雲田はるこさんは「愛しの猫っ毛」から入ったのですが、これはまたぜんぜん違う作風ですね。えろいしえぐい。貞操観念薄いかんじします。
構成がまたいいですね。苦味が引退して社長になってる時点のオムニバスが数本、そのなかにサクマと苦味の関係がにおわされていて、え、なんなのこのふたりどういう関係!?ってワクワクしてるところで、最後にサクマと苦味の出会いのお話「陽当たりの悪い部屋」がきてます。
わたしは立ち読み小冊子で「陽当たりの悪い部屋」の冒頭読んじゃったし、あらすじもそこが取り上げられてるんですが、サクマと苦味についてまったく前情報なしで読んだらまたちがった印象だったでしょうね。もし人に勧めるならまっさらな状態で読めって言うと思います。
で、特筆すべきはやっぱり苦味の魔性の男っぷりですよ!まず顔が美しい。淫乱であけすけで、裏社会に染まっていて、だけどどっかお人好し。シリアスな場面の憂い顔と、コメディタッチな場面のオヤジっぷりのギャップがたまらない。とかこんな言葉でいい尽くせないほどふしぎな魅力のある人物です。
そんな苦味をサクマは「アレは人間を狂わせる」と評していますが、実際狂わされちゃったのはほかでもない自分なんでしょう。サクマの苦味に対する思いの変遷はさりげなくって、だけど心に迫ります。
サクマも苦味も不特定多数の男と関係を持つ貞操観念のうっすい人間ですが、結局狂おしいくらいに思ってるのはお互いなんだなってことが言外に説明されていて、それがもうくっそ萌えます。書き方は決して甘甘と呼ばれる類のものではないんだけど、なぜか甘美です。
ああもうすごく好きです。
うーん。微妙でした。
変態だという自覚のない変態攻めと、それにほだされていく受けの話って考えれば合ってると思います。変態っぷりはなかなかのもので、そこはおもしろかったしドキドキさせられました。コスプレも完備。さすがです。
だけど、ふたりの関係にあんまり魅力を感じません。受けがあんまり競争心あるタイプじゃないし、カフェとショコラトリーだから商売敵ってわけでもないし(むしろ協力しあってる)、攻めが受けに優しすぎるのでふたりの対立構造はないんですが、こっぴどくふったイケてない年下の変態が世界一のショコラティエになって帰ってきたんだから、追い抜かされたような焦燥とか、そんな男に屈するわけにはいかないぞっていう受けのプライドとか見たかった気がします。
そうしないならそうしないで、なにか萌える要素がほしかったな。今のままだととっかかりがなさすぎます。
あと、物語の書き方が全部後出しなのが気になりました。受けが祖父から受け継いだ店を大切にする理由、我妻やミッシェルという当て馬の登場、主人公の父の登場、伏線が全くないので唐突に感じられてしまい、いまいち心に迫ってきませんでした。
話には起伏があるし、世界一のショコラティエや御曹司、幼なじみのイケメンと華やかな登場人物も揃っているし、チョコレートというえろいアイテムもあるんだけど、入り込みきれなかったです。
夏目イサクさんの絵に惹かれて購入しました。ぴったりですね。挿絵のおかげで作品の魅力三割増くらいになってると思います。
いいかんじに明るく楽しいコメディでした。
なにがおもしろいって、ところどころ荒唐無稽なんですよね。生き神と敬われる受けの呪い(!?)で島の外に出られない攻め。
続編では受けが記憶喪失!古典的過ぎてこれには思わず笑ってしまいました。
だけどどうして、このギャグっぽすぎる要素がうまく話に絡んでくるんです。呪いにしても記憶喪失にしても、ネタこそ馬鹿馬鹿しいものの扱い方は真剣なので、読んでるうちに自然と話に入りこんでいます。
ただ、受けの性事情。これだけはいただけません。大学生にもなって赤ちゃんがコウノトリとかキャベツから生まれるって、そりゃないでしょう!
