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hanatabanaka hoshikunai
那智学園の海棠力也は、幼馴染みでプレイボーイの生徒会長・源蘇芳の代わりに、二ヶ月という短い擬似恋愛期間の終わりを、相手に花束付きで告げる役目を担っていた。
そんな力也は影で、「死の告知天使サン・ジェスト様」と呼ばれていた。
それは幼い頃に、蘇芳の「兄になる!」と宣言した力也がそうと交わした約束でしていることだった。
あの頃は自分よりもずっと小さかった蘇芳だったが、いつしか力也よりも大きくなり、力也が守る必要もないくらいに大きく成長していた。
幼い頃の約束を盾にその役目を担わされることにいい加減うんざりしていた力也だったが、一方の蘇芳も蘇芳で、いっそ力也がその約束を反故にしてほしいと願っていた。
家も隣同士で、一人暮らしをしている蘇芳の家を気軽に訪ねてくる力也に、「弟」としてではなく、別の感情を抱いている蘇芳は、力也を怒らせることで力也から「絶交」という言葉を引き出すことに成功する。
力也にしてみれば、そんなこと言うつもりもなかったし、言ったとしてもどうせ二、三日のことだろう、と思っていたのだが。
折りしも、時期は『狂気のオクトーバー』。
学園祭に向けて、準備に忙殺される日々の中で、遂に蘇芳に「本気の相手」が現れてしまう。
蘇芳はその恋人を関係者以外立ち入り禁止の生徒会室に連れ込み、楽しそうに会話をする。
それを見た力也は、蘇芳が遠い存在になってしまったように感じられて――
という話でした。
他にも一つ。
その蘇芳の「本命の恋人」だった藤枝忍と生徒会副会長の「阿久津」の話が入っています。
蘇芳と力也の話は、よくある幼馴染みだったのに片方がもう片方に恋をして、恋をされているほうはその気持ちにまったく気づかず、片方がキレて行動を起こしてから、自分の気持ちに気がつく――というBLの王道話です。
ただ、力也視点で描かれているので大分切ないことになっていて、「よくある」というのはあまり気にならない形で物語が進んでいます。
もう一つの忍と阿久津の話は、なんとなく、蘇芳と力也の話の中で結局、あまったもの同士がくっついた感じがして、個人的にはあまりトキメキませんでした。
忍にしてみれば、最初から「本命の恋人」はフリだとわかっていたのだから、阿久津のことがずっと好きだった――という言い分なんですが。
それであれば、蘇芳と力也がラブラブになってしまった後の話をじっくり読みたかったなー……と思いました。