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萌×2作品

PREMIUM レビューアー

女性ポッチさん

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シリアスと甘々のミックスが最高。

作家買い。
兼守さんの描かれた表紙が麗しくも可愛らしく、西野作品ではありますがエロ度は低い作品かな?と思いつつ手に取りました。タイトルの「勇者」「元魔王」というところからも推測できるように、今作品は魔王討伐を描いたファンタジーものです。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





勇者リカルドは、仲間たちとともに今まさに魔王討伐を果たそうとしていた。
「深淵の黒珠」と呼ばれるその魔王・イシュメルを斃すことに成功した彼らだが、実はイシュメルはかつて同じパーティーで魔物を斃していた仲間でもあった。

10年前、魔王を斃した際に魔王が吐き出した「魔王の種子」を吸い込んだことでイシュメルは新しい魔王になってしまったのだった。そして今、仲間であり、そしてほのかな恋心を抱いていたイシュメルを退治する敵として滅したリカルドだったがー。

というお話。

イシュメルという男性がすごくとてもカッコいいナイスガイでして。
彼は魔族ではありますが、とにかく心根の優しい人物として描かれています。彼が魔王になってしまった経緯とか、もうとにかく萌えツボ持っていかれてしまう素敵な男性なのです。

そんなイシュメルを何とか救いたいリカルドも。
彼は王道のスパダリさんです。ザ・スパダリ攻めです。彼もカッコいいです。
魔王を斃す勇者でありながら、彼のすべてはイシュメルのためにある。

ストーリーとしては、魔王になってしまったイシュメルを何とか助けたいリカルド、という展開なのですが、そこにですね、西野さんらしいエロがぶっこまれています。もうエロエロです。イシュメルの体内に残る「魔王の種子」が育っていかないようにするために…、というある意味王道の展開です。1冊のうち半分くらいは服着てないんじゃないかな?と思ってしまう濡れ場の多さです。

が、それでも、かつての仲間たちとのやり取りや、リカルドのイシュメルに向ける深い愛情がきちんと描かれているので、読んでいて心がほっこり温かくなります。敵同士でありながら、今なおお互いに想いあうリカルドとイシュメルの行く末は、というストーリーも面白く、一気に読んでしまいました。シリアスに振り切ろうと思えば振り切れるバックボーンでありながら、甘さと優しさが上手にミックスされた良作。

そして、兼守さんの描かれた挿絵がとにかく美しいです。
この作品の持つ世界観にぴったりで、萌え度は確実に上がりました。

優しくって、そして温かい。

作家買い。
犬飼さんの描く官能童話シリーズの最新刊ですが、個人的にこのシリーズ大好きでして。発売日を心待ちにしていました。シリーズものではありますがそれぞれ全く別のお話なので前作未読でも問題なく読めます。

未読かつ気になった方へご参考までに書きますと、順番としては「人魚姫の弟」(この作品だけフルール文庫さんから刊行されています)→「白雪姫の息子」→「シンデレラ王」→「赤ずきん王子」→「眠れる森の王」、で、今巻に続きます。

新刊となる今作品は、タイトルからも推測できるように「おやゆび姫」をオマージュした作品。




主人公はファンファリスタ国の王都の郊外で一人で家具屋を営むミルフェ。
ある日、彼は犬に襲われていた老婆を助ける。その老婆は自分は魔法使い(「魔女」と呼ばれるのはいやらしいです)だと言い、助けてくれたお礼に願い事を叶えてあげようとミルフェに持ちかける。初めは断るミルフェだったが、魔法使いになかば押し切られる形で彼女に伝えた望みは「話し相手が欲しい」というものだった。魔法使いはミルフェの願いをかなえるべく、「あるもの」をミルフェに渡してくれるがー。

というお話。

ミルフェはもともと一人暮らしだったわけではなく家族がいた。が、事故で一度に家族を失ってしまう。孤独に苛まれるミルフェは話し相手、もっと言うと同性の恋人が欲しいと願っていて。そんなミルフェの願いをかなえる形で、魔法使いはミルフェに一人の男性を与えてくれる。

ワインボトルくらいのサイズの、金髪の、見目麗しい青年を。
かつてこの国で放蕩の限りを尽くしたと言われる、100年前に実在した王子のグレインロード。

魔法使いに封印されてしまい、再びこの世に姿を現すことができるようになったグレインロード。
孤独で、恋人が欲しいと願っていたミルフェ。
一歩間違えると共依存の関係になりがちな二人ではあるのですが、お互い協力しあって生活し、そしてグレインロードが人間のサイズに戻れるように奮闘していくさまがほのぼのな雰囲気で紡がれていきます。