それよりは王子ルックできらきらさわやかなお花畑頭が、ひそかに攻めには劣情を抱いていた、とかのがよっぽどときめくのになあ。
とはいえ、タイトルが「純情」ですものね。作者さんが書きたかったのはきっとそっちなんだろうな。
凪良ゆうさん、初読だったんですけど、個人的に大ヒットです。ほかのも読んでみたくなりました。
特筆すべきは話運びのテンポの良さ、的確で気の利いた比喩でしょうか。ものすごく文才ある方だなあと思いました。
コメディが上手なのかな?浮世離れした主人公の家族はそれこそありえないかんじですが、この話にはなじんでいます。
キャラクターも魅力的ですね。最近読んだやつは受けか攻めどっちかの存在感が薄いものとか多かったのですが、これは双方好感が持てる。異常なまでの節約家で締まり屋なのに、嘘がつけない素直な受け。御曹司で外面もよく王子として通っているけど、実際は亭主関白な攻め。この二人の力関係がみごとに拮抗しあっていて、ああ同い年っていい!!と思わせてくれます。
幼馴染ものってことで買ってみましたが、どうせ甘々でいちゃいちゃしてるだけで中身が薄いんだろ……とか勝手に思ってました。(ごめんなさい)ところがどっこいよかったです。いや、甘々でいちゃいちゃしてるんですけど。中身も濃いってほどではなくて、こじんまりとまとまっているんですけど。
攻めのギャップに尽きるのかな。受けが自分のほうが保護者だと思ってたのに、攻めのほうがしっかり進路を決めてて、それにうろたえてるところで襲われる。この流れが最高でした。再開後、背がぐんとのびてたのもいたく萌え。背を並べていたはずの、どころか自分がひっぱっていたはずの幼馴染がいつのまにか自分をひっぱっている。萌えです。
甘々でほのぼのな話なので、幼馴染特有の競争心とか焦燥とかないのが物足りない感もありますが、まあこれはこれで。
練生川もさじ加減をまちがえればものっすごく嫌われそうなキャラですが、個人的にはよかったと思います。こいつなしにこの話成立しないですよね。「返したぞ」よかったなあ~。
あと、挿絵について。わたし小嶋ララ子さんの絵、すごく好きなんですよね。
小嶋ララ子さんに挿絵を担当してもらえるって決まってから構想した話ってこともあるんでしょうが、ぴったりです。ほそっこくてかわいい男の子描かせたらいちばんですね……髪もふわふわ。あたままるい。もうえろいシーンの挿絵がかわいいのなんのって。
惜しむらくは、成長後の話に挿絵がないこと。せっかく背のびてるんだから!見せてよ!
えろえろですね。淫魔に憑かれてやらなきゃ死ぬっていうのが、いかにもBLらしいトンデモ展開で楽しい。こういうの好きです。
ノンケだけど淫魔に憑かれてるから男にときめくし、はじめてでもちゃんとできちゃうし、求めちゃうし、男にモテモテ。なんて便利なんだ!!便利すぎる、ご都合主義だっていう意見もありそうだけど、わたしは「これはこういう話なんだ!!」って割り切って読めました。そもそもはじまりからして「淫魔に憑かれる」だもんね。
受けはとても好きです。受けだけどなよっちくない。(38のおっさんがなよっちかったらいやですけど)適度にさらっとしてて、えろいシーンとのギャップがあっていいですね。鈍感なとこもいい。
対して攻めにはあんまり魅力を感じなかったかなあ。なんで受けが好きなのかとか、よくわからなかったし、ただ受けの相手役として用意されている感じがある。男前だとはおもったけれども。
途中、男にもてるフェロモンが出る魔法をかけられてからがおもしろかったです。なんだこのハーレム展開。部下も旧知の同僚も通りすがりもみんな受けに欲情してしまうっていう。なかばギャグです。
そこそこ楽しめたけれど、続編買うかどうかはびみょうかもなあ。
山本小鉄子さん、こてつこ、って読むんですよね。さいきん知りました。
さておき、長編をたくさん出してる印象のある作家さんです。
人物がみんなよく似てるのがネックですが、かっこいいひとはかっこいいし、かわいいひとはかわいいし、好きな絵柄です。
すね毛描いてるのも個人的にはポイント高いかな!
攻めの強引さがいいですよね。いきなり「結婚してくれ」だもん。
三年半海外へ行くので留守して帰ってきたと思ったら、出会いがしらにキスするし、「まだ童貞?」とか聞いちゃうし、あっというまに押し倒すし、イケメンだし。性欲の権化というか、いい攻めっぷりです。
そのわりに受けのこと好きすぎて受けには懐柔されちゃうのがほほえましい。受けの猛獣使いのごとき手腕はあっぱれです。
受けはほんとにかわいい。黒髪短髪で、眉毛太くて、しょっちゅう赤くなってるほっぺたがやわらかそう。あっさりきっぱりした絵柄ですが、えろいシーンではきっちりえろいです。あと、ほんとに性格いいのがわかるので、攻めがこれだけべたぼれなのもうなずける。
当て馬があんまり好きじゃないのと、これといって特筆すべき点がないのがマイナスでしょうか。でも、よくまとまってていい作品です。無事ふたりが結ばれるまでは読みたいなあ。