chill chill ちるちる


BLアワード2010


あべ美幸を一躍スターダムに押し上げた会心の一作!
SUPER LOVERS 1 あべ美幸
評者:サガン。さん
2010年度の大ブレイク作品と言えば、あべ美幸の「SUPER LOVERS」ではないだろうか。
当初、ちるちるでは出足が鈍かったが、2巻が発売される頃には大フィーバー!
まだまだ物語は始まったばかりだが、これからの展開が気になって仕方がないシリーズ作が出現した。

「SUPER LOVERS 1」【コミック部門】 2位
2010年ブレイクした作家さんの1人といえるのが、あべ美幸さん。
そのあべさんの名を全国に拡げたのが「SUPER LOVERS」
これほどまで人気が出るとは正直思っていなかったのですが、読んでみるとなるほど納得。

あべさんといえば以前は冬水社でずっと描かれていたのですが。
その本の取扱店が限られているせいなのかどうなのか。
これまで世間的に知られているかどうかといえば一般BL出版社で活躍されている方々よりは知名度は低かったのではないかと思われます。
ここ数年は恋愛モノというよりも友情モノというか人間関係とか成長とかを描かれていてニアホモというか匂い系というか、BLからは少し離れ気味な印象を持っていたあべさん。

そんなあべさんの新作はBLレーベル(そんなに濃い印象はないけれど)からの出版だし、タイトルに「LOVERS」とついているからにはBLに間違いない!(笑)
そんな希望の元に読んでみたのですが、最初の印象としては表紙からも少し感じていたのですが「え、もしかして、まさかのショタ…?」
最初の出会いのシーンのあまりの幼さにちょっと驚いてしまいました。
あべさん、まさかの新境地かッ!?
この点に関しては、読み進めていくうちにその問題が回避されるくらいの年齢にはなったのですが。

物語はハルがレンと出会うことから始まる。
レンはハルの家の養子となることが決まっていてハルが面倒を見ることに。
レンはどこかワケアリの子供でなかなか懐かないが、少しずつハルが構い続けることによって変わっていき…。
そうして、素敵な同居生活に入っていくのかと思いきや、早くも1話目ラストにして大事件勃発。
大きな事故でハルはレンといた頃の記憶をなくし、レンとの約束も忘れてしまう。
それでもレンはその約束を果たすためにハルの前に再び現れるのだが…。

再会した最初はハルの方はわけがわからないといった感じでレンの扱いに困ったり。
それでも生来の世話焼きな部分とかもあってそれなりの関係を築いていって。
けれど、その裏側にあるハルの「寂しい」という感情をレンはよくよくわかっていて。
自分の感情とハルの感情が重なっていないことをよくよく知っていて。
それでも会いたくて来てしまって。
どこか真っ直ぐに自分の感情に素直に行動するレン。
それはあまり言葉になることはないけれど、真っ直ぐにハルに向かう気持ちで。
優しくされることを「コワイ」と思いつつも、傾いた気持ちを自分の中に抱えて。
ハルが望むように在ろうと努めて。
ハルが自分のために、としてくれることよりも、ハルが望むように在りたくて。
そのためには自分の中の痛みなんて少しも厭わなくて。
2人の距離は縮まるようでいて少しも縮まらない。
同じようでいて違う感情を持っているからなのか、同じ感情を持ちながらそれをうまく相手に対して表現出来ないからなのか。
見ているこちらとしてはそんな2人のやりとりにハラハラドキドキさせられて、最終的には「ハルのバカー!」とレンの味方になってしまうのだと思う。

自分の気持ちとの向き合い方というか感情のコントロールの仕方がレンの方が全然大人で。
相手に押しつけるような真似はしないし、むやみにそれを体現するでもない。
ただ想っているというか。
相手に少しも見返りを求めていないようなところが、もしかしたら幼少期の空白の時間と関係あるのでは?と思わせられる。
一方のハルの方は、自分の感情に振り回されているというか時に激情に駆られて暴言というかレンを傷付けるような言葉を吐き。
すぐに後悔はするもののそれを謝罪する機会も与えられないまま、レンに先回りをされるというようなことが続いたりして。
ある意味、学習能力がないんじゃないか?とさえ思わせられるし、いい大人なんだからさーと思わないでもない。
いずれにしてもレンが年相応よりも感情面でのセーブの仕方とかが大人であるのは確か。

レンが守る約束はいつもハルが言ったものばかり。
風呂場で呼ばれるまで待ったり。
桜が散るまで独り寝したり。
ハルを想っているからこそ自分の感情を押し殺しても、そう在りたいと願って。
2巻のラストでもハルの暴走がもたらした結果もとても印象的でした。
自分よりもハルの幸せを。
ハルの望みを。
そう思うからこその決断。
ある意味、訣別ともとれるような。
レンのハルを想う気持ちがいつだってひしひしと感じられてせつなくなってしまいます。
これからの2人が非常に気になるところ。
レンはともかく、ハルがこれからどう動くのか。
きっとこんなふうにさせてしまったことに一番ダメージを受けているのはハルで。
自分さえもっとうまく振る舞えばこうはならなかったという思いはあるはずで。
けれど、そうできなくて。
レンとの関係の修復にしろ恋愛的な決着にしろしばらく時間がかかるような気がしてなりません。
物語はまだまだ終わりそうにありませんね(笑)

それから。
この物語はCD化も決定していて。
これを書いてる時点ではまだ発売されていないのですが、それだけ展開がはやいということはそれだけあべさんに期待が集まっているということなのでしょうか。
そして、このキャストもある意味、新鮮でした。
ハル→森川智之さん レン→神谷浩史さん アキ→福山潤さん シマ→小野大輔さん
アキとシマはなんとなく想像もつくのですが、ハルもレンも普段、森川さん・神谷さんが演じられているキャラ層とはちょっと違う気がして。
それも含めてどんな物語になるのかとても楽しみな作品です。

作品データ
作 品 名 : SUPER LOVERS 1
著   者 : あべ美幸 イラスト : あべ美幸
媒   体 : コミック シリーズ : あすかコミックスCL-DX(コミ
出 版 社 : 角川書店 ISBN : 9784048545006
出 版 日 : 2010/07/30 価   格 : ¥588
紹介者プロフィール
サガン。
すっかり出戻りヲタ気分でいたら実はただ商業BLからナマモノに萌えが変わってただけで「そういえば同人読んでたじゃん!」と今頃気付いたもうすぐ腐歴20年の年季の入った腐女子。
好きなのは下剋上、年下攻、ひねくれ系、せつない系。あまあまイチャラブよりも歪んでたりちょっとイタイくらいの方が好き。
好き作家は和泉桂さん、川原つばささん、沖麻実也さん、南野ましろさんなど。
表向きには歴女もやってる声ヲタ。もうずっと前から三木さんは神!

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