chill chill ちるちる


BLアワード2010


モフモフ病! おちんちん! すべてが規格外の面白さです。
全ての恋は病から 凪良ゆう
評者:クレタコさん
夏市の病は「24時間365日人肌に触りたい病」彼はゲイなので人肌は男性限定。
モフモフ病… 
なんともキテレツすぎるとんでも設定にいったいどうなることかと思いきや…
楽しく読めるけど、実は濃い中身。これが人気の秘密です!

「全ての恋は病から」【小説部門】 4位
えー、たかが風邪とかけまして~たかが恋と解きます、その心は「どちらもこじらせると厄介」

以上、『全ての恋は病から』の抜粋でございます。
本文は「たかが風邪、たかが恋。なのに、どちらもこじらせると厄介だ」
シンプルだけどなかなか上手い文章でこの作品の面白さを象徴してる気がします。
背筋伸ばして眉間に皺寄せて読むのでは無く、気軽にこの面白さと気持ち良く萌えツボを突いてくるマッサージに脳味噌を心地良くゆだねちゃって楽しんじゃう、そんな作品。
といっても内容は決して薄くは無い、ライト=薄いのでは無く分かりやすく読みやすいの意味で、内容としてはがっつり濃い。
最初に抜粋した一文もそうなんですが、小難しい言い回しや表現は一切使われて無く読みやすくスッと頭に入ってくるんだけど、薄くは無いんですよ、感情表現やストーリーの軸も根を張って立ってる。
軸がね、凄くしっかりしてるんですよ、揺らぎ無いというかピシッと一本通ってる、そこに肉付けをしていって丁寧に仕上げていて凪良さんの作品の魅力はそこが共通してる部分だと思う。

少し本作からは話逸れますが、凪良さんは色んなタイプの作品で色々な世界観を描いている作家さんで今回はコミカルなラブコメディな訳だけれど、それは回す度に違う模様を描く万華鏡の様で覗く度に回す度に新しい世界を見せてくれる。
自分が初めて読んだのは「花嫁はマリッジブルー」なんですが、以来新刊が出る度に今度はどんなカラーを見せてくれるんだろう?というワクワク感と期待があります。
そしてその期待は見事な程に裏切られない、毎回違うテーマやシチュに挑みながらもがっつり読み応え&面白い作品を出してくる。
故に読み続けている内に作品を超えて凪良さんという作家の魅力にどっぷりハマってしまう。
今作が初読みの方は凪良さんの他作品にも手を出してみるのを強くオススメ、色々な話が楽しめちゃいますよー。
ハズレが無い!どれもおもろい~、ザッツエンターテイメント!!

さて話戻って、今作はカップルになる夏市[攻]と椎名[受]はビジュアル的イメージからしてぱっきり人物像が対極的。
彼等が共通するのはお互いに奇病の持ち主であるという事だけ。
けれどこの唯一の共通点の奇病が彼等を引き合わせ結び付ける原因になるからおもろい。
夏市の病は「24時間365日人肌に触りたい病」彼はゲイなので人肌は男性限定。
過去に恋人は居たもののベタベタし過ぎて鬱陶しいという理由で振られて今は巨大クマキャラクターエイタのぬいぐるみ(ちゃんと雄なのだ!)をモフモフする事で何とか禁断症状を抑えとります。
椎名の病は「片づけられない症候群」とんでもない汚部屋の住人。
BLには汚部屋ジャンルと呼べるモノがありますが、汚部屋住人は皆、外面が凄く良くて仕事等は出来る男。
椎名もその例にもれないんですが、しかしながらその汚部屋の原因追及まで踏み込んだ作品はおそらく今まで無かったと思います。
椎名は躾に厳しい祖母に定規で叩かれながら育った為に、きちんと片づけようとするとトラウマで気を失います。
更に躾の反動で子供向エイタくんアイスをこよなく愛し、嫌いな物は食べない、風呂上がりにはタオルでうろつく駄目っぷり全開。
外では王子様タイプの女王様美人で部屋では汚部屋駄目男。
そしてこの設定が後で大きく生きてくるんですが、女性に大和撫子を求める椎名は今まで恋愛経験がなく童貞。エロに関しては無知で世間知らず。
隣人同士となった彼等はそれぞれの病を知り、夏市は部屋を片づける代りに椎名をモフモフさせてもらうという契約を結ぶ事になります。
夏市はゲイですが女王様美人系の椎名は好みから外れているので最初はビジネスライクに割り切った関係で始まります。
しかしこの椎名が妙に可愛い!この辺は夏市視点の描写が実に上手くてその駄目っぷりとギャップが夏市とシンクロして読み手にも椎名が可愛く思えてきちゃうんだなー、これが。
夏市の己に困惑して内心ジタバタしてる描写もおもろい。
好みのタイプでも無い筈の椎名に次第に夏市は可愛さを感じて行き、そして彼の性的知識無知につけ込んでエロい方面に持ち込みます。
そこで出てくるのが作品の裏テーマである魅惑ワード、おちんちん!!!
夏市は普段は椎名に尽くして尽くしまくるんですが、エロモード時はリードを取る側で、乳首とかイクとか椎名に恥ずかしい台詞を色々言わせます、そしてその最大恥ずかしい台詞が「おちんちん」ですよ!
ツン系の美人女王様がエロ時にはおちんちん言うんですよ、萌えます!これは夏市じゃなくても萌えます、魅惑の言葉それがおちんちん!
ちなみに数えてみたんですが作中でおちんちんは6回出て来ますよ、ビバおちんちん!!たまらーん、ばふー!(この文章でも6回言いました、お揃いー!)
ついでに夏市の鼻血ブーも数えてみたらこっちは4回、椎名の言う通りホント献血行けよ、夏市…。
なんだかんだでラブカップルに落ち着いた2人ですが、最後の最後に夏市お前それは変態過ぎるだろー!!という重病っぷりが発揮されます。
思わずこれは無いわーーと思ったんですが椎名はてらいもなくあっさりその変態っぷりを受け入れてて、その器の大きさっぷりは凄いの一言でなんかもうこの2人って最高に相性良いよ!
君達出会えて良かったよ!もうずうっとこのまま互いに病持ち同士で割れ鍋に綴じ蓋カップルでいっちゃえよーと思いましたとも!

繰り返しになっちゃうんですが気軽にスッと読めるけど、決して内容は薄く無いのです。
その辺が評価の高さにも通じてる気がします。
魅力的なメイン2人とコミカルな世界観と萌え要素をぎゅっぎゅっと詰め込んだバランスの良いラブコメディ。
椎名がお気に入りのエイタアイスを食べるかの如く美味しく楽しめる至福の一冊、です。

作品データ
作 品 名 : 全ての恋は病から
著   者 : 凪良ゆう イラスト : 車折まゆ
媒   体 : 小説 シリーズ : 花丸文庫(小説・白泉社)
出 版 社 : 白泉社 ISBN : 9784592876212
出 版 日 : 2010/03/18 価   格 : ¥610
紹介者プロフィール
クレタコ
孤高の独身アラフォー。BL歴は20年以上だけど、ずっと二次創作の描(書)き手で商業BL読者歴はというと5年と微妙な お年頃。
今は完全読み手専門なので言いたい事を萌えのおもむくままにわらわら書きなぐってますです。
好みはズバリ「ちょい不細工」!なかなか巡り会えないのが贅沢な悩み。ちょいブス受万歳ー!
基本黒髪短髪平凡地味健気受をこよなく愛してます、でもBLと付けばとりあえず何でも読む雑食派ですよん~もぐもぐごっくん。

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