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nishi ogikubo miyama koshoten no kisho
初読み作家さん。これが商業初作品なのかしら?
タイトルと扉絵に惹かれて(だって西荻の古書店だよ、帽子に和装に白髪だよ)購入。
いや「面白かったか?」と聞かれれば面白かったんですけれどもね。
ただ、これがいわゆる「BLなのか?」と聞かれれば「そうだよん」とは言いづらいんですよ。それは『エロなし』&『攻め受けなし』だからというだけじゃないと思うのですね。
穂村さんは著者紹介の部分に「メンズなかよしが好きです」と書かれていますが、私、読んでいて主人公の2人に『メンズ』という認識が持てなかったんですよ。
確かに、一本木は宅配ドライバーの、深山凛太郎は古書店店長という仕事を持った大人の男性です。でもね、読んだイメージは、小学校高学年からせいぜい15~16歳程度の『男の子』の様な感じなんです。男男しく(『おおしく』ではなく『おとこおとこしく』と読んでね)ないの。
もう、途中から脳内イメージを『少年期の終わり頃』に変えちゃって、そして読んだら、あらあら俄然面白くなったんです、このお話。
昔から本が大好きで友人がいない深山少年は、やはり本好きの祖父から『書かれている物語の中に入れる奇書』の存在を教えられ、奇書の中で遊ぶことを覚えます。彼は長じて古書店の店長となり奇書を集めてその物語の中に入ることを趣味としていますが、たまたまそれを知り、なおかつ危機から救ってくれた一本木という宅配ドライバーに「一緒に奇書の中に入って、自分を守ってくれること」を仕事として依頼します。そして、2人の本の中での冒険が始まります。
『異世界に行って戻ってくる。おまけにそれは本の中』というのは、本好きにとってはたまらないお話です。
これってちょっと、ナルニア国物語的な匂いのする展開ですよね。
あんなにスケールの大きなお話ではないのですけれどもね。あくまでも『匂い』。
入る本のお話のあらすじが明確に紹介されている訳ではないので、2人の冒険は印象的で美しい(あるいは恐ろしいとか気持ち悪い)光景が繰り広げられるだけなのも、理屈っぽくなくて好きです。
そしてね、2人が一緒の体験をすることで近づいていく感じが割と良いのですよ。
でもこれ「友達になる」のだと思うのね。恋ではない。
この「友達になる」に萌えを感じるかどうかが、このお話を楽しめるかどうかなんじゃないかと思います。
生きていくのにそれほど困っているわけではないけれど、寂しくて死ぬほどではないけれど、でも、一緒に喜びを分かち合う誰かが欲しいという気持ち。
そんな気持ちにグッときちゃう方は、たぶん面白く読めるのではないかな、と思います。私はグッときちゃったよ。