声を大にして言おう。
これはBLではない。
でもBLだということにしておいてほしい。
作家はらだの行く道が塞がれてしまう位なら、
BLというカテゴリーに居て、
このままのびのびと描いて、
その作品をずっと私達に読ませてほしい。
昨今のBL漫画家の中で、間違いなく突出した作家性を持っているはらださん。
独自の切り口で、人間の内面と性を大胆かつ奥深く描く描写は、ひたすらエキセントリックな印象を与えてきました。
通り一辺倒のBLに辟易して、刺激を求めて辿り着いたのがはらださんだった、という腐女子も多いはず…。
圧倒的な作家性と漫画力は、もはやBLという器には収まりきれません。
でも私達読者は心配なのです。
はらださんの作品が、もしBLという夢の国を離れ、一般大衆の目に晒されたとき
「描写が過激すぎる」「テーマが悪影響を及ぼす」などと、表面上だけを切り取った議論が行われ、規制がかけられ創作の自由が奪われてしまうのではないかと…。
何ていったって実際に、過去作品が「東京都不健全図書」に指定された前例がありますから。
そして今作の「にいちゃん」
エロはあってももはやBLではなく、人間の愛欲、エゴ、そして「まっとうに生きるとは?」という人間の生き物としての業を感じるさせる作品です。
詳細なネタバレはせずに楽しんだほうがいいと思います。
人間のハッピーエンドとは何なのか?
男と女が出会い、愛し合い、子供を授かり、立派に育て、子に看取られ死んでいく。
そんな普通の生き方がハッピーエンドなのか??
その答えは難しく、この作品のラストも一概にハッピーエンドとは言えません。
ただ、普通ではないと思われてきた彼等が、
もがき苦しみ辿り着いたその先は「ただのバットエンドではなかった」
と私は言いたい。
余談になりますが、今作に出てくるまいちゃんという女の子の人気がとても高いのが頷けます。
男キャラ二人が、人には言えなかった現実と心の内を彼女に打ち明けても、ただ冷静に受け止め、見守る様子はまるで聖母のよう。
そして自分のこともとても達観して受け入れています。
女は強し。
注意書きとしては、リバがあります。
ただ自分リバが苦手だったのですが、正直今作に関しては、萌えとかそんなのどうでもよく(笑)
むしろそれが自然な流れであり、愛ある行為ならリバとか全然気にならないものなのか!!
と自分の読書感が変わる思いがしました。
はらださんのファン、そして人間の深淵を描いている漫画が好きな方へ。
間違いなく神作品なので一読あれ。
一定の関係に辿り着いた二人のその後を書く。
人気作の続編というのは本当に難しいと思います。
ただでさえ「キングと彼を崇める男」という特殊な設定の二人。
恋人になるまでなら読む側も新鮮で刺激的な気持ちになれましたが、そんな二人だからこそ「ただのベタベタ甘々の数多のカップルと同じその後なら読みたくない」という複雑な腐女子心。
そんな読みたい気持ちと読むのが怖い気持ちとで複雑な高揚感を持って手に取った今作。
そこには、今までのオレ様攻めの概念を覆すニュータイプのキングが誕生するという、BL界にとって歴史的な瞬間に立ち会えた不思議な感動がありました。
冒頭の清居視点では、
清居が完全に普通に恋に恋する男の子状態で、
おいおい最後までただのオノロケ見せつける気じゃねーだろうな…と杞憂したのですが、
平良視点に変わった途端、そんな心配も一瞬で吹き飛ぶ清々しいほどの平良のストーカーっぷり!!
恋人になって尚、平良はその現実を「神様のキャスティングミス」であり、幸せすぎるから神様は帳尻合わせてくるはず、死か清居との別れが…
なんてトンデモネガティブ妄想を炸裂させてくれます。
待ってました!
