ぱるりろんさんのマイページ

レビューした作品

女性ぱるりろんさん

レビュー数44

ポイント数256

今年度46位

通算--位

  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

壮大なロードムービー

前巻「花降る王子の婚礼」がとても面白かったので、続いて2巻を読みました。
2巻、驚くほど壮大なロードムービーでした。序盤があまりにもぽわぽわ幸せなので何かあるなと思っていましたが、こんなに過酷な状況を想像できませんでした。
前巻同様にこの後どうなってしまうのかと気になって本が手放せなくなるほどに夢中で読みました。
すごく面白かったのですが、都合がよい点が気になったので、その分マイナスです。一つはガルーとの出会いが出来すぎだったこと。もう一つはグシオンの叔父デルケムです。
ガルーについては、たとえばガルーがロシェの友人で心配になって訪ねていく途中だった、などの理由があれば良かったのですが、顔見知り程度であの尋常じゃ無い猛吹雪、超冷凍の氷雪の国に様子を見に行く、その途中で偶然リディルを拾う、というのが腑に落ちずもやっとしまして。
ガルーはまさにリディルにとっては大のつく恩人だと思うので、展開上仕方ないとはいえ途中から出なくなったので気になってしまいました。最後に姿が見えて賓客扱いでほっとしましたし、病を治せて良かった。
一瞬だけ登場して居なくなったデルケムも場つなぎの役割を見事に果たしてそれで去って行ったので都合がいいなあと気になった次第です。ただ、一瞬登場のわりに個性が強烈で、そばには寄りたくないけど遠くから眺める分には面白く思える人柄に笑ってしまいました。
しかし、エウェストルムの3兄弟は魔力が甚大過ぎて、しかも人の言うことを聞かなくて、お母さんが気に病んでリディルを抱えて出奔する気持ちも分からないではないなとしみじみ思いました(父王も気が弱すぎて頼りないし)。末っ子はどんな子なのかな。

ドキドキはらはらの370ページ

文句なく面白かったです。このさきどうなるのだろうとページをめくる手が止まらず、睡眠時間を削って読みふけりました。
前半は、リディルの秘密が途中で露見するのではないかとはらはらし、中盤はグシオンの秘密に驚きそれがもたらす影響の大きさに震え、加えて仲が良かった二人の間にできてしまった溝に嘆き、心配で(両片思い的な切なさもありますし)、後半はがんばるリディルを応援して、ブラックボックスのようだった事柄が一つずつひもとかれる爽快さにわくわくしました。
もう完全に手のひらの上で踊らされるように読書に没入しました。楽しかったです。
魔法国と武強国で成り立つという特異な世界観も、緻密な設定と丁寧な描写で非常にわかりやすかったです。
メインの二人はとても仲が良くて、むしろ最初の出会いの場面からお互いがお互いに惹かれていることが分かりますし、秘密とか過去の因縁とか呪いとか、そういうマイナス要因を乗り越えてますます絆が強くなっていく様もとても良かったです。
個人的には中盤の、婚礼の日の初夜の場面が官能的で気に入っています。
yoco先生の挿絵も美しく、作品にとても合っていると思いました。一番最後のイラスト、てのひらから零した花の中で二人が抱き合う場面が絵本のように美しいです。
2巻も楽しみです。

フィンレイ王子の魅力炸裂

主人公は、フォルド王国の12番目の王子フィンレイ。母親が平民であるため王位継承権は無い。
祖父母の商いを手伝ったり野山で狩りを楽しむなど、実家でのびのび育っていたフィンレイのもとに唐突に結婚話が舞い込む。
縁談の相手が、国の行事に参加した10歳のときに一目惚れした地方領主のフレデリックと聞き、舞い上がるような気持ちになる、というところから始まるお話。

