作家さん買いです。
まず最初に、他のレビュアーさんの感想を否定するためのレビューではない、という事だけを言わせてください。
あくまでも「個人」の感想のひとつとして受け取って頂ければ幸いです。
他のレビュアーさんとは違う感想になってしまうのですが、
文章に関しては、ドライな雰囲気は感じました。
感情や行動の表現は簡潔ではあるのですが、足りないと思う事はなかったです。「言葉」とその後の行動がちゃんとフォローしてくれている文章だと思いました。
視点の切り替わりに関しても、視点が切り替わる時にちゃんと区切りがあるので混乱はありませんでした。
ただ、さらりとBLを読みたいなと思う人には少し硬い文章かなという印象はありました。
個人的な感想なのですが、とある翻訳小説(ちるちるさんに掲載されている本です)を読んだ直後にこの本を読んだから「読みやすかった」のかもしれません。
以下、「萌」の評価になってしまった点について。
この本は受けさんがかっこ良すぎて、良い所全て受けさんが対処してしまうんですよね。
攻めさんの「スパダリ」要素を求めてしまうとちょっと「アレ?」と思ってしまうかもしれません。
攻めさんが起こすべきかっこいいシーンを受けさんがやってしまってるんですよね。
逆に言えば、「スパダリな受け」さんを求めている人にはおすすめしたいと思います。
後半は若干急ぎ足な所もありましたが、設定やキャラの「諜報」としての行動など、読み応えはあったと思います。
受けさんが諜報部になる為の訓練の過程や、攻めさんの奴隷解放の思想や攻めさんの「家族」の話、2人が「運命」だと感じた理由、奴隷解放の行動の末の自爆テロの背景をもう少し濃く描いて欲しいなという欲もありました。
だからこそ、攻めさんにはもっと「かっこよく」動いて欲しかったな、とも思いました。
こちらでのレビューは少し控えていたのですが、あと少し読みたい!という気持ちもあり、個人的には楽しめたので久しぶりにレビューさせて頂きました。
十人十色の読み方と感想のひとつとして受け取って頂けたら幸いです。
SATを舞台にした話です。
SATとは特殊急襲部隊(Special assault team)の事で、色んな作品に登場しますが、実際には内部事情は殆ど明らかにされてない部隊です。
普通に一般人がSATについて知っている事は、TVで放送された実弾訓練とテロ対策の映像の一部や、ニュースにもなった愛知長久手町立てこもり発砲事件でのSAT隊員の殉職などの「一部」の情報位だと思います。
作者さんがあとがきでも書いていましたが、「なんちゃってSAT」な展開がメインなのですが、この「なんちゃってSAT」とそこで班長を務める犬伏と橋埜、他のSAT隊員の動きは「なんちゃって」とは思えないくらいによかったです。
犬伏と橋埜は常に対等な立場であるからこそ、二人の会話は、ハイジャック犯制圧作戦直前の時までも言葉のキャッチボールが変化球なのに上手く掴めてそして投げられています。
この二人の対等な関係に、まず先に好きになりましたね。
そしてそのハイジャック犯制圧作戦で橋埜は跳弾で負傷してしまいます。
跳弾での負傷という所に、作者さんの橋埜に対する「SAT班長としての能力の高さ」を見た気がしました。
跳弾とはいえ負傷し、左手に麻痺が残ってしまい、橋埜はSATをやめると心の中で決めました。
このときから、犬伏と橋埜の相手への想いが変わってきたようにも思います。
と、SATやめると決めてからの橋埜の長期休暇で自宅でのんびり(?)している時に犬伏が訪ねてきます。待ってました。
ここで橋埜は最後だと犬伏を押し倒すんですよね。
橋埜は男性相手の経験は最後まではありません、けれども慣れたふりをして犬伏を押し倒すんですが、犬伏にはそれが全部見抜かれちゃっているんですよね。
見抜かれているからこその「こういうのは共同作業だからな」という犬伏の台詞と、その言葉に泣きそうになる橋埜が、可愛くて色っぽくてえろかったです!
