大学生活の日常を通して聴覚障害をもつ男の子と普通の男の子の触れ合いが丁寧に描かれているお話です。
障害をもったことで生じる葛藤や不安、人を愛しいと思う気持ちが、柔らかい画も相まってスルッと心に響いてきます。
人物像はそれぞれ特徴的。攻めは聴覚障害だけど、とてもイケメンで家も裕福、頭もいい。
そして受けの男の子は幼いころに両親が離婚、そのどちらも新しい家庭を作り自分は家族には必要とされず、お祖父さんと2人暮らし且つ貧乏な生活。お金が必要だからバイトも掛け持ちしてる勤労少年。でも受けの男の子は純粋でとってもいい子!
難聴のせいで自分の殻に閉じこもりがちだった航平と元気で明るくてご飯を美味しそうに食べる太一の話。
健聴者と自分の差に諦めて1人で行動してた航平にまっすぐぶつかっていく太一がすごくよかったです。
確かにボーイズがラブしてるところが全然ないけどだからこその純粋で綺麗な物語なのかなと思いました。たぶん私が持ってる中で唯一のエロシーンがない漫画ですが全然見劣りしません!
個人的にうるっときたのは航平の「他の音が聞こえなくなっても太一の声だけなんではっきり聴こえるんだよ」という太一だけは特別な存在感が詰まってるセリフに心臓が痛くなりました。
前作が航平の恋愛感情の描写がメインだったのに対し、今作は航平への気持ちを自覚した太一の描写がいっぱい読めて本当に嬉しいです…何度も好きと伝えるシーンに涙を禁じえませんでした。
今作では、やりたい事を見つけるために大学に進学していた太一に転機が訪れます。
太一も相変わらず真直ぐでキラッキラしてカッコイイし、航平も太一のことがすごく好きなのが分かるし、もうこの二人の物語をずっと読んでいたいです。
航平に出会うことで太一も変わって、航平も太一に出会って成長しています。お互いに無二の存在で、相手のことを大切に思うからこそ迷ってしまうのが切ない!
この巻では千葉さんと太一の関係に進展があります。
自分にばかり厳しく口うるさいとしか思っていなかった千葉さんの指導が、実は広く深く考えてのことだったと太一は気付きます。千葉さんへのリスペクトや憧れが芽生えそうな気配です。敏感な航平はそれを早くも察知していて焦りをおぼえています。千葉さんも太一に一目おきはじめます。
あんなに素直でまっすぐでいい子に育った背景にはそんなエピソードがあったんだと思うと、どれだけおじいちゃんに愛されてきたのかが伝わってきて涙が溢れました。
聴こえないと言うことがメインのお話だったので萌え不足は否めませんでした。でも、それもこれもラストで二人がハッピーエンドを迎えるための大切な焦らしなんだと思うと続きが楽しみで仕方ないです。
原作が再現されています。
「聞こえないのは、お前のせいじゃないだろ!」の榎木さんの演技とそれを受けて泣いてしまう古川さんの演技が本当に素晴らしくて……この言葉でどれだけ航平くんは救われたのかなって思ったら涙が止まらなくなりました。
聞こえにくい世界の表現なんかも、まるで水の中にいるような、なんともいえない膜を張ったような不快感で、航平の生きている世界を少しだけ体験できたような気持ちになります。
演じる古川さんも、そんな航平の感じている苛立ちや違和感、周囲に対する自信のなさや諦め、といった様々な感情を、淡々とした声音の中にどっしりと存在感を持って演じていらっしゃり、イメージとぴったりでした。
感情起伏が少ない上に難聴という凄く難しい役だったとは思いますが太一への告白に込められた想いに胸が熱くなります。
榎木さんの耳にスッと入ってくる明瞭でハツラツとした声が、航平に「聞き取りやすい」と言われる太一の声にとても合っていました。
太一の真っ直ぐな言葉がが榎木さんの濁りの無いクリアな声に乗せられると、本当にひだまりの中にいるように心が温かくなります。
本編のラスト、雪空の下「好きだ、航平」と真っ直ぐに伝えるシーンはダイレクトに胸を揺さぶられました。
古川さんは複雑な感情の機微を表現するのがすごく上手な声優さんだなと思います。
航平は、太一とは正反対で感情を抑えて喋ることが多いのですが、その抑えた演技の中でも航平の優しさや痛みを繊細に表現していて、原作を読み込んで一つ一つの台詞を大切に紡いでくれているのが耳から伝わってきました。
声優さんやスタッフさんが原作の世界観をとても大切にしながらこのCDを制作してくれたのを音声を通して感じ、原作ファンとして感無量です。
発売日:2018年1月10日
販売会社:ポニーキャニオン
出演:多和田秀弥、小野寺晃良 他