尾上与一さんのレビュー一覧

セカンドクライ 小説

尾上与一  草間さかえ 

静かだけど温かな物語

作者様の作品を全て読んでいるわけではありませんが、私は今のところ「セカンドクライ」が一番好きです。

作中、大きな事件は特段無いんです。敢えて言うなら、攻めのお兄さんの死。
その一番大きな出来事は既に起こっており、お兄さんの葬儀から話が始まります。
攻めはお兄さんの遺言によって、一人の青年と同居生活をスタートさせます。
”普通の生活”を送るうちに、孤独だった二人の心が少しずつ開かれ、惹か…

1

プルメリアのころ。 小説

尾上与一   

命を乗せ、預かること。”ペア”という言葉の意味を考えさせられる

呼吸を整え、「読むぞ」という気合のようなものを入れてから読むことにしている
「1945シリーズ」。

直近で読んだ「蒼穹のローレライ」が一番深く深く胸に刺さっていたのですが、
またそちらとは違った意味で、この「プルメリアのころ。」も深く、忘れられない作品になりました。
こんな時間までまた読み耽ってしまった…

全く勇敢ではなく、とんでもなく怖がりで、臆病で、軍の中でバカにされまくる

6

プルメリアのころ。 小説

尾上与一   

千歳が愛おしい

1945シリーズ新装版、第一期完結おめでとう御座います。
それぞれの魅力あるシリーズ作品の中でも極まって個性的な千歳にまた会えて嬉しいです。

幾度となく読んでいるのに、彼の生い立ち、育った環境故に負った心の傷とその痛みが今回もなんら変わりなく胸に突き刺さり涙が出てきて止まりません。
カズイへ寄せる千歳の想いが切なく、哀れでもあり、そしてその一途さに胸がいっぱいになって彼に対する愛おしさが…

4

プルメリアのころ。 小説

尾上与一   

魂の片割れのような2人の深い絆と想いに胸が詰まる……

面白い切り口のお話でした。

艦上爆撃機の操縦員なのに超怖がりで、出撃中は泣き叫び、無事帰還すると嘔吐しまくる最弱メンタルの持ち主が主人公。そして、そんなオエオエ男とペアを組み何かと世話を焼く偵察員とのペアBLです。

ダメダメ操縦員と思いきや操縦に関して言えば天才的。素質はないけど才能がある。出撃中はワーワーギャーギャーするけど、操縦テクのすごさは一流です。
最初はこんな奴の後ろに乗れ…

4

『蒼穹のローレライ』1945シリーズコミコミスタジオ限定連作SSフェア「とりのはなし 1」 グッズ

二人の距離が縮まる前

『蒼穹のローレライ』コミコミさん特典小冊子のこちら。

三上視点、二人がラバウル基地で知り合って間もない頃のお話です。
三上が機体を整備するのを、いつも陰からこっそり見ている塁。
そんな塁に気付いて話しかけようとする度、さっと逃げられることを繰り返している三上は、ある策を練ってなんとか塁と話をしようとするのですがー

という内容です。

本音を言うと、心を預けた後の二人のささやかな…

0

蒼穹のローレライ 小説

尾上与一   

刺すような胸の痛み

8月15日、終戦の日。
意図したわけではないのですが、奇しくもこの日にこの一冊を読み切る形となり、悲しみと切なさで胸がいっぱいです。
このレビューもうまく言葉にできないかもしれないのですが、、それでも、素晴らしい作品を読むことができた感謝の気持ちを記しておきたいと思いました。

復刊した「1945シリーズ」、「天球儀の海」そして「碧のかたみ」は既読ですが、一番最初に購入したこの一冊だけはど…

2

花降る王子の婚礼 小説

尾上与一  yoco 

花々の香りに包まれた物語

そのタイトルにもあるとおり、花が印象的な作品です。甘く芳しい花々の香りと色合いとが、その文章の一行一行から鮮やかに溢れ出てくるような感覚を覚えました。
物語を追うごとに謎が解き明かされていく仕掛けも素晴らしく、読み終えた今ただただ余韻に浸っています。

前半のリディルの葛藤の描かれ方にはとても引き込まれました。
王に話しかけられても返事のできない、会話することのできないもどかしさ。相手を知…

0

天球儀の海 小説

尾上与一   

良すぎて言葉にならない…

「蒼穹のローレライ」で泣きすぎて、なかなか手が付けられなかったのだが、「碧のかたみ」も出ちゃったし…と思って恐々読む。

冒頭で、もうたまらなく好きなやつ…!と。
妄愛とでも言いましょうか。受けの盲信的な愛情。好きです。
ところが。読み進めているうちに、あれ?なに?めちゃくちゃ苦しい。。
とにかく、会話が無い。から、攻めの考えを押し計るしか無い。
これが、また、私好きなパターンで。いつ…

1

冬色ドロップス 小説

尾上与一  さがのひを 

表題作はとても面白くて好きだった

表題作の短編と、付き合った後の二人の話や過去話などが半分以上。本編といえる表題作はとても面白かったけど、後半半分以上はおまけのような話がいくつも入っているだけで、大きな動きも特になく、途中で飽きてしまった。

男子高校生の三角関係で、片思い相手の恋を応援する主人公という、切ない系のお話。
この主人公の豊樹が高校生とは思えないほど冷静で慎重で思慮深くなんでも受け止める包容力を持っていて、なんか…

0

碧のかたみ 小説

尾上与一   

南国の空の美しさ

ラバウルの五連星とも称されるエースパイロットの琴平恒が厚谷六郎とペアを組み複座の戦闘機月光で活躍する様が描かれる本作。
キャラ文庫で復刊されてからのシリーズ3冊目。(元はこれが2冊目)
「天球儀の海」の主役である琴平希のすぐ上の兄なので、希の話題はちらちら出てきますし、ラバウル航空隊の話なので「蒼穹のローレライ」の秋山整備員が出てきます。シリーズものはこの重なっている部分が楽しくもあります。

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