非常にわかりやすく展開していくお話で、微に入り細に入り描写も的確で大変読みやすかったです。
とにかくキャラがいいです。
フィンレイは賢くて真面目な努力家で、おおらかで視野が広いので、読んでいて気持ちがいいですし、自然と応援したくなります。
領主の妻となったからには領地のことをもっとよく知りたいと勉強したり、庶民のなかで育った事もあってわけへだてなく振る舞ったり、子供達の心を開いて仲良くなっていく様子も、なにもかもが百点満点ですし、性格が素直なのも好感度が高いです。
すぐに警戒をといた執事のギルモアに家政婦長のローリー、双子の世話で半死半生だったナニー、領主補佐役のマーティン、3人の子供達もみんなフィンレイが好きになっているのに、当のフレデリックがなかなか素直じゃなくて、むむむと思っていたら、後半にものすごいデレが入ってからの終盤には溺愛甘々でこちらが照れました。
フレデリックに対しては思うところが少しありますが、フィンレイが彼を好きだと言っているし幸せそうだし、まあいいか、となりました(誰目線)。
馬にまたがったまま猟銃で無頼漢を襲撃した場面などもあり、とにかくフィンレイ祭りな本です。
シリーズ化されていることを知らなかったので、続巻購入予定です。

浜津少佐の受難

沢口中佐がラバウル基地から内地に異動がきまったとき、くれぐれも、と個人的に浜津少佐に頼んでいったことがある。
「目を掛けてやってほしい搭乗員がいる」
何も知らない浜津少佐は嬉々としてこの願いを引き受けるのですが、この時点で読んでいるこちらはぷふっと吹き出してしまいます。
鷹居千歳の艦爆ペア、緒方伊魚の彗星ペア、琴平恒の月光ペア。
名前を聞いてますます笑いがこみあげてくる。そして「早速浜津は後悔していた」の文字に、でしょうね!と大きく頷いてしまうのでした。
みんないい子達なんですけどね、個性が強いですよね(問題児ばっかり)、そしてきりきりと胃を痛める浜津少佐がお気の毒です。
顔は前を向いたまま目を見交わして、同時に左右にわかれて逃げ出す恒と六郎のコンビネーションの良さに惚れ惚れしつつも笑ってしまう、コミカルなSSでした。

青空の下をのんびり歩く

戦後、資紀と希が街を歩きながら青空を眺め語る日常もの。
このお話の肝は、資紀がなにげなく希の飛行時間(戦闘機の飛行歴)を尋ねたことです。
希からの答えは資紀の想像を絶するほど少なく、まるで素人同然の有様でした。希が予科練に入ったころは人も燃料も足りず、練度の低い者がろくに訓練もできない状態で前線に配備させられていた時代。片道燃料で敵艦に当たる行為も、一人前に操縦ができなければ成果を上げられないのに、それでも当時の上官等からの教えのまま、気持ちがあれば大丈夫だとまっすぐ信じて言い切る希に、暗澹たる思いと、生き延びてくれてよかったという安堵の混ざった感情を抱える資紀。
短いお話ですが時代背景も相俟って、深いです。資紀が希を雛にたとえるところでなんとも言えない気持ちになりました。

ゆるふわな会話を愛でる学園もの

読み終わったばかりの本がちるちるニュースで取り上げられていて驚きました。
実写ドラマ化されるのですね。なるほどー、と思いました。納得といいますか、実写化やアニメ化に向くかもしれないなとの印象を持ちました。

