【コミック部門】 14位
「この作品を読むまで本間アキラさんというマンガ家さんの存在を知りませんでした。
そもそも、この作品を知ったのも高評価レビュー作品に上がっていたからで、そうでもなかったら出会うことのないマンガ家さんだったんじゃないかと思います。
改めて過去作を見ても、今をときめくマンガ家さんのようにキラキラした絵でもなく、ちょっとばかり劇画チックな一昔前のイラスト。
(もちろん、私はそんな丁寧に描き込まれた男らしい絵が大好きです)
そして、ストーリーもその絵に見合ったシリアスなものばかり。
そんな中、突如として頭角を現した『兎オトコ虎オトコ』!
今までにないキュートなビジュアルのキャラ設定に、ほどよいギャグテイストを絡めつつ、従来のシリアス路線もしっかりおさえたストーリー展開。
ピックアップされることもないまま埋もれ切っていた逸材がいざ花開きました!
(ちょっと大袈裟?)
まず、私が興味を惹かれたのはそのタイトルです。
インパクト強いですよね!
兎オトコ?虎オトコ?それってどんなオトコ??
だいたいそのタイトルでイメージはつくものの、だからこそ余計に絵で動く兎オトコと虎オトコが見たくなる!
そして、その強烈なタイトルに負けない表紙イラスト。
一巻のリアルな虎+ヤクザ+白兎+白衣の天使?の意外すぎる取り合わせのかわいさもさることながら、中身のシリアスさと相反するノンキなもちつき風景の二巻。
もちをつくのが卯月で、ひっくり返すのがヤクザさんって役回りが二巻のイメージにピッタリでニヤけてしまいます。
さて、BL界に衝撃を与えた第一巻。
運悪く手負いのヤクザ(虎)に出会ってしまった外科医の卯月(兎)。
ビビりながらも見捨てることが出来ずに応急処置をしてしまったのが運のツキ。
卯月の健気(必死)な姿にナイチンゲールの面影を見たヤクザさんは一目ぼれ。
病院に潜入し卯月を見つけ出したあと、男だったと言う衝撃事実が判明するものの、背中に彫った虎と体のうずきは収まらない。
そんな中、ヤクザさんこと野浪の所属する昭和会の三代目がガンであることが発覚し、いやおうなく野浪も跡目争いに足を踏み入れていく...
そして、満を持しての第二巻。
病院から出て行くことを条件に体を差し出す卯月ですが、緊急オペの呼び出しがあり、仕方なく卯月を送り出す野浪。
でも、組の争いに卯月を巻き込みたくない野浪は距離を置くため病院を去り、本格的に跡目争いに身を投じていく。
表立って対抗してくる村上をうまくあしらい、裏で糸を引く谷繁にターゲットを絞るものの、心を許しきった卯月とのたわいない電話中に刺されてしまう。
そんな彼が運び込まれた病院は奇しくも卯月の勤める病院で、野浪の舎弟の古谷から詳しい事情を聞いた卯月は激しいショックを受ける。
どんなに自分が野浪に大事にされていたかを。
そして、それに全く気付けなかった自分とに...
一巻のニヤニヤするコメディータッチのお話に比べて、二巻はかなりシリアスな展開になっています。
でも、ラブ面では“猛アピールしてくる野波にビビる卯月”という一方通行な想いに変化が表れます。
とうとう兎も虎に恋しちゃうんですね。
しくしく泣いてる大きな虎を慰める白兎の図はこれまでのパターンでいくと笑うところなんですが、卯月のことに関してはめっぽう乙女な野波さんを見てきただけに、キュンとなるシーンでした。
卯月からの電話を待って携帯を睨みつけたり、いざかかってきたら自分からは切ろうとしなかったり、さらには質問責めにあってニヤけてみたり...
こんなかわいいヤクザのどこが虎なんだ?
肝が据わってる分、卯月の方が精神的に虎のような気もするけれど...
でも、そんな見た目と中身のアンバランスさも魅力の一つだったりします。
兎のようにただ弱いだけではなく、その小さな体で虎さんのことを守ろうとする。
そんな卯月の健気さも、野浪さんの一途な想いもかわいくて愛しく思える作品です。
巻数にして、最終巻を合わせても全三巻。
しかも読み切りが結構なページを取っているから、本編だけだと二巻で収まるようなお話なのに、焦らしに焦らして全三巻です!
でも、この3冊にギッシリ詰まった萌え要素は、間違いなく去年1番のヒットになりました。
ちなみに、ヤクザモノの魅力に気付かせてくれたのも、読まず嫌いのかわいい系受に開眼させてくれたのもこの作品でした。
一巻も二巻も憎いぐらいに続きが気になるところで終わっています。
すでに発売済のCDやショコラ本誌で完結編が出ていますが、度重なる焦らしプレイで免疫のついた単行本派の私は、さらなる焦らしプレイを味わおうとドMの覚悟で三巻の発売を心待ちにしている今日この頃です。」