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作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
「帯刀家のお話はひょっとしてこれが最終話か?」と思っちゃいましたよ。
だって盛り上がったんだもん、ラストが。
いつにない盛り上がり方で……ちょっと涙ぐんでしうほど盛り上がってしまったんですもの。
秀が今までに起きた様々なエピソードに戻りながら世界との関わり方を回復する様が書かれたこの巻は『遺棄された子どもが自分の居場所を再構築する』という物語の終焉(シリーズは終わりじゃなくてまだ続きます)らしい感動的なラストシーンでした。
特に言葉が足りずにすれ違いを繰り返してきた秀と大河が、思っていることを必死に話そうとするくだりはもう他人事とは思えないくらい心を寄せちゃって「やっぱりちゃんと気持ちを話さないとだめだよ」と思っていたのに、ラストの大河から秀へ手渡されるもののくだりを読んで「あああああ、言語外コミュニケーションというものはある、確かにある!そしてそれが間違いない伝わり方をした場合、極上の幸せを感じることが出来るけど、それって奇跡に近いよね」と大興奮しました。
こんなシーンを紡ぎだしてくれた菅野さんに、とりあえずお礼を言いたい!
いやー、でも長かったですねぇ。
考えてみれば、秀や勇太の様な『酷い捨てられ方』をした子どもが、ちょっとやそっとで自分の外側を信じられるようになんかなる訳がないですよねぇ。自分の外側に牙を剥くことが出来た勇太は『自分VS外側』という意識があったから回復が早かったのだと思うんですけれど、秀はそもそも最初から諦めて生きてきているからなぁ……大河や勇太を始めとする『大切な人』に関わること以外は、起きること全てが『自分とは関係ない、車窓の景色』みたいなものだったなんて。
これ、秀が自分を守るために学習してきたことなのでしょう、きっと。
それが少しずつだけれど、取り払われていく。
秀の担当替えからの様々なエピソードも単なるコメディ要素ではなく、この巻に向けた大きな伏線だったのがよーく分かりました。
なかなかじれったい大河の言動も『何故そうなのか』が解明されました。
大河に対しては今まで何度「ここは突撃するところだろう!この意気地なしめ」と思ったことでしょうか。
でも、そうじゃなかったんだね。
確かに、抱いてなだめようとする男はダメ男だ。
ただそれを解りつつも、面倒くささからその方法を取っちゃう人ってそれなりの数でいると思うんですよ。我慢したあんたは偉い。本当に尊敬するよ。
世界はいつも人を傷つけます。
でも、角度を変えて見れば、それによって救われる人もいる。
人と関わらずに生きていくことは不可能に近いから、いつでも怖い。
その怖さを抱えて、愛する人と共に歩んでいくことに喜びを感じられること。
そのことを『幸せ』と言うのだと思いました。
機能不全家庭の被害に会った子どものお話を読んでしまう方には、是非お勧めしたいシリーズです。ただ、極めて長編、かつ、主人公が入れ代わり立ち代わりなので、結構読むのが大変です。
でも、頑張ってここまでたどり着いた。
読後感、感無量。
今回は、大河と秀の大人カップルのお話……
って、読んでる方にはよくわかると思うんですけど、この大人カップル、一番情緒的には子供だと思うので、そんなに大人な関係! というのはまったくなくて。(主に秀)
それでも月日は流れて、真弓と勇太は20歳の成人式を迎えた。
人よりゆっくり大人になっている秀がようやく周りに目を向け始めて、世界が“広がった”から、勇太が成人しても、思いの外、穏やかに受け入れている。
で、問題はですね。
前作からようやく秀が書いている小説がどのような話なのかが明かされつつあるのだけれど。
それはどうも、普通に読んだらとてつもなく救いようのない話のようで、そういうものは一部の人を引き付けるけれど、一部の人には厭われる。
それに秀が気づいた。
「自分の書いたものが人を傷つけるかもしれない」
ということに。
なんというか、大体、暗くて重いものを書く人って、自分もそういうものを読む人なので、自分の心を抉られることに喜びを見いだせるということがわかっていて書いているのだと思っているんですけど。
秀はそういう自覚もなく書いていた……のだとしたら、気づいたらショックだよね……
でも、新しく秀の担当についた久賀が秀に言ったことがすっごく痛くて。
「書いたものは人を傷つけます」
って。
そうなんだよ……そうなんだよね。
どんなものであれ、人を傷つけることを意図していないものでさえ、例えば事実を述べただけのはずの新聞記事でさえ、存在した瞬間に人を傷つける可能性が存在し得るわけです。
つらい……
つらいな……
ただそれを秀は知らなくて。
気づいてなくて。
見てなくて。
それと向かい合わされたのが今でよかった。
そして、それと向き合わせることができるようになったのは、仕事とプライベートを切り離すことができてからだっていうのが、またちょっとしんどいんですけど。
それはそれで、秀にとっては必要なプロセスなんだろうな……と思わせてくれる話でした。
もうずいぶん前から読み続けているシリーズなので。
秀の成長と、大河との関係性の変化が嬉しくもあり、寂しくもあり。
そして、この巻で終わったかと一瞬思って、心臓が止まりかけたんですけど、そうでなかったようで何よりです。
まだ、私がこのシリーズの最終回を読む覚悟ができていない……
次の作品が楽しみです。
シリーズ開始から21年目の18冊めだそうです。
子供たちが制服を脱いでから、本格的に大河ドラマ(大河と秀のドラマ)が始まったと言っていいですが、
ここへきて、本当にようやく、秀が目覚めます。
ここまで長かった。
かかった巻数的にも長かったけど、今回の本の中だけでも十分長かった。
自覚なく無理矢理大人にされてしまったせいで、自覚なくめんどくさい大人を拗らせていた二人でしたが、子ども達が成人して、仕事面でも担当編集者が代わって、ようやく自分の周りに気が付き始めた秀。
ぼんやりとした薄闇から、徐々に薄明の夜明けへと。
このシリーズ、最初の方の真弓と勇太の子ども達の話はもっとドラマチックでおもしろかったと思ったけど、大人編になってからは、秀の性格上、どうしても茫漠とした難解な展開に陥っていましたが、本当にようやく、秀が人間として覚醒してくれて、、、
長かった。
でも物語内の実際の時間としては5年余り。
そう考えると勇太も秀も、帯刀家ですごく成長したのだと感慨深いです。
このシリーズは、まだもうちょっと続くようですが、この巻が大河と秀の関係の話としてはクライマックスだったと思います。