さて、読後の感想ですが、レビューがとても難しいです。評価も難しいです。
誤解を招きかねない表現で恐縮なのですが、本作は、雰囲気を楽しむ作品と感じました。
キャラクター同士のゆるふわな会話を楽しみ、修学旅行、夏休み、文化祭、クラス替えというアイコンのような学校生活にエモさを感じ、手をつないだり好きって言ったり焼きもちを妬いたり、それはもう可愛らしいです。
うまく言えないですが、子供の頃にマンガを読んで思い描いていた憧れの「高校生」「高校生活」の具現化のような世界観が繰り広げられています。そして、みんないい子たちです。
良いとか悪いとかではなく、個性だと思っているのですが、いわゆる「小説」とは一線を画していると思いました。
批評みたいなことを書きたくはないのですが、たとえば描写です。描写がたいへんに少ないです。クラスの目立つイケメン4人組がいるのですが、渡会はメインキャラなので置いておいて、残りの3人の書き分けはほとんどありません。
そのため苗字の字面から浮かぶイメージだけで読んでいきました。登場人物紹介ページにイラストがあるので、その顔を思い浮かべて読むことは可能です。また、日置の部活友達3人も同様です(こちらはイラストがない)。
ただ、全体を思えば、イケメン4人組のうちの3人、部活友達の3人だということだけ分かっていれば成立するので、余計な描写は不要かもしれません。メイン2人の恋にキュンできればそれで成立するのかもしれません。
そうしたことからも、これまで読んで来た商業BL小説とは少し違うなと思った次第です。落としていませんよ、個性と思っています。
本当にレビューが難しい。
あ、複数の人が同時に同じ言葉を発するときの「「「   」」」は驚きました。他ではあまり見ない。テンポは良いです。

まさに「……鳥か」

三上がラバウル基地の配属になって、浅群塁の専用機となってしまっている機体の専属整備長を任されたばかりの頃のお話。
まだ三上と塁の信頼関係がまったく出来ていない頃、いまとなってはそんな頃が懐かしくもあるのですが、機に施されたあまりにも独特な調整を少しでもよくするために三上は日々機体の整備に勤しむ。塁は自分の機を、誰やら知らない人に触られるのがいやで、気になって仕方なく、様子を見にはくるけれど三上に近寄らない、というお話。
遠くから三上を睨み付けるけど決して近寄らない塁と、そのことを知りつつどうにか会話をしたくて、餌を撒くように計器を並べて見せて近寄ってくるのを待つ三上。三上と目が合うとぱっと逃げる塁。絶妙です。
それはまるで雀と、雀を捕まえようとする人間の距離感さながら。そしてこのお話のタイトルが「とりのはなし」。唸るしかないです。
また、改めて三上の気の長さには脱帽です。ここから信頼関係を築いて恋仲になるのは並みのことでは無いですし、この後のことを考えるとこうしたささやかなことでも微笑ましく感じます。

このお話のその後が楽しみ

高校生のときに父が亡くなって一人残された喜一は、30歳を過ぎる今に至るまで、友も作らず恋もせず、日々の仕事を淡々とこなすだけの人生を送っていた。
会社の忘年会で当てたゲームを不慣れでありつつも年末休暇にやりこみ、そのオンラインゲームで知り合ったsumiという人に装備や武器やチームで冒険の旅をする楽しさを教わる。仲良くなるにつれて、sumiが大学生だと知り、ますます自分の年齢を言えなくなってしまう、というお話。
喜一が自分の年齢を言うに事欠いて中学生と偽った時には、こちらが頭を抱えたくなったものですが、その後偶然sumiとリアルに遭遇したときに、sumiがまったく動じなかったことやそれまでの喋り方を変えなかった(二人称がおまえ。そして完全なためぐち)ことに違和感を覚えました。
sumiがモデル並みにスタイルが抜群でものすごいイケメンという設定も、出来すぎという意味で違和感をいや増しているかもしれない。
ただ、実家が老舗旅館なのに帰省しても家業を手伝わないことも、前述のように身バレした喜一に敬語を使わないのも不自然ではありましたが、この後の展開を思えば納得できるものでした。
一番の特性である、おじいちゃん子であること。おそらく彼は実家では末っ子で甘やかされている体で疎外感をずっと感じていたのでは。おじいちゃんだけが彼を本当の意味で可愛がってくれたのでは、と思うと、亡くした時の喪失感がとてつもなく大きなものだと分かります。
それを乗り越えて、また就職もして、澄良が今後どんな大人になっていくのか楽しみでもあるし、義一との関係性も良い意味で変わっていきそうで期待が持てます。
もしも続編が出るようなことがあれば、寧ろ続編の方こそ楽しめるかも知れないと思いました。

