自分自身が腐界に足を踏み込んで2年目という09年度は、ただ貪欲にあらゆるジャンルに首を突っ込んでは貪って苦手という部分をとっぱらった年でもあった。
ただはっきりしたのは、読んでいるときに自分を重ねてしまい、そこに協調できるかどうかが基準になっているということです。
なので、ぶっちゃけると心の病を患った経歴のある自分としては、病んだモノ系に強く心を惹かれたのでした。
09年度もっとも印象に残った作品としては、ハードカバーで新装発行された榎田尤利氏の魚住君シリーズ「夏の塩」と「夏の子供」が真っ先に挙げられます。
この文庫版は既に絶版で手に入らなかったので、待ちに待った発行だったのです。
そして評価と期待通りにBLに留めておくだけにはもったいないほどの文章と、何より自分がポイントとした主人公との一体感という部分で、魚住君になりきって、時には彼を支える友人になって、魚住君の代わりに泣いたのでした。
特に「夏の子供」の中のHIV感染症の少女さちのとの交流と別れを書いた章は涙なしでは読めなかった。
生と死についてリアルに体験してしまった魚住と、死と向き合いながら生きているさちのとの触れ合いは、死を乗り越えて生きる意味を見つける魚住の大きな転換場面であったと思います。
友人であった久留米と魚住の関係も長編であるだけに、ゆっくりとじわじわとだが、お互いを必要としているのに、しかし“しょせん一人なんだ”と冷めた見方をしていて決して甘くないのに何故かお互いの一部になっている部分が新鮮です。
しかし最終章で太一が学生になって魚住の生徒として登場した時、影に久留米の存在を知り、何とも心が温まるラストが待っていたことに更なる感動を覚えたのでした。
長編であるだけに、丁寧に丁寧に言葉と心が紡がれて、ここまで心に訴えかけるこの本の、大勢の人々に愛される理由がわかったような気がしました。
コミックでは表情や動きが少ない絵なのにあっと驚く感動ストーリーが秀逸であった遥々アルク氏の「猿喰山疑獄事件が
他小説では、個人的にBLで最初に読んで感動した作品が英田サキ氏の「エス」シリーズであったため、とうとうシリーズの完結となる椎葉の義兄・孤高の人篠塚が主人公の「最果ての空」が印象に残った本でありました。
09年度の傾向や特徴としてはBLに限らず萌えの部分として“擬人化”が若干ブームであったように思います。
そんな中とても目を惹いたのが恋煩シビト氏の作品でした。
「窓際の林檎ちゃん」でPC擬人化はじめ、ビールやらホテルやらを擬人化して見事にそれをBL的萌え目線でエロスを醸し出した技術に、一体この作家さんの頭の萌え構造はどうなっているのか見てみたい!と思わせるほどの見事さで、他の作品も見てみれば「愛のポルダーガイスト」など、ヤンデレやSMを淫靡に描く作家さんで注目でありました。
淫靡といえばルネッサンス吉田氏の「茜新地花散華」も哲学的に病んだエロスと独特な青年誌風作風で大変に注目の作家さんでした。
まだ腐歴が2年と浅く過去と比較することができないので09年度のBL界がどうであったのかは自分的にまったくもって不明なのです。
しかし例えばいつも通っている普通の書店のBLコーナーが以前より広がったこととか、BLから、乙女系、匂い系と範囲を広げてBLのくくりとして販促している書店の状態を見るにつけ、普通の少女漫画より少年漫画のくくりに近い存在としてかなり大きなウエイトを占めるジャンルなのだ、という状況を知らしめてくれたのではないでしょうか。
もうBLだからと、腐だからと、肩身を狭くする時代ではなくなったのだな~と書店に立ち寄るにつけ実感するのです。
日本の書店のコミック売上の半分(1/3くらい?)は腐界が引っ張っているのでは?と自負してもいいのではないかしら?
これからも感動と涙と萌えとエロスを見せてくれる作品を探してBL本を漁るのでしょう(汗、、)