やなっこ
「よろこびは膝の上」のスピンオフ。康毅の兄・葵は本当に実の弟を好きだった。
その想いに苦しみ過ぎて、家を出てしまっていた。そしてその事を微塵も康毅に気付かせない。実に健気なんだけども。困ったちゃんでもある。自暴自棄になって転がり込んだ先は、当時母の部下だった相良さんの家。相良さんは葵の母に許可を得た上で、預かる事にしたが。何やかんやで13年、ロクに働かない葵の面倒を見ている。そう、このイケオジは…
最新作の「今日に還る」を読んで、些か茫然とした気持ちにもなったので。既刊を読み返しています。この頃は、まだ甘く。特にこの作品は丸っと表題作であるのと、加東セツコ先生の作品群の中では、よりオーソドックスな甘さのある作品で。ホッとさせてくれます。
そうは言っても。加東先生らしい、物言わぬ緊張感を湛えていて。科白の裏を何とか読もうとしてしまう。
仲の良い友達の兄で、大人しそうに見えた充さんは、外…
一種のホラーだとも思うのだ。掴みかけた「何か」はとても不確かで。その不穏さはとても心をざわつかせる。これを深夜読んでいて、その後とても夢見の悪い心地がして。嫌な気分で目が覚めた。ずっと息を詰めていた。
綴はお人好しで、仕事を押し付けられても断れない。それでいて、そんな自分に疲れている。疲弊している。そんな折、母の急逝を受けて、遠く離れた実家に帰る事になる。
母の葬儀を出したり、遺品の整理を…
加東セツコ先生の作品はいつも、食い足りない感というか、余韻を残して終わるショートストーリーが多い。多過ぎるので。ジダジタは妄想で補うしか無い。なので、既読作品にしても、何処かでこの続きを読んだ様な気がしていて。それが自分の妄想だったのかどうか。今となってはもぅ分からない。
◆ 表題作「蔓草の庭」
加東セツコ先生作品にしては比較的中編寄りの作品。
ジリジリと暑い夏休みのある日。義行の従兄弟…
加東セツコ先生の作品はいつも。
その端正な絵と共に、読み手側に何とも言い難い緊張感を強いる。
白と黒のハッキリとした稜線。
選び抜かれた無駄の無い台詞とモノローグ。
どこか覚めた様な、或いは虚ろな。多くを語る瞳。
表題作は巻末にあって。電子書籍では試し読み出来ない様になっている。
そして、表題作なのに。その他の作品と同じくらい、短編だ。短過ぎる。
けれどその中に、言いたい事は全て…