明かされる事件の動機。
主犯から突きつけられた言葉に慶臣が見せる表情に胸が痛みます。前作に続き、人としての一線を越えてしまった主犯の確信犯的な描写が上手くて一種のホラー…
ここぞと言うときの橘兄弟の阿吽の呼吸も健在です。
三輪が抱えざるを得ない悔恨と罪悪感をどう着地させるかが今作の大きなテーマだったように思いますが、そこがとても良かった!決まりすぎていないところも慎仁らしくて微笑ましい。
終盤にかけて慶臣が紀人に見せる返応に、紀人から注がれた愛情が見事に花開いたような印象を覚えます。今回しばしば翳りを見せていた紀人の、晴れやかなお顔が見られて良かったです。
描き下ろしや特典でも慶臣が年齢相応の色々な表情を見せてくれて、精神的な回復を感じました。
慶臣、慎仁と三輪、紀人がそれぞれに見せた覚悟に胸がいっぱいになった完結編。
身勝手な大人たちに宗像兄弟が背負わされたものの大きさを思うと複雑ですが、4人のこれからの日々に幸多からんことを祈ります。
不穏な夢から世界観が凝縮された扉絵、一見穏やかに見える二人の日常に自然に紛れ込むニュース記事…と冒頭からぐっと作品世界へ引き込まれました。
慶臣の見る夢はいわば予知とテレパス…嫌でも卜部の血脈を感じさせられます。
今回慶臣と慎仁がかなり打ち解けていて嬉しいです。(この二人のバディが見られるとは…!)
病室でのシーン、「おはよ〜とかまたね〜とか」という慎仁の例示の直後に「久しぶり〜」という紀人の実演があって、似たもの同士だなと微笑ましく思いました。
仲良さげな二人の会話が気になってしまったり、基本的に他人に期待しなそうな紀人が、慶臣には求められたい自分を信じてほしいと思っているところにきゅんとします。
前作で自分の手の及ばないところで慶臣に傷を負わせてしまった紀人は慶臣を絶対に危険に近づけたくないし、慶臣は慶臣で蚊帳の外ではいられない。
焦る慶臣と捜査のために連絡の取れない紀人はすれ違い気味ですが、慶臣の視線とか紀人の表情の揺れにお互いへの気持ちをしっかりと感じます。
早く三輪を取り戻して、落ち着いてラブラブして欲しいなぁ。
上巻で役者は出揃い、事件が動くぞ…!という良いところで下巻に続きます。
2人の思いが溢れて結ばれる場面がもう本当に美しい。
モノローグは慶臣のだけれど、きっと紀人にとっても初めて遭遇する巨大感情だったことでしょう。
いつも余裕綽々な男の余裕無い顔最高でした。
一転、一時しんどい展開となりますが、絶望と諦めに呑まれそうになった時に紀人のことを思い出して生きる意思を見せる慶臣か尊かったです。
結局、呪いとは何だったのか、義臣に課された役割に意味はあったのか、三輪が一命を取り留めたのはどうしてか、等々明らかには提示されないのですが、色々と考察する余地が残されているのがむしろ好きです。
誰かと感想戦したいくらい。
紀人のストレートな告白も、描き下ろしの激重なモノローグもごちそう様です。
基本的に素直に感情表現しない2人のモノローグが読めるなんて、よくよく考えると美味しいポジションすぎますね。