平和な世の中だからこそ

「謹製ヘルブック」には書き下ろしはありませんが、コミコミスタジオで購入すると書き下ろしSS小冊子が付いてきます。
A5判16pの小冊子で、本文は2段組11ページ分、数えたわけではないですが推定1万字超のお話で、とても贅沢でした。
藤十郎が商談で訪れた都心のビルで火事が発生します。藤十郎はテナントオフィスの客側なので、先に避難誘導されて一旦は外に出るのですが、訪問時にビル内でみかけた小学生のことが気になり、燃えさかるビルに戻ります。
勝手に建物の上階に侵入していた子供達は火事のことを知らず、藤十郎が戻らなかったら確実に火に巻かれていました。
子供三人全員を無事に救出したまでは良かったのです。予科練を出た元海軍の飛行機乗りなだけに、状況判断は的確でひとつひとつきっちり確認して理詰めで行動しますし、語り口が穏やかなので、こちらもうっかりしていましたが、いくら非常事態で子供を助けるためとはいえ燃える建物に戻って最上階まで、しかもたった一人で救助活動を行うというのは、やはり無謀なのでした。
これまでのサバイバルな出来事からも、藤十郎ならなんとかしてしまいそうな気がしていて、おそらく本人もそう思っていて、だから、伊魚に後で言えばいいか、と後回しにしていたことも言えないままになってしまうのか、と思い始めた段になって、事態の深刻さを思い知ったところが良かったです。また、その藤十郎の考えを読んだ伊魚が彼を助けたことも。
戦争も終わり、何気ない平和な日常を過ごす二人が(テレビを見ている場面がある!)、今に至ってもペアである本領を発揮するのを読むのはとても嬉しいことでした。とても素敵なお話でした。

「彩雲の城」ペアの来し方行く末

1945シリーズの番外編集第2弾。25本ものSS・短編収録で、彩雲ペアの戦争中~戦後の半生を読むことができます。
2014年から2021年に書かれた、同人誌や旧版の特典ペーパー等からの再録で、520ページ超えの文庫本。読み応えたっぷりです。(書き下ろしはないです)
藤十郎と伊魚がどうやって心を繋げて、あの気難しい戦闘機「彗星」を乗りこなし太平洋に落下しつつも南の島で生き延びて、どうにか帰った日本でどう暮らしていったかというのは「彩雲の城」につぶさに描かれていますが、本書はその補完でもあり後日談でもあり、且つ、タイトルどおりエロチックでもあるという、大変贅沢な仕上がりです。
99.9パーセント彩雲ペアですが、ほんのちょこっとだけ恒と六郎が出ます。
すべてのお話にコメントすると大変なことになってしまうので、特に気に入ったお話のみレビューします。


○ねずみ花火の憂鬱

きっかけは藤十郎の母御が二人の住む家を訪ねてきて藤十郎に結婚をしつこくしつこく勧めたことでした。
伊魚の中にはずっと、自分さえいなければノンケの藤十郎は一般的な家の長男として妻を迎えて子をなして幸せに暮らせたはず、という思い込みがあり、これを機に爆発。
別れを切り出して家を出ていこうとします。
当然藤十郎は伊魚を引き止め説得し懇願し、果ては縛り付けて梁から吊して動けなくして身体にきく、という、その手法がどうなのかはさておき、三日間の拘束を描いたお話。
このうち特に気に入っているのは、伊魚が藤十郎を柔術で落とした場面と(かっこいいです)、がんじがらめに自分をきめつけて責めている頑なにも程がある伊魚が、三日目に、音を上げた振りをした藤十郎を這いずって追いかけた場面です。こんなことされたら藤十郎でなくても絆されます。読みながら涙目になりました。