王子だったグレインロードは初め横柄でしてね。
ヤバ、この攻めさん好きになれないかもなあ、なんて思いつつ読み進めましたが、こんなにも立派な正統派の攻めさんになるとは…!と萌えが滾りました。かつて彼が放蕩王子だったのには理由があって、彼はその苦しみを、ミルフェと一緒に乗り越えていく。ムネアツです。

「おやゆび姫」ですから、カエルにさらわれたり、はたまたミルフェ以外の人物に求婚されたり、と身体の小さなグレインロードにはなかなかハードな旅が待っているわけですが、様々なハードルを乗り越えて恋人になる二人の姿に萌えが滾りました。

どちらか一方の身体が小さくなる、というストーリーは時々見かけます。
「〇くんの恋人」とか。
身体が小さくなってしまった恋人たち、という設定って、子どものころに好きだったお人形遊びと近い部分があって、ロマンがある。着せ替えたり、家を整えたり、自分の好きなように楽しめるわけですよ。

が、今巻はミルフェはグレインロードと出会い、彼が生活しやすいように工夫し、そして、元のサイズに戻れるように心を配る。子どものころに楽しんだお人形遊びと、好きな人に少しでも快適に過ごしてほしいと願うミルフェの想いがリンクして、楽しいし萌えるし、心がほっこりするしでめっちゃ良かった。

攻めさんの身体が小さい、ということで、そうです。
エチエチなことはできないわけですよ。どうなっちゃうのかな、と思いつつ読み進めましたが、最後は無事大団円。

犬飼さんの今シリーズは途中ドカンと痛い展開になることもままあるので最後の最後まで気を抜けませんでしたが、終始温かく優しい空気感に満ちた作品でした。

このほのぼのストーリーに色を付けるのが笠井画伯。
可愛い…。
美しい…。
エロ綺麗…。

と、今回も画伯は最高でした。もう表紙!
これはジャケ買いされる方多いでしょうね、うん。と思わざるを得ない可愛らしい絵柄でした。そして、この表紙の可愛さに見合った内容でもあります。


何もかもを持っているように見えて、その実何も持っていなかった裸の王子・グレインロード。その彼が、すべてを失った後で手に入れたものは、彼が欲しくて、望んでやまなかった見返りを求めない深く、温かな愛情。
読み始めた時、家族を失い孤独感に苛まれていたミルフェの恋の成就のお話なんだと。そう思いつつ読み始めましたが、今作品の主人公はグレインロードなんじゃないかな。

読後心がほっこり温かくなる、そんな優しい1冊でした。

可愛い。

初読みの作家さま。
表紙とあらすじに惹かれて手に取ってみました。

年下ワンコ攻めさんと、年上の優しいお兄さんの、子どものころからの長い一途な恋の物語です。




主人公は高校生の春。
母親の友人(既婚女性)が臨月を迎え、彼女の代わりに彼女の夫が切り盛りする定食屋さんでバイトを始めた。その定食屋さんの小学生の長男くん・大地に懐かれている。

春を一心に慕う大地を弟のように可愛がってきた春だが、中学生、そして高校生と成長していく大地をまぶしく思うようになりー。

というお話。

この作家さんの描き方なんでしょうかね。ちょっと言葉足らずっていうのかな。
読んでいて、「んん?」と思うところがちょびっとだけある。でも、読み進めていくうちにちょっとずつ繋がっていくので味がある展開になっているような気がします。

例えば、春がバイトをする定食屋さん。
「母の友人」、=そこの奥さん(臨月の女性)という話で始まるのに、大地に声をかけるときは「俺、サクのお兄ちゃん」と話しかける。ここを読んだだけではサクが誰なのか、サクと大地の関係は、というのは読み取れない。でも、読み進めていくとサクと大地は同い年の友人で、サクは春の妹だというのは分かってきます。この、ちょっとわかりづらいのが、「読みづらい」とはならないのがすごいなと思いました。

そして、大地の複雑な家庭環境も。
大地と彼の両親は、決して不仲ではありませんし大切にされてはいますが、彼の家庭環境はちょっと複雑。まだ子どもの大地が抱える孤独や葛藤に、春が気づき声をかけたことで大地は春に懐いていく、という展開なのですが、これが詳細な説明はないのにもかかわらずきちんと読み取れる描き方をされていて、そこが非常にツボに入りました。

