ちろこ
中陸先生の繊細なストーリー展開、心情描写は今作でも遺憾なく発揮されていました。ただ、萌えたかというと、前作と比較するとあまり萌える要素がなかったなと感じました。生徒2人の目線も通して見ていたのと違い、今回は木庭という人物が他人の憧れや好奇心といったフィルタを通さず、ありのまま浮かんで見え、そうして見た時に私にとってはあまり魅力を感じるキャラではなかったのが原因かな、と。由木は辛い過去を抱えたまま…
最後までおっとりした雰囲気は変わらず。中陸先生のこういう一貫した描き方は好きですね。下巻では響の従兄妹の存在感はかなり薄れていました。響のブランクを経てのコンクール出場、今後ピアノを続けていく覚悟があるのかという自問自答、そして、湊辺との関係はどうしていくのか、そんな響に対して湊辺はどう向き合うのか。それらがメインになっていて、高校生らしいストーリー展開でした。
才能がある者とない者の差…
ところどころ会話の脈絡がないように感じて「ん?」と躓く箇所がありました。というか誰が何のことを喋っているかが分かりにくい感じ。ただ、実際の会話ってこんな風に主語もなく唐突に始まったりするので、リアルとも言えるかもしれませんが。全体的な雰囲気は好みでした。
ピアノを通して繋がる関係。湊辺は完全に初心者、響はプロになりたいけれどいまいち思い切れない才能のある子。響の従兄妹がなかなかクセが強い…
◆今はかわいいバンビーノ(表題作)
外口の若干コミュ障っぽいけれど、恋した時は直球な性格がとても魅力的でした。直球といってもただがむしゃらに自分の気持ちをぶつけるわけではなく、好きだという気持ちは隠さず素直に伝えて、相手の反応は気長に待つという感じなんです。最初は戸惑って意識しないようにしていた茅が、段々意識せざるを得なくなっていく。自然な流れが素敵で、瑞々しく甘酸っぱい作品でした。
◆…
雰囲気もタッチもストーリーも好みで、濡れ場こそありませんが、まったく物足りなさを感じない作品でした。憧れ、好奇心、尊敬。これらは必ずしも恋愛感情とまったく異なるものだと言い切れもしないし、かといってイコール恋愛感情とも言えない、難しい感情ですよね。感情って自分が一番知っているはずなのに、それが恋なのかどうかは他人の方がよく知っていることもある。
生物教師である木庭を取り巻く、2人の生徒・…