表紙だけを見た感じではストイックな雰囲気がありますが、読んでみると以外にも二人は蜂蜜に砂糖溶かして漫才してるような、何とも言えない阿吽の呼吸なコンビなんですよね。
その後に犬伏が橋埜をホテルに連れ込んで、橋埜が全力疾走で逃走を企てたり、まさかの「わかめ酒」(わかめ知らない人は目の前の近代機器で検索しましょう)をしてみたり、バスルームでシャンパングラスを傾けながら「君の瞳に乾杯」って言ってみたり、もう萌えていいのか笑っていいのか!
この二人、どんな時でも本当に飽きなくて、そして可愛くて面白くてエロくて色っぽくて、そしてかっこよかったです!
しつこいようですが
「わかめ酒」と「君の瞳に乾杯」は、この本のなかでももっとも笑えr……印象的なシーンだと思いました。
女好きで女たらしがウッカリで花嫁になってしまうファンタジーです。
「花嫁」モノのファンタジーはいくつか読んできましたが、この作品は一風変わった感じがしたのは、受けのノアが、「女好き」「女たらし」の属性が遺伝子レベルで組み込まれているからでしょうか?
作品の雰囲気次第では、ノアは攻めキャラになってもおかしくない程の「たらし」です。
ですが、ウッカリと攻めのレオスの婚約者の姫に手を出してしまって運命は変わってしまいます。
ノアは攻めになってもおかしくない、と書きましたが、妃になってから初めてのエッチではとても色っぽい受けに開花します。
その後、後宮に入れられ、後宮に居る女性達に「女性らしい」攻撃されます。
そりゃそうですよね、「男」が妃になったのですから。嫉妬されます。
ですが、ノアの遺伝子レベルの「女好き」「女たらし」がここで上手い具合に発揮されます。
後宮の女性達全員を味方にしたシーンは見事でしたね。
受けには必要ないスキルだと思います、ですがそれがこの作品の面白さの一つかと思います。
その後のノアは、やはり「妃」らしいとは言えない数々の行動(行為と言う名の暴走とも言えるかと)を起こします。
そんなノアに振り回される事がないレオスの傲慢っぷりも見事ですが、何度かノアの手中にはまってしまう事も。
レオスの傲慢っぷりをも制御するノアの行動の数々は、ノアのこれまでの生き方の表れだと思います。
上からではなく、下からの目線を持つノアだからこそ、レオスも手中にし、時には実力行使で制御できるのかと思います。
そんな二人だからこそ互いが「最高のパートナー」と言えるのかと思いました。
レオスと対等の目線で、時には剣をも手にし、共に闘うノアの男前さは本当にかっこいいと思いました。
ですが、そのかっこよさが「受け」としての最高のスパイスなんですよね。
二人のエッチは……はい、エロかったです。
イラストも大胆な構図でエロかったです、ごちそうさまです。
このノアとレオスの駆け引きと、エロさのバランスはとても美味しかったです。
ここでご注意なのは、以下ネタばれになりますが、
ノアが妊娠できる身体になってしまう、という事です。
出産のシーンはありませんが、妊娠するかもと少し不安になるノアの心情や、身体的な変化が描かれています。
男性の身体で妊娠が苦手、という方はご注意ください。
私は、妊娠できる身体になってしまったノアが、色気振りまいて、エッチシーンでも感じまくっている所もあって、結構好きでした。
エピローグでレオス視点が描かれます。
このエピローグで、なぜ男のノアが妃に選ばれてしまったのかが判明するのですが、あえてエピローグで原点に戻るというのは、二人の今後の結びつきの強さを予想させ、そして良い具合に余韻を持たせてくれる良い構成だと思いました。
本当に素敵な、そして二人ともかっこいい男前の良い夫婦だと思いました。
後半は少し急ぎ足かな、と思いましたが、読みごたえもあり、爽快感も感じさせる、読んでいてとても爽快感のある「花嫁」モノだと思いました。
表紙の雰囲気から、キラッキラのイッチャイッチャのデレッデレな内容を想像していましたが、意外にも硬派な部分があり、驚きました。
女装をして王女の身代わりになる……というあらすじから、男の娘っぽい軽い内容かと思っていましたが、女装をしたマルスが立ち向かう様々な困難は意外にも政治的要素が絡んでいて、読んでいてとても興味深かったです。
その中でオスカーとマルスがにゃんにゃん(表現ではなく、そのままの意味で)する事によって、ギャップから非常に美味しく頂けました、有難うございます、幸せになりやがれ。
文庫一冊ですので、にゃんにゃん(表現ではなく以下略)しつつも、民主主義へと移り変わろうとする国政や、それに関わる人々、マルスの本来の姿やマルスの身の回りの人達の想いは、少しページ数が足りないかな、という印象は受けましたが、にゃんにゃん(表現ではなk)しつつも様々な困難に挑むという硬派な面と、オスカーとマルスのにゃんにゃん(以下略)の温度差の絶妙さはとてもよかったと思います。
二人の関係と、今後の国政の在り方は気になるので、是非続編を出して頂きたいですね!