BLとしての軸としては、かなり王道です。
王道ですが、彼らの内面の見せ方が非常にお上手で、いい意味でその王道さが生きている感じ。

当て馬くんとか、二人の家族とか。
シリアスに持っていこうと思えば持っていける展開ですが、二人だけに焦点を当てて描いているので、彼らの「恋心」がクローズアップされています。なので、彼らの相手を想う感情に読者も揺さぶられる。出会いは大地が小学生の時。時系列の長い二人の軌跡を描ていますが、中弛みせずテンポよく進むストーリーで、そこも良かった。

タイトルに使われている「芽ぐむ」。このワードがぴったり。
少しずつ恋心を育てていった二人の姿に萌えが滾ります。

初めは兄のように春を慕っていた大地が、欲情を含む恋心に変化していくさまがリアルです。そして、春の方も。弟のように思ってきた大地。そんな彼を、「恋」というベクトルで接していいのか。大人ゆえに悩む春の葛藤が良い。

とはいえ、シリアスになることはほぼほぼなく、絵柄も可愛いし、ストーリーもほのぼので、めっちゃ可愛らしいストーリーでした。この作家さまの違う作品も読んでみたいと思います。

宮緒節、炸裂!

2015年にプラチナ文庫さんから刊行された同名小説の新装版。
宮緒さん作品はほぼほぼ読んでいますが、旧版は未読。

ということでレビューを。旧版の方のレビューにもあらすじは書いてくださっていますが、一応こちらでも書こうと思います。





大学生の琳太郎が主人公。
21歳ではあるが、大学にストレートで入学した青年。ストレートで進学する人は18歳で入学になるが、彼が21歳で大学に入学したのは、彼が3歳の時に「神隠し」に遭い、3年という月日にわたり行方不明になっていたからでー。

というお話。

小さな村で絶大な権力と莫大な資産を持つ饗庭家の嫡男として生まれた琳太郎だが、神隠しにあったことで村人から陰口をたたかれるようになってしまう。そのため母方の祖父母に育てられ、今では村に帰ることは考えていなかった。

が、父が急逝。葬儀のために、村に帰郷した琳太郎だったが、そこで彼は父の後妻(琳太郎の実母は神隠しにあった際に事故死しています)の璃綾、そして彼女の連れ子の濫(年齢的に琳太郎の兄)と初めて出会うが。

宮緒節、炸裂!
という感じの作品でございます。

璃綾は、琳太郎には男にしか見えない。
そして、濫も、琳太郎よりも年上には見えない。
が、周囲の人たちには、璃綾は女性に、濫は年相応に見える、らしい。

琳太郎には、神隠しにあった時の記憶がうっすら残っていて、その時の描写が所々で描かれていますが、神隠しと璃綾には何やらつながりがあるのだろう、ということは読み手にはわかってきますが、そうすると濫の存在とは?という謎にもぶち当たる。

ストーリーとして、ファンタジー要素を盛り込みつつ宮緒さんらしい執着攻めとか描かれていてめっちゃ面白かった。

で。
ポイントは「義母攻め」っていう部分でしょうか。
宮緒さんらしい、と思うのは私だけではないはずだ。しかも喪服着とるー!お好きな方にはドンピシャで嵌りそうな萌えワードではないかと思われます。

璃綾という男性はですね、あの手この手で琳太郎を取り込もうとする。欲しいとなったら手段と時、場所を選ばないのはさすが宮緒さんの描く攻めさんか。しゅるりと巻き付いて、離さない。めっちゃ良い…!

璃綾も良かったのですが、個人的には濫がツボでした。
宮緒さん作品に攻めさん(だと思われる人物)が二人登場してるんですよ。これはもう複数攻めさんのお話にしてほしかった。個人的願望ですが。

挿絵を北沢さんが描かれていて、ごめんなさい、ワタクシ北沢さんの絵柄ってあんまり好きじゃないんですが、北沢さんの描くちょっとぬめっとした、絡みつくようなイラストが作品の世界観にぴったりでめっちゃ良かった。