○指先と林檎飴

風に乗って聞こえて来たお祭りの音に惹かれて、連れ立って向かった境内の夜店で林檎飴を買って、伊魚の唇が飴の赤に染まるのが色っぽくて、帰宅するなり致す話なのですが(ざっくり過ぎる)、気に入っているのは、お祭りの音を聞いて「二時の方向」だと断じる伊魚と(さすが偵察員)、縁日ではしゃぐ子供を見て敗戦の虚しさを癒やす場面、それから二人のお布団シーンが秀逸でした。
まだ準備が出来ていないのに早く欲しいとがっつく伊魚が、存分に欲を満たされて、揺すられながら「気持ちいい」と藤十郎の背中に指先でモールス信号で伝える。本人は別に伝える気は無いんじゃないかなと思うのですが、本音を言えない彼が背中に指でトントン合図するのが可愛くて。「そういうのは口で言え」と文句を言う藤十郎が実はあけすけな隠語にやられているのがやっぱり可愛い。
気持ちのまま突っ走るため、翌朝我に返り恥じ入るのも可愛いです。特にこのお話は、朝ご飯にゆうべの林檎飴を二人で食べるというシーンもあって一層良きです。
次の「臨時教員・緒方氏の恋人について」というお話が本作の後日談のようで、伊魚と同じ学校に勤務する教員から、襟元からキスマークが見えていると指摘されるお話なのですが(本当は歯形や指の痕も見られている)、「手加減しろといっても聞かなくて困っているんです。気をつけさせます」と答えるのがもう。ちょっとちょっと。指摘した人は相手が女だと思っているので、どんな猛女だと目を白黒させるのも面白いです。


○なし崩しの昼下がり

これはお昼に、昼寝をしていた藤十郎を起こしに行って、返り討ちに遭うように執拗に迫られ、なし崩しに濃厚Hに雪崩れ込むお話で、事後の伊魚の不機嫌と「貴様のせいだ」までがセット。
もう伊魚の「貴様のせいだ」が私は好物になりつつあります。めちゃくちゃ可愛いです。
そもそも藤十郎の「挿れるだけだから」の「だけ」の意味が分からないし、当然「だけ」では済まないし、知り尽くした手管で結局陥落させられた伊魚の箍がはずれ、本気で「挿れて」と懇願させられてるしで、本当に良いものを読ませていただきありがとうございました。


○一と超ジュラルミン

出張で三日家を離れる藤十郎の指に、戯れに白い余り糸を結ぶ伊魚。
その出張から帰って来る日に突然雨が降ってきたので、傘を持っていない藤十郎のために駅まで迎えに行ったものの、聞いていた時刻になっても帰って来ず駅も最後で閉められてしまう。
どうしたんだろうと不安になりながらとぼとぼ帰途に就いた伊魚の目の前で、藤十郎が車から降り立つのに遭遇。港から送ってもらったというのを聞いて、安堵と自分の悪い想像による消せない不安とで気持ちが下がっているところに、前述の糸を出張中ずっとつけていて、解けては苦労して結び直すなどしていたと聞くというお話で、それで二人は指輪を買いに行くのです!
なんていいお話。このあとの「幾久しく今日の一から」も大好きです。
形なんていらないとずっと突っぱねていた伊魚ですが、形は寧ろこのような人にこそ必要で大切でした。末永くお幸せに。


○人の噂も七五〇〇日。

戦時中、横須賀基地に所属していた椎名という男が主人公。
この第三者の目を通して、当時の伊魚の様子と、篠沢と伊魚の噂話を回想していきます。
噂話が主流なので、読んでいるこちらも出歯亀みたいな気分。
当時の伊魚の美しさがふんだんに伝わります。
そして戦後の東京で偶然見かけた伊魚の表情がやわらかい物になっているというのも良かったです。藤十郎との日々のたまものですね。


というわけで、まさに人に歴史ありを痛感するこのシリーズの番外編集。
ヘルブックなだけにエロティックです。刊行ありがとうございました。