にゃんにゃんは……本当に可愛かったです。可愛かったです!尻尾は正義ですね。
この作家さんの別の「職業」モノは読んだ事があり、その本で描かれた正義感にとても惹かれました。
そして、この本を手にとって読んでみたのですが、見事に騙されましたね。
刑事×極道という、BL小説ではよくある組み合わせですが、珍しいカップリングですね。
最初に二人が出会った時から、全てが始まっていたとは。
蜘蛛と蜘蛛が互いを共食いするような、そんな話でした。
最後の「事の発端」を知った時は、作家さんの名前を確認しなおした位に驚きました。
読み終わった後に思った言葉は「悪徳」でした。
悪徳といえば、マルキ・ド・サドを思い返す人もいるかもしれません。私はそうでした。
内容に共通点はないのですが、サディズムな表現も含まれているので、そういった所では共通するのかなとも思ったり。
BLでは本当に珍しい話の流れで、とても面白かったです。
そして奥泉視点のオナガグモ~では、蓮見のサディズムが、まったくの逆に見えた事にも驚きでした。
視点が違うだけで、こうも人間性が違って見えるのかと。
キャラクターが別のキャラクターになった訳ではありません。蓮見は蓮見、奥泉は奥泉、そこは変りないのです。けれども、真逆の存在に見えた事で、この奥泉視点の話はこの本には必要であり、蓮見の抱える想いを「理解」するのにも必要なんだな、と思いました。
このドラマ性と、二人の男の関係の描き方は本当に見事ですね。
他のレビュアーさんも書いていらっしゃいますが、この後の話も読んでみたいと思いました。
文庫版は未読です。
内容は、正統派バトルモノのファンタジーかな?と。
そこにBL要素が盛り込まれているんですが、最初にご注意を一つ。
以下ネタばれ
このシリーズは「椎名連×祐希苳也」とカップリング表記されていますが、
序盤~中盤にあるエロは、モブレや表記されているカプとは別のキャラとの関係ばかりです。
わたしは好きな方なんですが、凌辱表現が多いので苦手な方はご注意を。
事件を解決していくという展開なのですが、その事件がどれも「人の心のマイナス部分」を描いているので、内容はかなり重いです。
文章も固めで、事件やそれに関わるメインキャラ達の心がすり減らされて行く描写は、読んでいてとても痛々しいと思いました。
文庫版では最後まで完結しなかったようで、この本で文庫版の最終巻の話を読み終わった時は「ここで終わるのか!」と思わず声出しそうになったり。
興味を持たれた方は、文庫版ではなく、この愛蔵版を読むことをお勧めします。
どのキャラクターも「恋愛」感情に関しては結構歪んだ価値観抱いているようにも見えて、読んでいてじれったくも苛々することもありましたが、最後の最後で救われました。
屈折した関係の中で、「死」が真横にある展開が最初から最後まで描かれています。
とても重い内容ですが読み応えもあり、最後は一気にひっくり返る展開でとてもよかったと思います。
視点が変更したりと若干読みづらい所があったりもしますが、面白かったです。
できれば、続きやスピンオフで「椎名×苳也」のいちゃいちゃシーンを堪能したいなぁと思いました。
陸自×検事という、ちょっと変った?組み合わせの本です。
自衛官機密漏洩問題を扱った内容です。
この事件の描き方はBL小説では難しそうな内容に思えますが、実際に読んでみたらかなりわかりやすく、かつドラマ風に描かれているので、敷居はそれほど高くないと思います。
機密漏洩問題から、「同盟国(本文ではこの表記でしたのでこのままで)」からの圧力、そこから更に「他国」の介入、事件に関わる事となった検事である礼一と、自衛官である季一郎の抱く「防人」としての生き方と交わって行く姿。
それらがどれも分かりやすく、かつ読み手をぐいぐいと引きつける内容だと思いました。