義母攻め。
という、宮緒さんらしいバックボーンを孕む今作品ですが、ファンタジーものとしてもめちゃめちゃ読みごたえがあって面白かった。

タイトルがまた良い。
「泥沼から」。言い得て妙。
と、読後しみじみ思いました。

待望のコミカライズ版。

ドラマ、小説、アニメ。
様々な媒体で多くの腐女子を沼に叩き落した『魔道祖師』がコミックスになって帰ってきました。日本語訳のものを待ちわびていた方も多かったのではないでしょうか。

原作を書かれたのが中国の作家さまだからか?
はたまた中国版に倣ってなのか?
左開きの造りでした。

BL作品ではおなじみのB6サイズよりもちょっぴり大きいA5サイズ、そして全編フルカラー。
というぜいたくな造りではありますが、お値段は強気の1300円(税抜き)。
ちょっとお高くない…?とは思うものの、まあ買っちゃうよね。「魔道祖師」のコミカライズ版だもんね。

小説版では千二百さんが表紙を描かれていましたが、コミック版の方では落地成球さんが作画を担当されています。千二百さんの絵柄がとっても麗しかったのと作品のイメージがぴったりだったのでちょっぴり残念な気もしましたが、でも、落地成球さんの絵柄もとても麗しいです。

内容は、もちろんですが、小説版とほぼ同じ。
コミックス化されたことで若干端折られている部分もなくはないですがページの都合上仕方がないのかな。

妖魔や鬼を退治する修行者と呼ばれる人たちがいる。
かつて自身の能力を使い人々を守ってきた修行者の一人・魏無羨。
が、その後闇落ちし、極悪非道の限りを尽くし、そして自分が部下にしていた鬼に食い殺されたという。

そんな彼に救いを求め、魏無羨を生き返らせた莫玄羽という男の身体の中に入り込んでしまった魏無羨はー。

原作小説はかなり分量の多い作品なので、いったいどこまでコミカライズするつもりなのかと思ったりもしますが、小説はあまり読まないんです、という方にもハードルを下げてくださったコミカライズ版。落地成球さんの絵柄も美しいので、この作品の持つ美しい世界観がきちんと表現されていてめっちゃ萌える。

1巻は、莫玄羽の身体に入り込んだ魏無羨が、藍忘機と再会を果たし、そして舞天女の像のところに行きつくところまで、が描かれています。

小説とは異なりイラストで登場人物たちを追うことができるので、小説で挫折された方でも読めるんじゃないかな?と思います。小説は小説、コミックはコミック、でそれぞれ読み比べてみるのも楽しいと思います。個人的には小説が一番ドハマりしました。ということで小説版よりは低い評価になってしまって申し訳ない。この辺りは完全に読み手の好みによると思います。

とはいえ、魔道祖師のコミカライズ。読まずにはいられません。まだ1巻目、ということで今シリーズの入り口にしかすぎないので続きを早く読みたい。この先のストーリーは知ってはいますが、早く続きが読みたいです。

めっちゃ可愛い!

作家買い。
アルファだと思い込んでいたが、実はオメガだった伯爵家の子息。
オメガゆえに、伯爵である父から屋敷から追い出され僻地へと追いやられることになりー?

というあらすじを拝見して、これは薄幸受けちゃんのお話では?と思いつつ手に取った今巻。読後の感想はこの一言に尽きる。

最高。

めっちゃ面白かったー!




ワイズバーン伯爵家の四男・フィディ(17歳)が主人公。
伯爵家の子息という高貴な身分、そして見目麗しいご尊顔。そして有能な頭脳。
フィディは、自分はアルファで、成人した暁には父や兄たちを助けながら家を盛り立てていきたい。そんなビジョンを思い描きながら日々生活している。

が、学内に併設された機関での調査結果は、オメガだった。
由緒正しきワイズバーン家の子息がオメガ(兄たちはみんなアルファ)。これはもう、父親から捨てられるだろう。

そんな彼の予想通り、フィディは家族の誰とも顔を合わせないまま、ワイズバース家の領地の端の端の荒地にある屋敷へと追い出されてしまった。彼と一緒についてきてくれたのは、フィディが子どもの時から世話をしてくれているフレッドという名の従者だけだったー。