これぞ平良クオリティ!!! (笑)
恋人になっても喧嘩をしても、
ファンとしてしっかり清居の出待ちをし、熱心なファンレターを書き、一定の距離と節度を保つ。
まるでファンの鏡のような平良。
それが勘違いするなよという自分自身への戒めだとしても、存在してくれるだけでいいというのは究極の愛のかたちな気すらしてきます。
しかし、清居が慰めてほしいときですら声をかけず
「清居の気持ちを推し量ることはしない」と言い切りスルーする平良のオレ様っぷりにはド肝を抜かれました。
それは「清居の考えていることはこうじゃないか…なんて、自分の高さまで清居を引き下げて考えることなんか出来ない」というロジックなのですが…
うーん…
破綻しているようで破綻していない…。
どこまでも頑固で
どこまでも面倒で
どこまでも一本筋の通った男です。
清居はそれを「ニュータイプの亭主関白」と表現するのですが、本当に言い得て妙!
関白宣言されればされるほど、自分の惚れた弱味を突き付けられ、それでも好きなんだと思い知らされる清居の姿に悲壮感はなく、とても可愛いらしくとても幸せな姿のように感じました。
清居が自分の中で、平良の好きなところと嫌いなところが絶妙にリンクしている、という事実を自覚している辺りから、もう二人の立場は逆転しているんですよね。
ストーリーの詳細には触れませんが、芸能界だからこそ起こる恋のトラブルや事件があり、その展開や対応などに多少の無理や綻びも感じるのですが…
それが気にならない位、新しいキャラを巻き込みながら、テンポよく物語を読ませる手腕には脱帽です。
(もちろん甘いエロもしっかり織り込み済み!)
何より終盤に見せる平良の男らしさには、大逆転ホームラン級のギャップ萌え!!!思わず跪きそうになりましたとも!!!
そして一見どうしようもない平良が、少しずつ自分の未来を自分の力、自分の武器で切り開いていく様子には感動すら覚えます。
気持ち悪い攻めが好き
という趣向を一切ぶれることなく貫き通した凪良先生の潔さには敬服するしかありません。
新たなキングの誕生により、地平線の向こうにはまだまだ未知の世界が続いているのだな…と、BL界の未来に胸踊らせられた神作品です。
そんな作者の強気な声が聞こえてきそうなほど、これでもかとしっかりと、かつて私が抱いた疑問をキッチリ補完してくれました。
年下攻め人気作の第三巻です。
そもそもこんな超人気シリーズ読んでない腐女子なんているんですかね!?
そんなひとが腐女子を名乗っていいんですかね!!?
そんなBL界の圧倒的推せ推せ空気。
言えない…
今更言えない…
読んでないなんて言えない(泣)!!!
⬆数日前までのワタシ
正確に言うと一巻の一話~二話位は読んでました。
でもチュン太(東谷)が高人にキョーレツに執着すればするほど私の中で
「何故そこまで??」
という疑問符ばかりが浮かんでどうにも入り込めず。
執着攻めも年下攻めも強気受けも大好きですよ。
でも、この人じゃないと駄目なんだ!って根拠が伝わらないとワタシ納得できないんですよ!
めんどくさい腐女子でどうもすみません!!
でもエロは美味しいです!!御馳走様です!!!!!
そんな感じで今まで見て見ぬフリしてきたのですが(笑)
三巻では二人の出会いを、しかもチュン太視点で描いてるというじゃないですか。
それですよ!それ!!
執着攻めがいかにして受けにおちていったか…
それが見たかったんですよ!!!
こうして私は
三巻➡一巻➡二巻
という禁じ手のような読了順を辿ったのですが…
これが思いの外よかった…!!!
二人の出会いがちょっとしたモノローグじゃなくてエピソード0としてしっかり描かれており、
チュン太視点では募る想いを、対する高人視点では焦りと葛藤を。両視点で楽しめます。
それを時系列で読めたことで、二人の交錯する想いと、積もり続けるチュン太の執着愛が切実に伝わってきました。
しかも同時収録作の「ネトラレトライアングル」がなかなか良い!!
この作品は一巻からずっと収録されているんですね。
それを知らずに三巻から詠んだ私は、二宮のセリフ
「覚えてます?星悟さんを最初に抱いたのは俺だってこと」
に崩れ落ちましたよ!
マジか!それいつですか!?
一巻なら読めるんですか!!!?
と当て馬好きで二宮×星悟派の私は血眼になりながら一巻を購入しましたよ。
両シリーズを時系列で追うと無限ループに嵌まります。
素晴らしいシリーズ構成力です。
シリーズ未読で恋におちるまでの課程が好き派の方は、時系列での購入オススメします!(+エロも楽しめる良作です)
これはただのアホエロにあらず!
