通称:怪物ハニーシリーズ
『恋愛ルビの正しいふりかた』→『錆びた夜でも恋は囁く』→『はだける怪物』と、タイトルは違いますが、少しずつリンクしているシリーズものです。「少しずつリンクしている」というのがこのシリーズのキモな部分で、『錆びた~』を読むことで『恋愛ルビ~』の伏線が、そして『はだける~』を読むことで『錆びた~』の伏線が、それぞれ回収されていく、という手法。
またおげれつ先生は綺麗な絵柄と高い画力に支えられた濡れ場のエロさが魅力の一つの作家さまで、濃厚な濡れ場がこれまた萌えをたぎらせてくれます。きれいな絵柄で描かれる男子が、リアルにその辺にいそうな雰囲気を醸し出しているのもこれまた良し。
3作品ともシリアスな内容ですが、シリアスなだけではなく笑いも盛り込まれていて、そのバランスが素晴らしい作品です。
表題作『恋愛ルビの正しいふりかた』と、後半に『ほどける怪物』が収録されています。
『恋愛ルビの正しいふりかた』
主人公は美容師の弘。ある日、弘の勤める美容院に高校時代彼をからかってきた夏生が訪れ…。
復讐のために夏生をこっぴどくふってやろうと画策する弘ですが、とにかく夏生が可愛いんです。その可愛さに少しずつ心惹かれていく過程が丁寧な描写で綴られている。
視点は弘ですが、この作品で描かれているのは夏生の素の顔。
チャラいビジュアルでピアスもジャラジャラで、ついでに言うと料理もへたくそですが、それでも一生懸命に弘に尽くし健気に恋する男子で、とっても可愛いです。
『ほどける怪物』
リーマンの秀那×林田のお話。
酔った勢いでセフレになった彼ら。身体の関係から入った二人ですが、少しずつ恋愛感情を育てていく。
チャラいイケメンの秀那と、感情を表に出すことない林田という、全く正反対の彼らの恋のゆくえは。
この作品のキーポイントとなるのが林田の部屋に飾られている高校生の時の写真と、そして林田の体中に入ったピアス。そういった小道具の遣い方が非常にお上手で、話にぐっと引き込まれます。
二つの作品に共通しているのは、想いが通じあった後の濡れ場のエロさと甘さ。
甘々な彼らに気持ちがほっこりしつつ、非常にエロいセックスシーンがとっても美しいです。
主人公は飲食店で働く弓。彼の働く店に中学の時の同級生だった真山が訪れたことで再会し…。
弓は恋人がいますが、この恋人・カンちゃんからDVを受けている。どんなに暴力を振るわれてもカンちゃんに尽し続ける弓ですが、そんな弓を助けたいと願う真山との恋のゆくえを描いたお話。
カンちゃんのDVの描写がかなりえぐいです。暴力とか流血とかが苦手な方にはちょっときついかも。
けれど、カンちゃんと弓、そして真山の、過去の話も盛り込まれ、彼らが選択した答えに胸が詰まります。
そしてこの作品で、弓にDVしている恋人のカンちゃんが『恋愛ルビ~』に収録されている『ほどける怪物』の受けの林田。
DVしているカンちゃんの心の闇と、そして『ほどける~』でのあの林田がうまくつながらない。つながらないからこそ、彼の内面に、この作品を読んでぐぐっと惹かれるのです。
『恋愛ルビ~』に収録されている『ほどける怪物』の続編。
『ほどける~』で恋人同士になった彼らですが、秀那が大阪に転勤になり…。
物理的な距離ができたことですれ違いも生まれるのですが、二人の過去の話が盛り込まれより深いところまで話が展開します。
カンちゃんが、過去におこなっていたDV。
その理由。
その時の状況。
それを思い出すたびに、後悔と気持ちと、それに付随するように沸き上がる秀那への想い。
とにかくおげれつさんの描き方がお上手で、彼らの気持ちとか、想いとか、そういうものが手に取るように理解できる。それだけに読んでいて胸が痛くなります。