグッときちゃう方は、たぶん面白く読めるのではないかな、と思います。私はグッときちゃったよ。