と、出だしはこんな調子。
あら。
あらあら。これは薄幸受けちゃんのお話なのでは?と思いつつ読み始めましたが。

早い段階で、めっちゃ爆笑。
なにこれ。
面白すぎるんですけど。

フィディという男の子はですね、箱入り息子なんですね。いろいろな意味で。伊達先生の言葉のチョイスが絶妙で、くすっとしてしまうシーンが多いんです。

フレッドの…
すごく、大きくて張りがあって、…
硬いんだな

何の描写だと思います?正解は腕。tnkではありません。
いやもう、もう…!腹筋崩壊。終始こんな感じで物語は進んでいくんです。

フレッドの方も、フィディの従者という立場ではありますが、彼には彼で過酷な過去がある。でも彼は、全身全霊で、フィディを愛し、守ろうとします。そして、その能力も持ち合わせている。どんなピンチもフレッドが助けに来てくれるという安心感。まさに印籠です。彼の存在が。

シリアス、かと思いきやコミカル、かと思いきや、純愛の萌えあり、家族愛あり、何でもてんこ盛りのごった煮なのに、これがまた絶妙なバランスでミックスされている。さすが伊達先生です。

序盤だけ読むと、オメガゆえに捨てられた少年、のお話なのに、結末はこう来るかー、という二転三転する展開でめっちゃ面白かった。ストーリーとしては王道といえる展開ではありますが、良い意味の王道さを孕んだ作品です。

挿絵はカワイさん。
カワイさんの描かれる優しい絵柄と、この作品の持つ世界観がぴったり合っていてそこも非常に良かったです。

フィディはオメガで、溺愛されている少年ですが、それでも彼は単に守られるだけの受けちゃんではありません。彼の賢さとか、芯の強さとか、そういったものでオメガという性に立ち向かっていく強さがある。箱入り息子ゆえに、いろいろ天然ちゃんではありますが、そこがまた彼の魅力の一つになっているところも良い。

色々な深い愛情に満ちた今作品。
読後心がほっこりと温かくなります。
面白さと萌えが詰まった良作でした。

優しい世界。

初読みの作家さまですが、電子でお試しの部分を読んだら、あら、まあまあ!という婆な感想と萌えを感じたのでそのままお買い上げしました。

温泉旅館を舞台に紡がれていく、幼馴染の2人の恋のお話。




主人公は外波山旅館の息子で跡取りの幸星。
彼には幼馴染がいる。帷だ。
幼馴染で、帷の父親が外波山旅館の従業員ということもあって、ずっと一緒に時間を過ごしてきた親友。

ある日、幸星に見合い話が持ち上がる。老舗旅館の跡取りとして、見合い、結婚、そして子をなしてほしいなー、という幸星の父ちゃん(現・外波山旅館の主人)から言われたことがきっかけだった。

が、その見合い話をきっかけに、帷と幸星の関係は変化することになって…?

というお話。

幼馴染。
子どもの時からの、片思い。
攻めさんは一途なワンコちゃん。

という、BLでは王道といえる萌えが描かれた作品。
うん。既視感ありありな展開ではあるんですよ。

が。
ナニコレ、めっちゃ萌えるー!
良い意味で、王道のそれが生きている、っていう感じ。ストーリー自体は王道なんだけれども、キャラがいい。

寡黙で、まじめで、一途に幸星を想い続けてきた帷。
明るく優しくて、ちょっと抜けたところはあれど裏表のない性格の幸星。
心の底から応援したくなる、そんな可愛い二人なのです。

そして、彼らを取り巻く周囲の人たちも。

幸星の両親。
幸星と帷の友人たち。
そして、幸星のお見合い相手と、彼女の恋人。
彼らがまたいい味出してるんです。優しい世界です。

男同士、とか、後継ぎが必要(子がなせない)、といった障害はこの作品ではほぼなく、とにかくほっこりと温かな雰囲気に満ちた作品。痛い展開のものは苦手、とか、ほのぼのBLが読みたい、という気分の時にはぴったりの1冊。

初読みの作家さまでしたが絵柄も好き。
なんかほのぼので良い。

で、タイトルも良いんだな。
春となり、ってなんだろ、と思ってましたが、彼らの温泉旅館のある場所とひっかけて、読み手によっていくらでも解釈できそうなワードなのもいいし、「くゆる恋」って言うのも作品のイメージにぴったりだなあと読後しみじみ思いました。

この作家さまの違う作品も読んでみたいと思います。

黒か白か 11 コミック

さちも 

切ない…

『黒か白か』の11巻目。

10巻の終盤でかなりシリアスな雰囲気で終わっていたこともあって、11巻はさぞかしシリアス展開なのでは…?と思いつつ手に取りました。

テレビ番組の収録のため、慎とシゲ、そして多々良さんと花崎くんの4人での収録に行くことに。いつもと同じ、ようにふるまう慎だったがー。

シリアス展開から始まると思いきや、意外や意外、11巻はコミカルな雰囲気でスタート。出だしはコミカルですが、慎の周囲の人たちには歪さも感じているようでその描写の仕方が秀逸です。