「重い実枠」という新たな棚を設けて週4位で読み返したくなる面白さ。
アホエロ系作品って、作者の笑いやセンスが合わないと絶望的に損した気分になるじゃないですか。
私は某人気アホエロ漫画が合わなかった人間なので、どうしてもアホエロと聞くと「大丈夫か…!?」という疑いから入ってしまうのですが、
試し読みの段階で私と同じく「何これ…面白くない??なんかすんごい気になるんですけど!!」という気持ちになった方に「大丈夫ですよ!」と全力で後押ししてあげたい!!!
友達なのにヤッちゃって、
俺達って何なの!?系漫画にありがちなのが、意識したら突然「こんなのやめようぜ!」みたいに急にヤラなくなるパターンですが。
こちらはずっとヤッてます。
しかも回を重ねるごとに濃厚になります。
(ありがとうございます×2)
やべぇーやべぇーとなりながら気持ちよくなって流されちゃう受の坂口と、見計らったように距離を詰めていくオカン系イケメン執着攻の高東。
ただの体きっかけではなく、高東のほうはだいぶ前から坂口のことを好きだったエピソードがきちんと描かれているので、安心して両片思いのエッチに悶えられます(笑)
この二人のエッチがもうほんっとにエロい!!!
我慢したり快楽に負けてる男の顔ってどうしようもなくいやらしい。
そんな気持ちよさそうな二人の表情が惜しみなく描かれていて、重い実さんのちょっと不安定で少年誌っぽいタッチが、より若さを引き立てていてとてもイイ!!!
何か大きなことが起きる訳でもなく、二人がエッチしながらくっつく話で、ストーリーというストーリーはないのですが。
二人のやりとりやノリにセンスがありすぎて、何だかずっと読んでいられます。
二人以外のキャラも、眼鏡の下はダビデ像みたいな中西とその弟とか、温泉宿の超絶美形な仲居さん(CBN)とか、個性ありすぎてもういちいち面白くて感情が忙しい(笑)
そんな荒削りでいい意味で同人誌感を残した作品も、今だからこそ描けるものなのかもしれません。
この先変に商業誌慣れして、こじんまりまとまってしまわないことを願うばかり…。
今後オオバケ間違いなし!重い実さんの記念品的デビュー作に「神」認定です。
一巻では非常に賛否両論意見のわかれた作品。
多分に漏れず「学園モノのカーストなんて、もし設定ありきなやつだったら胸糞悪いだけだしなー」と気乗りしてなかったのですが、
「趣味じゃなくてもたいして損しないな!」
という某電子書籍サイトのお得なキャンペーンにまんまとハマってポチりとさせて頂きました。
読んだ感想としては、
「一巻はしんどいけど二巻は割とすんなり読める」
という大方の人と同じ感想でした。
(完)
というのは冗談で…(笑)
まぁ、ざっくり言えばその一言で間違いないんですが。
一巻はカーストというゲームのルールの提示
二巻ではそのゲーム上で駒(キャラ)が動き出す
という印象。
やはり設定自体を受け入れられない場合は一巻で無理だし、キャラが動き出すので当然一巻よりも二巻のほうが面白く感じます。
キャラを駒と書いたのは、個人的にトランプよりもチェスを連想させられたから。
チェスは各駒に特徴があって、斜めにしか進めないビショップとか、縦横にしか進めないルークとか独特な役割があるのですが。
そんな彼等を1つ動かすだけで盤上の世界がガラッと変わる。
一見弱く見える駒が、立場を変えて強い駒を取って食う。
ゲームが進むごとに景色が変わっていく、チェスにはそういった面白さがあるんですよね。
ただ、良くも悪くもこの作品はそんな「ゲームとしての面白さ」ばかりを強く感じてしまいます。
カーストという立場が変わることで、相手を見る目が変わったり、関係性が変わったりする。
強いと思っていた人間の弱さが露呈したり、弱いと思っていた人間の強さが見えたりする。
それは非常に面白いんですが、それはやはりカーストという「ルール=設定」があるからなんですよね。
緒川先生の完成された美しい人形のような絵のせいもあってか、胸を掻きむしられるような生身の感覚は感じられないけれど、この作品はゲームなんだと俯瞰して読めれば楽しめるのではないかと思います。
全く二巻のストーリーとかキャラに触れてないな!(笑)
キングの刈野が梓への想いを自覚する日が来るのか…
はたまた既に自覚をしていながら知らぬ素振りをしているだけなのか。
緒川先生はキングをこれからどうチェックメイトしていくのかが見物です。
今後の展開を楽しみにしています。
エンゾウ先生!出し惜しんでーーー(泣)!!
