話自体は王道でありがちな展開だけど、他人から必要とされたいが為に自分を偽って生きることの痛々しさが細やかに表現されていて、とても共感しやすい。
そんな人間味溢れる眞白とは対比的に、大地の少女漫画顔負けの王子様っぷりは逆に掴みづらいところがある。熊谷さんのインタビューによると役作りにかなり苦戦したらしいが、「ひとつボタンの掛け違いで病む方向に行ってしまいそうな危うさ」という解釈とその演技が素晴らしい。
攻めと受けどちらも距離の近い会話感を出すのが上手い声優さんなので、甘々イチャイチャなエロシーンが聴き心地良くて最高にエロかった。ストレスフリーでリピートできる一枚。
もはやBLという枠を超えた芸術と言っても良いかもしれない。
街のざわめき、物売りの声、篠笛の音色。目を閉じると、江戸情緒と下町の厚い人情が織り込まれた風景が鮮やかに思い浮かんでくる。
色んな細部の音まで丁寧に作られたおかげで、様々な職業の町人の息遣いや生活感の温もりがすごく伝わってきて、まるで江戸に旅をしてるような気分が味わえる。
一番心打たれたのは声の芝居の素晴らしさ。声優さんは凄いんだな…って思わず呟いてしまったくらい。
無邪気にはしゃぐ天真爛漫な百樹も、淫らに乱れて甘く喘いで求める百樹も、そこに「生きてる」。壮馬くんの演技の切り替わりがとてつもなく自然。
樽助さんの卍兄さん、程よい気だるさが壮絶に色っぽい。垣間見える可愛らしいヘタレ感が更に色気を増幅させていく。
百樹の悲惨な過去が描かれた「或陰間一期」に始終心臓をえぐられっぱなしだった。
個人的に女性声優さんが幼少期を演じるBLCDが大の苦手だけど、この作品に関してはそんなことが全く気にならないくらい完成度が高い。特に遊佐さんの切ないモノローグは必聴。
『百と卍』で改めて実感したのは新垣斉藤コンビの相性の良さ。臨場感たっぷりの濡れ場は言うまでもなく、舟の上で喧嘩するシーンの掛け合いはこれぞ本領発揮!って感じ。フリートークで熱く語ってくださった二人の作品愛に感動。
いつまでも幸せな笑顔で寄り添う百と卍を見守っていたい物語、「声」と「音」が紡ぎ出す時間をたっぷりと堪能できて幸せ!
種族や階級、薬物、家族関係など色んな人間ドラマ要素が凝縮されている虫の世界。
ドキドキハラハラしながら聴き入ってしまうほど世界観もストーリーも完成度が高い。
やさぐれた攻めが受けの純粋な愛情に触れて、戸惑いつつも惹かれてしまい、人間(?)として成長していく更生物語の描写に、メイン二人の好演が更に説得力を持たせている。
特に心に刺さったのが筆談やモノローグがない会話シーンでの郁の演技。
映像や絵もなく文字もない状況においても、息遣いと母音だけでここまで表情の可愛さを出せる壮馬くんの表現力に感動。
音声しかないのに、郁の泣く顔も、焦る顔も、安堵する顔も、恐怖に怯える顔も、期待に輝く顔も、恥ずかしがる顔も、幸せそうに微笑む顔も、目の前に鮮やかに浮かんでくる。
口がきけない受けの設定といえば、『牛泥棒』でも思ったんだが、
ドラマCDで喋れない役って、実は叫びや泣きなど派手な演技よりも声優の力量が試されるのではないかと。