が、そこから前巻の流れを汲んだ形で、少しずつ慎とシゲの間には亀裂が入っていきます。慎を守りたかったシゲ、けれど、シゲを守るために慎が決めた「道」は…。

切ない…。めっちゃ切ない。
慎を大切に思う面々は、慎の変化に気づき助けたいと思いながらも、どうしていいのか迷い悩む。慎を、シゲを、守りたいがゆえにすれ違っていく二人の姿に思わず落涙しそうでした。

作中、芸能人ではなく、普通のリーマンになったシゲと慎の2人が登場します。
ゲイでも、誰の目があっても、手をつなぎ街中を歩く二人。

もし、芸能人じゃなかったら。
シゲを巻き込まなかったら。
自分とシゲのことだけを、考えていることができたなら。

そんな慎の想いが可哀想で、健気で、めっちゃ萌えた…。

慎・守り隊の面々もいますし、ぼちぼち幸せになってほしい。
ラスボス(&姪っ子ちゃん)に鉄槌が下ってほしいな、と外道な感想を抱きつつ、次巻を楽しみに待っていようと思います。

甘々。

西野先生は作家買いしている作家さまですが、さらに挿絵を描かれているのが奈良さん、ということであらすじも確認せずにお買い上げしました。

タイトルから「オメガバースもの」で、「3組のCPのお話」なのだと推測できますが、西野作品なので3CPがくんずほぐれつするエロエロなお話かな?とも思いつつ手に取りました。初めに書いてしまうと、3CPの受けさんたちは3兄弟。兄弟全員がオメガで、攻めさんたちは高校が同じという繋がりがあります。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





フラワーコーディネーターとして働く芹はオメガ。
最近番を持ったばかりの27歳の青年だ。オメガ、という性を持つ彼は、その特質性に違うことのない美貌を持つ青年。が、彼はオメガであるがゆえに両親から捨てられてしまったという過去も持つ。彼は3兄弟の長男だが、次男の巡、そして三男の真幌の2人もまたオメガ。3人で手を取り合って生きてきた。

そんな芹は、ある日花の配達で訪れた先でアルファに襲われてしまう。
が、そのアルファ・尚史は芹に真摯に謝罪。さらに彼から番になってほしいと頼まれてー?

と、ここまでは序盤。
番になった後の2人の様子が、今作品の軸になっています。出会いはほぼ強姦のような形で身体をつなげた二人が、その後、本物の番になっていく姿を描いたお話。

西野作品なので、しかも3CPが登場する作品なので、複数攻めさんが描かれているのか?
そうすると、芹の弟たちの番と関係を持ったりしちゃうのかなあ、などという不埒な予想をしながら読み進めましたが、いやいやいや。

めっちゃ純愛。

西野作品、かつオメガバースもので、こんなにほのぼの、ハートフルなお話になるとはちょっと想像していませんでした。攻めさんズがみんなナイスです。自分の番の受けさんを溺愛しております。3兄弟が登場していますが、弟くんたちのお話はほぼ書かれてません。今巻は長男の芹のお話がメインです。え、どうせなら3兄弟のお話がそれぞれ読みたかった…!と思いつつ読破しましたが、西野先生の描かれたあとがきを拝見すると、もしかしたらそれぞれ弟くんたちメインの作品を書いていただけるかも。めっちゃ読みたいです、西野先生。正座してお待ちしております。

芹の弟くんの2人もめっちゃ良い子たちで、三者三様、それぞれタイプが違って、でもみんないい子たちなので読んでいてまるで味変のように楽しめました。

攻めさんたちも。
攻めさんは攻めさんでそれぞれつながりがありますが、その部分に関しては詳細には書かれていません。スピンオフで、その辺りも書いていただきたいなと思いますが、攻めさんたちも「みんな違ってみんな良い」を地で行くタイプの異なるイケメンさんたちです。

芹は、途中ピンチになることもあって、西野作品らしいドシリアス展開になるかも…?と思わせるエピソードもありますが、最後の最後まで甘々でした。西野先生らしいドエロは健在ですが、痛い展開になることもなく二転三転する展開でもないので安心して読める作品かと思います。