(ヘリの緊急着陸のこぼれ話は、現時点では、アウェイだな!と少し苦笑いでしたが)
こういった「お仕事」ものが好きな人におすすめしたい本だと思いました。
色々と、本当「色々」と楽しませて頂きました。
現時点(2018年1月)で、この本を読むと、きっと発売当時とは違った感想を抱く方もいると思います。
過去の読んだ事ある方は、また「今」読み返えすと、違った目線で読めてくるかもしれません。
最初にこの本を手にとって、序盤まで読んで「これは花嫁モノで不倫か!?」と思ってしまったのですが、
そこから一気にストーリーにのみ込まれて行きました。
チベット風の世界観を緻密に描いてあり、食事、茶の香りまで伝わりそうな内容でした。
二人の出会いも、運命的であり、この世界観だからこその関係で、とても印象的な本ですね。
出会って、関係が進んでいって、政治的な面での動きがあり、そこから更に二人の関係が深まりながら、色と香りを伝えてくる世界観のコンビネーションは見事だと思いました。
それでいて、とても読みやすい文章でもあり、読み終わった後も、まだこの世界観に浸っています。
ストーリーのおおまかな展開は王道と言えば王道なのですが、その「王道」を読ませる力がある本だと思います。
政治的な問題のなかで、二人が交わす口づけのシーンはとても印象的で、私はそこがとても好きです。
最後に、第三者視点で締められているのですが、そこで少し切ない気持にもなったりしましたね。
ハッピーエンドだからこその「切なさ」だと思います。
この甘い「切なさ」を是非味わってください。
評価の高さから手に取ってみました。
ミステリ好きな事もあって、とても楽しめました。
小説を読んだ時に抱く感想は「面白かった」「感動した」「泣けた」などがありますが、
このシリーズを読み終わった後には「楽しかった」と「悔しかった」という感想も抱きました。
「楽しかった」という部分は、犯人が誰か、と推理する所です。
人の死を扱う内容で「楽しかった」という感想は不謹慎だと思うのですが、
やっぱり「楽しかった」ですね。
最初にミステリサスペンス要素の感想を書いてしまった理由は、
BL要素よりも先に事件が起こってしまった理由もありますが。
けれども、そのBL要素も、複雑な人間関係の中から、まるで絡まった細い糸を丁寧に解いていくように進展していく二組の関係はとても素敵だと思いました。
加害者が誰か、とある程度把握できた時点で、これから出る被害者と、その被害者が発見されるまで時間がある、と分かっていたからこそ、その事件の空白期間に二組の関係を繊細に、丁寧に描いてゆく構成もとても印象的でもあり、美しくも感じました。
この作品に出会えた事を、本当に感謝します。
最後に。
最初の被害者と、「祥」の手に残されていた「Murder of Number」というメッセージですが、
これが4巻までずっと言葉の鍵を解くことができずに悩み続けていたのですが、
最後の最後で判明したときは「くっそおお!」ってなってしまいました(笑)
最初に書いた「悔しかった」という感想は、このメッセージに対する感想です。
人外×人間もののお話です。
展開は王道といえば王道なのですが、一つ一つの過程に至るまでが丁寧に描かれており、
キャラや背景描写も読みやすく、こちらもとても丁寧に描かれているのでとても良かったです。
凌雲閣や浅草の描写から、時代は大正時代かな?と(上記の設定で「江戸時代それ以前」とされていたので)
この背景描写が、細かい所で凝っていて、けれどBL小説としての要素も崩さず、明治~大正時代がお好きな方にはおすすめできる作品だと思います。
朱月と真紘は人外(夜叉)とそれを狩る人間として、対立した関係なのですが、
夜叉としての正義感、夜叉討伐部隊の人間としての正義感が交わって行くまでの過程は良かったと思います。