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[花隠れ] →「花の檻」の順。
でも「花の檻」から読んでしまった。逆順から読むと、少し面白みが欠けました。
電子版は、挿絵なし、表紙絵だけ。
日本画作家の父が人妻と恋をして駆け落ち、そして生まれた子、一男二女。
流れ着いた嵯峨野で絵付けの仕事を始めた父に、千尋は見様見真似で作業を習い、専門的な基礎知識がないまま絵付けの仕事をしていた主人公千尋。
千尋は普段着が和服、美人で華奢、女子と間違われてしまう。
能楽師に収める衣装が最後の仕事で、それを納めたら借金を清算するために愛人になる約束を交わしていた。
一旦納めた衣装を、能楽師がやり直しを告げに来る。
東京出身の能楽師には、京都流の断りが理解できず、そしてそのまま居ついて。。
・・という流れで、天才型の能楽師と主人公千尋は、仕事がきっかけで出会い、惚れられて、連れ出されて、東京へ行く、能楽師は実は流派跡取り。
しかも10代でできちゃった子供までいた。
途中「花の檻」に登場する左近さんが、登場して、千尋にアドバイスをします。
落ち着いた様子で登場する左近さんが、「花の檻」では散々虐められて気の毒な目に会う。
京都のじめっとした夏の暑さや山風、風物、京ことばが、京都在住の著者だけにしっとりたくさん盛り込まれていて、自宅に居ながら京都に行ったつもりになれました。京都って、イイネー。
「花の檻」の続きではないけれど、ちょっとだけ登場キャラがかぶっている。
こちらの主人公は、染織家
といっても、ちゃんと大学へ行って勉強したわけでも、名の通った芸術家でもなく、ただ家の仕事として、友禅の仕事を父に習ってやってきただけなので、自分に自信がない。
そんな彼が、父を亡くし、妹たちを嫁入りさせるのに一生懸命になっているうちに、いつしかかさんだ借金の方に、愛人になることになってしまい、、、
設定からして、既に、ちょっとアレです。
この後、能楽師と恋に落ちるわけですが、
これもなんというか、
ちょっと、待て!
ヒヒジジイへの身売りがイヤだったからといって、
若くて、見目がよければ、レイプでもいいのか???
いつの時代の話やねん。
昼の帯ドラマかいな、
って、思わず、つっこみたくなるような展開で、、、
この、ある意味、浮世離れした千尋くんに、どこまで感情移入できるかが、このお話を楽しめるかどうかの分かれ目、かな?
なんか、こう、ドラマ的な、エロエロで、ヨロヨロで、ジットリした物を読みたーい!
って気分だと、結構盛り上がって読めます。
逆に、なんか、攻撃的な気分で、アグレッシブに生きるのだ!
みたいな気分だと、かなり、イラっと来るかも。
華藤さんなので、文章はとても綺麗、流麗。
和風でしっとりした、ある意味、女々しいお話を堪能したい時向け。
攻は天才能楽師・征司郎(独身・子持ち)
受は美貌の染色師・結月千尋(26歳)
千尋の方が1歳年上です。
千尋が突然の雨に困っていたところで傘を差し出されたのが、征司郎との出会いでした。
その時は名前も知りませんでしたが、後日、仕事で仕上げた染物の色が気に入らないと怒鳴り込んできたのが、彼でした。
恋情の赤、狂おしいほどの恋慕の色を出せ。
そう迫る征司郎と、その色が感覚的に理解できない千尋。
征司郎には伝統芸能の継承者としての苦悩や葛藤、能楽師としてのプライド、全てを捨て去り自由になりたいと思うのに出来ないという狂おしいものがあり、そういった屈折した感情と、千尋が身売り先のオヤジに迫られていたのを見て、強姦。
その後、千尋の所に居座ってしまいます。
千尋は京友禅の染色師ですが、自分に自信が全くありません。
仕事だけでなく、全てにおいて自己主張というものがないのです。
それは若くして両親を亡くし、妹2人を育て嫁がせるために自分を殺して生きてきたことと、仕事である染色師としての技術の不確かさからきています。
千尋は正式に染色を勉強したことはなく、亡き父の側で仕事を見て覚えたに過ぎません。
それも死別したことで学ぶべきことを学べないまま今に至っています。
技術がないために仕事が来なくなり、借金も返済できなくなった。
もともとの穏やかな性格に負い目が積み重なって、芯のない流されやすい性格が出来上がってしまったんですね。
征司郎は最初、この千尋の性格に苛立ちますが、優しさの現われでもあるということに気付いてからは、逆に征司郎の言動も優しく思いやりが見えてきます。
2人それぞれに様々な葛藤があって、最終的には幸せな2人。
乗り越えなければならないものは沢山あって、苦労もしそうだけれど。
それでも前に進むのだ、努力するのだ、という前向きに成長した2人です。
特に千尋の変化は良かったな~。
あ、同時収録の書き下ろしの方に出てくる征司郎の子供・悠司がいいですよ。
いい男に成長しそうです。
千尋の妹2人にはムカムカでしたが。
京言葉と着物と、伝統芸能。
清廉な色気が常に漂う作品でした。