フェロモン症という特殊設定を中心に、目一杯エロで構成された短編集。
エンゾウ先生が狙ってエロを描くんだから、そりゃあ流麗かつ肉弾的で総じて描写はエロいですよ!
掲載紙の傾向もあってのことでしょうよ!!
でもねぇ!細切れにキャッチーにエロけりゃみんな興奮するって訳じゃないんですよ!
私ら腐女子を甘くみないで頂きたい!!
だいたいエンゾウ先生にはそもそもそれを求めてないんですよ!!
上手いんだから、そりゃ何だってある程度面白く描いてくれますよ!
そもそも先生も割りきって完全にアヘ顔で遊んじゃってるじゃん!!
やめて先生!才能を安売りしないでーーーー!!!
ちよっと興奮しすぎました…すみません…。
なぜこんなに興奮してレビューというより抗議しているのかといいますと。
この細切れエロ短編の最後に「好きにしたいよ」という傑作があるからなんですよ!
フェロモン症とは関係ないお話です。
他の方も仰っていますが、
あとがきによると、エンゾウ先生はこれを表題作にする予定だったけれど、担当さんの意向で変更になったと。
お隣の真澄に幼い頃から異常な執着をみせる変態受の藤生と、ウザがりながらも実は藤生を越える程の狂気を孕んだ執着を持っていた攻の真澄。
その執着の深さが狂気を通り超して純愛にすら思えてちょっと泣きそうなんですけど!
私的に近年稀にみる衝撃を受けた為、なぜこの作品を最後に追いやり、細切れに埋もれさせるような構成にしたのか到底理解できません。
おかげで中途半端にエロい印象だけが前面に出て、満たされてないのに胸焼けしてます。
エンゾウ先生はBLでありながら、それにおさまりきらないような、どこか映画的な作品が描ける素晴らしい作家さんだと思います。
エロさがウリの作品を否定しているわけではありません。
ただ安直にエロを前面に出さなくても、充分楽しめるBLを描いて下さるんだから、勿体ないことせずにその価値を守って頂きたいなぁ~と、長く腐女子をやってる身としては思うばかりなのです。
まぁご本人が楽しく描いてるんだったら、私達がとやかく言う筋合いはないんでしょうが…。
色々言いましたが、この本が駄作な訳ではないです。
「好きにしたいよ」が突出して良すぎて、個人的にはこれだけでも充分モトがとれてます。
これだけだったら「神」間違いなし。
構成と方向性の残念さを差し引いた萌×2で…
熱くなってしまってすみません。
読了した今、萌え尽きています…。(現時点発売の四巻まで)
純粋な一巻のみの感想にはならないかもしれないけど…
どうしても!皆様にこの腐った熱量を伝えたくてレビューを書いております。
20年近く前の作品ということで、人気シリーズといえど新たにほとんど書き直された今作。
腕のある作家さんの名作を、今の時代の作品として読めて、尚且つ書き下ろしまでついてくるなんて…新装版ってすごくない!?
こんなシステムあったら一生腐女子辞められないじゃん!!辞めませんけど!!!
という心の叫びが止まりません。
大まかなあらすじは皆様が書いて下さっているのでさておき、
この男前執着攻×強気美人受という王道CP!!
