【コミック部門】 6位
★小椋ムク先生のコメント
はじめましてこんにちは、小椋といいます。
みづいろ~を年間ランキングにいれて頂いたとのこと、どうも有り難うございます。
二年ほどの間にいろいろなところで描かせて頂いた漫画をまとめて頂き、そのぶん一番、心交社さんの担当さんをはじめたくさんの方にお世話になった本でしたので、読んで下さった方がいらっしゃるのだなあと、本当にとても嬉しいです。
拙さを感じられたところもたくさんあったことと思いますが、読んでくださって本当にどうも有り難うございました。
評者:mimita
ひらがなで表現された、やさしくやわらかく、はんなりとしたその表題
『みづいろとぴんく、それからだいだい。』
その表題を思い描くだけで、小椋ムク先生の世界が広がる
年若い青春のイメージだったら青、だけどそこに純粋・ピュアが入ってくるので、みづいろがしっくりくる。“好き”と言う気持ち、恥ずかしくも温かい心を表現した、ぴんく。放課後帰りみちの夕焼け、だいだい。
前作『センチメンタルガーデンラバー』も、ほっこりやわらかく心あたたまる作品でしたが、その作風にプラスして、胸キュンが盛りだくさんとくれば読まずにはいられない!!
そんな小椋ムク先生の3作目。
表題作『みずいろとぴんく、それからだいだい。』は、付き合い始めたばかりの高校バスケ部の先輩 瑞木(みずき)と、口下手すぎる後輩 百成(ももなり)との初Hのお話。
「俺たち付き合えばいいと思う」百成の口から発せられたこの言葉が、お互いマトモに交わした初めての会話。そして、「今日・・・家に来きませんか?」「・・・そういう・・意味、で・・・」の言葉を受け入れた先輩、瑞木。口数少ないから、お互い何考えてるのか分からなくて・・・。でも、自宅に着いた時、百成がカギを開ける後ろ姿が、手が震えて・・耳まで真っ赤で///// ベッドに入れば、どこか手馴れているので経験あるのかな?・・・なんて複雑に思えば、いつの間にか没頭しすぎて鼻血出してるわ!! そんな年若い高校生二人を、時にコミカルに、時に純粋に、時に高校生を思わせない艶っぽさを踏まえて描いてくださった小椋ムク先生。小さな一つ一つの描写に独特の温かさを感じさせる。これほど画の中から二人の肌のぬくもりが感じ取れるストーリー展開と作画は、さすが小椋先生といったところ。
その描写の一つが、百成がカギを開けるシーン。これから起こりうることを思うと、緊張で手が震えて、鍵穴にカギが入らない!! 恥ずかしさと緊張があいまって、耳まで真っ赤にする百成。それを見て自分も顔を赤くする瑞木。現実にありそうな、十代の、恋愛をし慣れていない男の子の描写が、絶妙に表現されています。カットをよく見ると、百成はカギを握る右手が震えるので、左手で右手首を押さえているんですよ(笑)きっと百成の耳を触ったら、火照りを通り越して、熱いんでしょうね!!(可愛いwww)だからこそ読んでるこちらまで胸がキュンキュンきてしまいます。かと思えば、鼻血のシーンでは、鼻ティッシュ詰めて今や中止!!なところ。バスケットボールを抱えて落ち込む姿をコミカルに4頭身で表現。大人だったら、シラケテおひらきでしょう!ムード大切だし。
でもそこはまだ、大人になり切れていない高校生「今日・・・する。すんだ。ぜったいにする」の懇願。もう必至なんですよ!!
それなのに、いざ絡みのシーンとなると大人びた艶っぽさが倍増/////
吐息が絡み合う・・・ 髪と髪が交差する・・・ 肌と肌が重なり一つになる。細部に分けることによって必死に求め合ってる切なさと二人の熱が全面に押し出される。
事を成した後の感極まった百成のセリフ
「した・・・か、た・・・ずっと」「好き、・・・だったから・・・」は、瑞木でなくてもやられた!!って感じです。胸キュンどころかもう撃沈です/////
そして小椋先生の底力といえるでしょう描かれた二種類の瞳。この瞳は作品全体を物語る。その澄んだ瞳が、作風を純粋なものにして行きます。作中始めの方に出てくる、百成が瑞木にキスしようとする時の瞳。伺うように揺れる・・・と描かれた瞳ですが、これほど“目が言葉を言う”瞳はないでしょう。嘘がない、汚れの無い輝く澄んだ瞳。もう一つの瞳は、まん丸の黒目に小さく描かれた星(白い丸抜き)が特徴的な瞳。この瞳はまさに無垢という言葉がピッタリ。この二種類の瞳が表題作だけでなく、他所・他作に見られる小椋ムク先生の独特な瞳。この瞳こそ、他のBL作品とは違う小椋ムク先生の世界をキレイに表現にしてくれる源ではないでしょうか。
さて表題作以外にも、しっとり大人な感じの『木曜日の憂鬱』や、園児にかこまれた保育士同士の恋愛のお話『せんせい、あのね』など他3話収録された一冊ですが、どれも共通していえるのは、登場人物が抱えている心の寂しさ。片思いだったり、恋愛に疲れていたり、人を好きになることに臆病になってたり・・・その寂しさを受け止めてくれる存在が現れるということ。いわゆるHAPPY END。ここまでだと、他のBL作品にもよくある話ですが、そこは小椋先生。ガッツリ受け止める感じではなく、“やさしく・・・”“やわらかく・・・”フワッと後ろから全てを温かく包み込み、受け止めてくれる感じ。これぞ小椋流!!
読者までその温かさで包んでくれる、幸せ感満載の小椋作品です。
今後も活躍期待大! まだ3作品目。今後は2・3冊続く続巻物も読んで見たいな。
エロでなくて艶っぽい 上質の毛布みたいな癒し系BL
できれば、香の高いホットドリンクと共に
夏なら 氷がきらめくサイダーがいいかな・・
是非とも一度は小椋ムク先生の世界をご堪能してみて下さい。