奈良さんの挿絵は今回もビューティフォーです。麗しいです。

身体から始まった関係。
そこから、二人が本当の絆を紡いでいくお話でめちゃめちゃ甘かった。西野先生らしいドロンドロンのお話が読みたいと思われる方にはやや不向きか。でも、薄幸受けちゃんがスパダリに愛され幸せになるというストーリーが大好物なワタクシにはめっちゃ萌える1冊でした。弟たちのために自分を押し殺して生きてきた芹にはずっと幸せでいてほしいと願ってやみません。

芹のナイスな弟くんたちのお話も、楽しみに待っていようと思います。

色々な意味で、可愛い。

作家買い。
千葉さんはドシリアスなものからほのぼの可愛い系まで幅広く描かれる引き出しの多い作家さまですが、今作品はコミカル系。先生の描かれたあとがきによりますと今作品は「振り切ったラブコメ」にしたかったそうで、その先生の思い通りのわちゃわちゃな可愛らしいお話でした。

主人公くんたちはリーマン。千葉先生の描かれるリーマン、あるいはスーツ姿って絶品なので悶絶しつつ読み始じめました。クソほどカッコいいビジュのリーマンが眼福です。



有能なリーマン・湯浅は、新人の伊口の教育係を任されることに。
スカジャンで出勤してきたり、取引相手にもため口で話したり、湯浅は井口くんに「チャラチャラ男」というあだ名をつけるほど。

一方で、湯浅という人物は仕事はできる有能リーマンではあるものの、対人関係に疎く部下たちからも畏れられ一歩引かれられている存在。井口くんにも辛辣なセリフをバンバン言ってしまう。そして、ある日その井口くんから言い放たれたセリフは、「パパ(彼らの勤務する会社の社長)にパワハラを受けたと言っちゃおうかな?」というものでー?

出世欲の塊の湯浅さん、ピンチ。
そのピンチを切り抜けるために井口くんから提案されたのは、「10回ヤラせてくれたらパパには言わない」という提案だった。出世したい湯浅さんは、井口くんの口をふさぐために「10回セックスする」という要求を呑むがー。

描き方を間違えるとセクハラ、パワハラになりかねない題材。
このご時世、一歩間違えるとヤバいことになりそうなテーマを、上手にコミカルに描き切っています。ただ、そのテーマゆえに、もしかしたら好みが分かれる作品かもしれないな、とも思いました。

そしてもう一点。
湯浅さんの口調です。
千葉先生の「振り切ったラブコメ」を表現するためでしょうか、湯浅さんの口調がなんていうんでしょうかね、まるでさながら武士のよう、と言えばご理解いただけるでしょうか。

む?
とか、
貴様
とか、
ちょっと横柄な物言い、

などなど。

顔はいいのに、仕事もできるのに、口調がきつく横柄な言い方、というギャップを作りたかったというのは理解できるのですが、何というか、「時代に合ってない男性」という感じ。そこに引っかかる方もいるんじゃなかろうか。が、それを覆すのが湯浅さんの中身。中身はきちんと可愛いのでそのギャップがいい感じになっていきます。そのギャップを可愛いと思えるか否かでこの作品の評価も変わりそうな気がしました。

チャラ男、ならぬチャラチャラ男の伊口くんも。
彼が湯浅さんに本気で恋心を抱いていることは読者にはきちんと見えているので、彼らの恋の行方が気になって仕方ない。チャラ男、に見えてその実周囲の人に気が回るいい男なんだ、彼が。

周囲の人に気遣いができる男・伊口くんに触発されて、湯浅さんもまた他人に向ける感情をコントロールできるようになっていく。そして、「恋心」も「愛情」も、「本当に仕事ができる」という意味も、知っていく。
仕事ができる男・湯浅さんの成長物語でもあります。

「10回」という約束のもと身体を重ねてきた二人ですが、あと一回分残ってるんですよね。この「残り1回」に意味があるのか…。めちゃんこ可愛い彼らのその後も読んでみたいし、残り1回の行方も気になるし、湯浅さんの元カレ(と言っていいのか否かは悩みどころではあるが)との邂逅も見てみたいし、続編プリーズ。

千葉さんの描かれる超絶イケメンのリーマンも堪能できてまさに眼福な1冊。
萌えもイケメンさんもスーツも詰まった可愛らしい作品でした。