皆様おっしゃるように、如何せん受のシンゴが跳ねっ返りで見た目猫で中身サル。
この落ち着きのなさがダメかも…と一瞬弱気にもなりますが、大丈夫です。慣れます(笑)
というか癖になります。
彼のトラブルメーカーっぷりは、所構わずただ突っ走るというより、
「向こうっ気は強いけどその実小心者」という性格と「響(攻)に頼ってばかりいられるか」という男としての矜持と葛藤からくるもので、実に中身は普通の男っぽくてそれがいい。
そのくせ外見は超絶美人なもんだから、色々と無自覚で危機感が足りない。
また響のほうも普段は何事にも動じないくせに、ことシンゴに関してだけはめっぽう弱い。
シンゴが他人のトラブルを見て見ぬフリ出来ないと「関わるなほっとけ」と突っぱねるのに、それでも協力してほしいシンゴから「俺がボコられて輪姦されてもいいのかよ!」と脅される(笑)と、
「くそったれ!」と怒鳴りながらも根負けしちゃうシーンは秀逸です。
本当にシンゴには甘い…シンゴもシンゴで甘えてる…
でもそんな風になったのも、響の自業自得な訳で。
オオカミから守ってるという名目で、寮生活はずっと同部屋で俺の傍から離れるな、とシンゴを独占してきたから。これが無意識だったんだからビックリだよ!
割れ鍋に閉じ蓋。鶏が先か卵が先か…。
そんな響の視点がどの巻にも入ってる構成がとてもいい。
一巻では四編中の二編がそう。決別する前の二人の寮生活を書いた「オオカミとサル」と
響視点で二人の再会を書いた「トラブルメーカー神蔵version」
あのときあんな顔しといてそんなこと考えてたのね響…ともうニマニマが止まりません!
一巻はA、二巻はBと焦れったい二人の関係すら、長く楽しませてくれてありがとうございます!!!
という気分になってくる。
これぞシリーズものの醍醐味。
短い事件を挟みながら近付く二人の恋が中心になっているので、比較的ライトに読み進められます。
しかし、上記のCPがど真ん中という方は、積んでから読み始めないと後で後悔するのでご注意ください(笑)
番外編も絶対読みたい!!!
この情熱が出版社、岩本先生、そして未読の腐女子の皆様に届くと信じて。
一巻からの神評価です!
教師と教え子という障害、若さ故の勢いと情熱、喪失への恐怖と焦燥感
散々擦られてきたテーマだからこそ読む側としても自然とハードルは上がる為、比較的冷静に読み進めていったつもりでした。
展開もどんでん返しがあるわけでもなく、大方予想通りに話が進んでいく。
なのにそれなのに…
瀬名(生徒)が阿南(先生)に焦がれて、熱く奪って、体だけじゃなく心も欲しいと求めて、体ごとぶつかっていく若い彼の姿に、
いつの間にか嵐のようにこちらの心も持っていかれて、胸を掻きむしられるような思いにさせられるのです。
本編は瀬名視点です。
阿南の心のうちはわかりません。
若くてモテて女に困ったことのない瀬名は、精神的に深い恋愛経験なんてありません。
なので相手の心の機微を読み取るなんてこともできません。
阿南の心をどうすれば手に入れられるのか、何をすれば正解なのかわからず右往左往します。
カッコ悪くなるばかりで、うまくいかない苛立ちを結局阿南にぶつけてしまう位に子供です。
どうしようもない位、若くて真っ直ぐで純粋なのです。
そんな瀬名を見ているうちに、瀬名の一人称のはずなのに、なぜか痛い位阿南の気持ちがこちらに伝わってくる。
どうしようもない奴…
でもかわいい
苦しい…
もうやめてくれ
怖い
失うのが怖い
ほとんど動揺を見せない大人な阿南の心の叫びが聞こえてくるようで、
瀬名視点のはずなのに、気付けばどっぷりと阿南に感情移入してしまっていました。
「未完成」
本当に秀一なタイトルです。
若くて自分の想いをぶつけるだけで、相手を追い詰めることしか出来なかった瀬名が、失うことの辛さを経験し、痛みを知り、少しずつ大人になっていく。
それと同時に、大人と子供の間で揺れる高校生の美しい煌めきを懐かしく感じる。
最後の二編は阿南視点で、素直に真っ直ぐに頼もしく成長する瀬名を、阿南と一緒に私達も見守るという、
くすぐったくも暖かい気持ちになれるのがこの作品の素晴らしさ。
丸腰で勝負を挑んでくる年下攻の醍醐味を味わえる、凪良作品の中でもイチオシの名作です。
私と同じく手に取りながら今まで逡巡していた方、秋の夜長のお供に是非いかがでしょうか?
