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bokutachi no se ni tsubasa wa nai
一言で行ってしまえば、ファム・ファタールのお話です。
お話全体は暗くて『行き止まりの路地裏』感……全くもって救いがない。
洋書の雰囲気を出すためかもしれませんが仕様が横書なのも、慣れるまでは戸惑いました。
大変失礼な言い方ですが、こういう純文学風の味付けに『中二っぽさ』を感じて鼻白む方もいるかも、と思うんですね。後味も最低だし、誰もが面白いと思う本じゃないんじゃないかと。
ただですねぇ、ファム(正確には『オム』ですが)・ファタール役のアスティが、光り輝く部分があるんですよ。
全体のトーンが暗いから、その対比で此処が異様にきらきら見える。
きらきらしているのはとても短い時間なので、その後の闇がさらに深くなるといった具合なんです。
私はそれに魅せられちゃいました。
エコールド・パリの時代、画家の卵であるテランスが食べるために贋作を行ない、その縁で「詐欺師の弟子」と名乗るアスティと出会います。最初はただの使いっ走りの子どもだと思っていたテランスですが、アスティの洗練されたふるまいや、美術に対する造詣に目が奪われる様になります。
画家仲間の1人がパリ王立美術協会の賞を取った日、絶望に喘ぐテランスは自分の一番のお気に入りの絵の前に行きます、そこでその絵を観るアスティと出会い、自分がこの少年に恋をしていることに気づくのです。
その直後、テランスは高熱で倒れます。
アスティはテランスの看病をした後、忽然と姿を消してしまいます。
テランスは心をこめてアスティの肖像画を描きます。
それはテランス渾身の一作となるのですが、取引をしている詐欺師から「アスティは犯罪に関わっているので、その絵を売って欲しい」と強く言われてしまい……
冒頭にも書きましたが、本当に救いのないラストなんです。
「ガーン!」ですよ、もう。
『June』時代の耽美小説みたいな匂いです。
作者は多分お若い方だと思うんですけれどねぇ。
時代は1回廻ってまた同じ処まで戻ったんですかね?
当時の小説がお好きな方は、ひょっとしたら好きかもしれないと思いますです。