はい、安心安定の見多先生の新刊でございます。
たった数Pのサンプルを読んだだけで「もちろんお買上げでーす!」と即決できるのは、前作を読んで見多先生の漫画力に絶大な信頼を寄せているから。
ストーリーもキャラも派手さはありません。
一言でいえば地味だけど堅実。
けれどそれは裏をかえせば、ありふれた日常をしっかりと描けるということ。その辺りは抜群にうまい!
他の作家で例えるなら、日高ショーコ先生の系譜に近い。
一見地味だけれど人物から匂いたつ色気のようなものがあって、Hシーンもエロいのに下品にならない。
そんな何を描かせても上手そうな見多先生の今作は、
オヤジ×オヤジ。
美味しいに決まってる。
オヤジというより二人ともアパレルという職種からかオジサマ×オジサマ位に綺麗でむさ苦しくない。
学生時代に交際していた二人がしこりを残したまま別れ、再会し再び心を近付けていく過程が余りにも自然に描かれているので、うっかり「木10」辺りのアラフォーイケメンの恋愛ドラマを見ている錯覚に陥りましたとも!
是非、椎名○平や仲村ト○ル辺りで実写化お願いしたいところですよ、ええ。(絡みももちろん全裸で再現お願いします!)
そんな表題作は見多先生の模範的A面作品で、今回は同時収録作がB面的で非常に面白い!
長編好きなBL読みとしては中途半端に何作か同時収録する位なら表題作丸々1本でよろしく頼むよ!と思うところなんですが、こちらで作家として新たな一面を見せてくれたので、一冊で二度美味しい!と簡単に持論を覆す羽目に(笑)
同時収録作は、高校生のときにレイプされた経験のある主人公がそれをきっかけに目覚めて、ストーカーされることにすら快感を感じ始める、というちょっと危険な話。
これ主人公が美形すぎないのが逆にいい!
三白眼気味で何だか根暗で淡白そうな大学生が心の奥で「犯されたい!奥までガン突きされたい!」と思ってるのが生々しくて淫靡なんです!!!
その願望も意外なかたちでしっかり成就する構成も捻ってあって面白い。
最後は一抹の尻すぼみ感を感じるものの、続編が読みたい!という期待にうまく変換されてしまう、これぞ見多マジック!!
こんな角度からもイケるんですね先生!と、新たなテイストにこれからの期待しかなく、もう近々見多ほむろ確変の予感がプンップンッなのです!!!
怒濤の勢いを見せる見多先生にこれからの神作品への期待も込めた萌×2です!
先生1000株投資させてください!!
こんなに個人的萌えの詰まった漫画が昨今あっただろうか…
しかも上記に加えて、攻が博多弁の無骨なガテン系オヤジというトリプルどころかクワドラプル(?)パンチですよ!!!
主人公の受は、倒れた父のかわりに一時的に実家の工場の社長代理を務めることなり、職人達からすれば何も知らない都会のボンボンな訳なのですが…
この受の幸典がただのおぼっちゃんではなく、東京ではSEをやってる記憶力のずば抜けたほんとは仕事のできる理系メガネなのがイイんです!!!
「あんたのできんはしらんからたい」と攻が言うように、使えないと思われたのは会社のノウハウがわからないからで、努力しながら段々頼れる社長代理らしくなっていきます。
これですよ!この普通に仕事してる感じ!!
普通に煙草吸っててスーツの似合う男が受けるから余計エロいんです!!
攻の工場長の槇さんも、大人の駆け引きとか使わずストレートに迫るところが逆によかった!
方言に関しては自分も九州の人間なので萌えはしなかったけれど、受が標準語なので攻の博多弁とのコントラストで2人の会話が余計にエロく感じられてナイスでした!
とにかく表題作がツボすぎて、もうひとつの箸休め的にコミカルな収録作は「休めてる場合じゃねーよ!!」とすっ飛ばして読んでしまいました…すみません。
「丸々一冊表題作だったら…!」というやるせない思いは番外編のえちシーンで昇華することができました。エロいよ幸典!!
このページ数でこれ程満足度の高いワーキングを描けるなんて…!またひとりチェックしていきたい作家さんが増えました。